奨学金、保証制度を見直し――人的保証よりも機関保証へ

文部科学省は2020年5月8日、奨学金については人的保証と機関保証の課題などを整理して検討する必要があるとしつつも、将来的に機関保証に統一していく検討が必要との考えを示した。同日に発表した「独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業における保証制度の在り方に関する有識者会議の中間報告まとめ」で公表している。

連帯保証人と保証人を選任するのが「人的保証」で、機関保証に加入するのが「機関保証」だ。日本学生支援機構(JASSO)は奨学金の返還に係る保証制度として、両制度の選択制を実施している。

同中間報告まとめによると、2004年度の選択割合は人的保証が90.9%、機関保証が9.1%。2019年度の選択割合は人的保証が43.7%で、機関保証が56.3%となり、その割合はほぼ同等だった。

選択割合の変化と共に、奨学金を取り巻く社会的変化も保証制度に大きく影響。人的保証については、晩婚化の影響を受け、連帯保証を担う父母の経済力がより厳しくなることが予想されるほか、少子化により保証人を専任しづらいといった状況が懸念されている。一方で、機関保証に関しても、自己破産やモラルハザード防止といった課題が指摘されている。

これらの状況を踏まえ、有識者会議は「人的保障、機関保証それぞれのメリット・デメリットを踏まえる必要がある」としつつも、保証人の成り手や児童数の減少など社会の変遷を鑑み、「平等の観点や機関保証の安定性の観点から、機関保証に統一していくことに検討が必要だ」という見解を示した。

一方で、現行の保証制度の選択率がほぼ同率であることや、奨学金の回収率は人的保証の選択者の方が高いことなどに留意し、「保証制度の在り方に係る結論を得るにはさらなる慎重な検討が必要」とした。

今後の方向性としては、「将来的には機関保証への重点化を図ることが適当」だとした上で、「保証料率の設定方法」「保証料の徴収方法」「奨学金制度への正しい理解」などについて具体的な検討を進めていく必要があるとしている。

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[関連リンク]

独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業における保証制度の在り方についての中間報告まとめ