大学合格を目指す受験生なら、誰もが「予備校や塾に通うことで、少しでも合格する確率を上げておきたい」と願っているのではないでしょうか。
ただ、予備校や塾に通うには当然費用がかかるため、家庭の経済状況によっては、入学金や授業料の安さを重視せざるを得ないこともあります。
しかし、「料金が安い」という理由だけで予備校や塾を選ぶのは、あまりおすすめできません。なぜなら、どの予備校や塾で学ぶかによって、志望大学の合格率が変わってくるからです。将来的には、就職できる企業や年収などにまで影響してくるかもしれません。
この記事では、予備校と塾の違いや大手予備校の料金を比較するだけでなく、安い料金で合格実績のしっかりした予備校・塾に通える方法も解説していきます。
予備校と塾はどちらを選ぶべき? 平均的な料金と特徴を比較
予備校や塾は「学校以外の学習の場である」という点では同じ役割を果たしていますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、予備校と塾を比較し、それぞれの平均料金や特徴についてご紹介します。
塾と予備校の違いは?
そもそも、塾と予備校の違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
実は「指導形式」と「目的」が塾と予備校ではは異なっています。塾においての指導は基本的に学校と同じ授業形式で行われ、問題を解かせることや生徒の質問に答えることもあります。そして、その目的は学校の授業理解や定期テスト対策といった「不足している学力を補填すること」にあるのです。
それに対し予備校では、一般的には講師が受講生に対して一方的に問題の解説を行う「講義形式」となっています。そのため、生徒は塾よりもいっそう受け身の状態で講義を受講することになるのです。また、予備校は高校生や高卒生を対象として「大学受験合格」を目的としています。
このように、両者は指導形式と目的において別物であるといえるでしょう。
予備校と塾の平均料金
まず、予備校と塾では、入学金や授業料金などの平均費用が大きく異なります。
予備校の料金は 、年間平均で約70万円といわれています。一方、塾の年間平均料金は約20万円(高校3年生、私立の場合)といわれており、予備校の平均料金とは大きな差が生じています。予備校や塾を料金の安さだけで選ぶなら、塾に軍配が上がるといえるでしょう。
以下では、分かりやすい表を用いてそれぞれの「入学金」「授業料」「季節講習」の平均料金をまとめてみました。
予備校 | 塾 | |
入学金 | 現役生:3万円 浪人生:7〜10万円 | 1〜3万(不要なところもある) |
年間授業料 | 現役生 1教科のみ:10~25万円程度 3教科(国数英):50万円程度 浪人生70万円程度 | 10〜20万円程度 (月額制で必要な分だけ支払う塾もある) |
夏期・冬期講習費 | 現役・浪人ともに 20〜40万円程度 | 3〜5万円程度 (無料にしている塾もある) |
予備校では現役生と浪人生のどちらなのかによってコストが変わってくるため、注意が必要です。現役生の方が比較的安く設定されています。
上記の表からも、なるべく費用を安くするには塾に通った方が望ましいことが分かります。
予備校と塾、それぞれの特徴は?
予備校の特徴としては、志望校のレベル別に綿密なカリキュラムが組まれている点が挙げられます。予備校の授業は大学受験に特化しているため、授業内容やレベルに地域差がほとんど生じません。また、予備校に通うのはより上位の大学進学を目指す現役生や浪人生が中心です。
一方、塾の役割は、学校で受ける授業の補習に近いといえるでしょう。そのため、塾によっては授業内容やレベルに差が生じます。また、予備校とは違い、小学生から高校生まであらゆる年代の学生が対象です。
もちろん塾から志望大学合格を目指すことも可能ですが、受験勉強のノウハウや情報量、実績の面では、大学受験に特化した予備校の方が優れています。志望する大学のレベルが上がるほど、塾の学習だけでは不十分になるでしょう。
大手予備校の料金を比較してみよう【東進・河合塾・駿台・代ゼミ】
予備校にはさまざまな種類がありますが、特に有名なのが東進ハイスクール・河合塾・駿台予備学校 ・ 代々木ゼミナールの4校です。 在籍者や合格実績の多さから、「四大予備校」と呼ばれることもあります。
四大予備校以外にもさまざまな予備校がありますが、校舎のあるエリアが限られていたり、授業の質や合格実績などの面で玉石混交だったりもしますので、この記事では四大予備校の入学金や年間料金などに絞って比較し、どの程度の料金差があるのかご紹介したいと思います。
受講するコースや数によって料金は大きく異なるため、今回は受験生の一般的なコースを想定して比較していきましょう。
東進ハイスクールの料金
東進ハイスクールの料金は、下記の表のようになります(消費税込み)。
入学金 | 通期講座受講料(単科) | 担任指導費 | 年間料金の目安 |
3万3000円 | 7万7000円※ | 高3生 3万3000円 (高3生が単科4講座以上を申し込む場合、7万7000円) 高2生以下 4万4000円 | 70万円以上 |
※:講座は90分×20回のものが多いが、時間と回数は講座によって異なる
※:「高等学校対応 理科基礎」(90分×15回)の受講料は5万7750円
上記の他に、東進ハイスクールでは入学時に定額の模試費として受験生の場合2万9700円がかかります。
年間にかかる料金として70万円以上は見ておきましょう。
また、単科の通期講座以外にも、東新ハイスクール指定の講座がひとつに固まった志望校通期ユニットもあります。
志望校通期ユニットは5講座から12講座まであり、最大20講座まで追加可能です。ユニット料金は5講座が年額割引利用で35万2000円、11講座で年額割引を利用すれば81万1000円です。なお、ユニット料金には担任指導費や模試費を含みます。
河合塾の料金
河合塾の現役生向け「高校グリーンコース」の料金は、下記の表のようになります。
なお、入塾金・塾生サポート料には消費税を含みます。
入塾金 | 年間授業料(1講座) | 塾生サポート料 | 年間料金 |
3万3000円 | 高3生 21万5250円※1 | 高3生1カ月 6930円 (年額9万90円※2) | 100万円前後 |
※1:関東地区・1講座(90分・対面/映像・35講)あたり
※2:1月~翌年度の1月までの13ヶ月分
河合塾では、インターネットから入塾の申し込みをした場合、入塾金が1万6500円と半額になります。また、小学・中学グリーンコースに在籍していた人など、特定の対象に当てはまる場合は全額免除されます。
河合塾で受験に必要な講座を複数取ると、年間にかかる料金は100万円前後になるでしょう。
駿台予備学校の料金
駿台予備学校の高校生クラスの料金は、下記の表のようになります。
なお、入学金には消費税を含みます。
入学金 | 授業料(1講座) | 年間料金 |
3万円 | 20万円前後 | 100万円前後 |
駿台予備学校では、入学説明会や体験入学、駿台模試などに参加すると入学金が1万6500円と半額になります。また、兄弟姉妹など、家族が駿台予備学校に通っている場合も半額免除されます。これらは併用できるため、最大で3万3000円の免除(入学金全額免除)が可能です。
駿台予備学校で年間にかかる料金は100万円前後になるでしょう。
代々木ゼミナールの料金
代々木ゼミナールの現役生向け「高校生コース」の料金は、下記の表のようになります(これら以外のプランもあります)。
なお、入会金には消費税を含みます。
入会金 | 単科ゼミ(年間、1講座※1) | 学期+講習会パック授業料(年間、1講座※1) |
1万6500円 | 高校3年生 5万6400円〜13万6800円※2 | 高校3年生 13万1000円※3 |
※1:複数の講座を受講した場合の割引あり
※2:60分×1回/週:5万6400円、90分×1回/週:8万4000円、90分×2回/週:13万6800円(どれも全24回)
※3:90分×36コマ+3学期分
代々木ゼミナールでは、現役高校生に「高校生コース」、浪人生向けに「大学受験科」が用意されています。
現役の高校生コースでは年間20~50万円前後、大学受験科では90~115万円前後となるでしょう。
なお、大学受験科には授業料の分納制度や一部減額制度など、各種支援制度が用意されています。
予備校の費用について詳しく知りたい方は、予備校の平均的な費用、費用の抑え方の記事をご覧ください。
料金が安いだけで大丈夫? 実績や成果を重視するなら大手予備校がおすすめ
大手予備校で年間にかかる料金にはさほど大きな差はありませんが、この中では東進ハイスクールが比較的安い料金で受講できます。
大手予備校に通うとなると、塾よりも料金はかかりますが、大手予備校には大学受験における膨大な情報やノウハウ、実績があります。そのため、大学受験の実績や成果を重視するなら、大手予備校を選ぶのがおすすめです。
学費は分割払いや月払い、教育ローンも利用可能
四大予備校では、学費の一括払いの他に分割払いや月払いも採用しています。
◇東進ハイスクール
学費の分割払い可能。
各校舎窓口に申し出れば、指定のローンを紹介してもらえます。
◇河合塾
学費の月払い可能。支払い総額は一括払いと同じです。
ただし、セレクト講座は一括払いのみとなっているため、ご注意ください。
◇駿台予備学校
学費の分割払い可能。支払い総額は一括払いと同じです。
◇代々木ゼミナール
学費の分割払い可能。
提携教育ローンとして「学費サポートプラン」が用意されており、簡単な手続きで利用可能です。また、代々木ゼミナールの入学者、在学者は「国の教育ローン(日本政策金融公庫)」も利用することができます。
学費は選択するコースによって変わる
上記では大手予備校の料金比較などを解説しましたが、学費は選択するコースによって大きく異なります。例えば、科目数や学年によっても料金に差が出るでしょう。
そのため、一概にこの予備校が最も安いと断定できるわけではありません。
もし、なるべく安い予備校に通いたいとお考えの場合は、利用したいコースについて直接問い合わせを行ってみるようにしましょう。
費用を抑えるならならオンライン予備校の選択肢も
できるだけ費用を重視して選びたいとお考えであれば、オンライン予備校に通うのも選択肢の一つです。オンライン予備校とは、自宅のパソコンやスマホ、タブレットなどで受講するタイプの予備校です。ネット環境が整っていれば、いつでもどこでも受講することができます。
オンライン予備校の最大のメリットはとにかく費用が安いことです。最も安いタイプのもので月額1万円未満から受講することができます。年間にすると、通常の予備校よりも数十万円ほどコストを抑えられる可能性があるでしょう。
ただし、通塾タイプの予備校とは異なり、すぐに質問することができない点や自習室がなくモチベーション維持が難しいなどのデメリットもあります。こうした点も踏まえて、どちらを利用するのか検討するのがよいでしょう。
一流講師による無料体験授業を実施中
大手予備校では、大学受験に詳しい一流講師による講義の無料体験が開催されています。授業内容や予備校の雰囲気を知るには、各予備校が開催する無料体験に参加するのがおすすめです。
一例として東進ハイスクールでは、希望する校舎で授業が受けられる無料招待講座を実施しています。日程より異なりますが最大4講座を無料で受講できるのに加えて、部活と勉強の両立や大学受験の仕組みなど、受験生の気になる疑問や悩みにも個別に相談に乗ってくれます。
予備校の無料体験は、受験勉強の学習スタイルや校舎の雰囲気を理解できる絶好の機会です。予備校選びの決め手となるため、積極的に参加しましょう。
四大予備校の優遇制度を知っておこう
できるだけ費用を抑えて予備校に通いたいのであれば、優遇制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。優遇制度とは、予備校が設定している条件を満たすことで入学金や授業料の免除が受けられるものです。ここでは各予備校が設定している優遇制度についてご紹介します。
入学金免除制度
河合塾では、インターネットからの申し込みで入学金を半額免除。小学・中学グリーンコース生などの対象に当てはまる場合は全額免除となります。
また、駿台予備学校でも入学説明会や体験入学の参加で入学金が半額免除されます。兄弟姉妹が駿台予備校に通っている場合に適用される家族割引と併用可能なため、入学金が全額免除になる場合もあります。
授業料の一部減額制度
代々木ゼミナールでは、高卒生向けに授業料の一部減額制度が用意されています
具体的には、前年度の受講生である場合、授業料が5万〜10万円の減額。過去に説明会に参加したことがある場合、5万円の授業料減額。高校や代ゼミのサテライン予備校などの推薦により、授業料の一部減額などが受けられるのです。
ただし、以下で解説するスカラシップ制度など他の免除と併用不可になっているため注意しましょう。
成績優秀者の特待生(スカラシップ)制度
大手予備校には、成績優秀者を対象に授業料を優遇する制度、いわゆる「特待生」制度があることが多いようです。
◇東進ハイスクール
東進ハイスクールでは、現役生を対象として「数学特待制度」が用意されています。この制度は中3生、中2生で通知表の評価が5段階中の「5」であることや、全国統一中学生テストの成績が優秀である生徒が対象です。
また「東大特進コース」の特待制度も用意されており、認定されれば各講座の授業料が無料となる特典もあります。
ただし、東進ハイスクールでは各校舎の独自の基準で特待制度が設けられており、地域によって授業料の減額などの特典は異なるため、注意が必要です。
◇河合塾
河合塾にはかつて「スカラシップ制度(奨学金授与制度)」がありました。「入塾後の成績が優秀であり、かつ授業への出席などの面で他の塾生の模範となるような塾生」には、奨学金を授与する形で授業料の負担を軽減してくれていました。
現在は2022年4月1日以降に発生した自然災害によって被害を受けた方に対し、経済的支援を図るため、特別措置として「河合塾被災者特別奨学生制度」「河合塾被災者特別奨学制度【能登半島地震特例】」を設けています。
◇駿台予備学校
駿台では、公式には発表していませんが特に成績優秀な方をスカラシップ生として認定しているようです。認定されれば学費の全額免除や、一部免除などの特典を受けることが可能です。
選考方法としては、駿台が実施している模試などで一定の基準をクリアした生徒が特待生となることができます。上位にランクインしたり、偏差値20以上の急激な上昇などが条件となっているようです。
◇代々木ゼミナール
代々木ゼミナールでは、高卒生向けのスカラシップ制度が用意されています。年に2回実施される入学コースの診断テストにおいて、成績が優秀な生徒として認定されれば特待生となります。具体的には大学受験科の学費全額免除や一部減額などの得点を受けることが可能です。
学力に自信があるのなら、検討している予備校に、特待生制度について聞いてみるのもいいかもしれません。
予備校を選ぶときのポイントは?
これから予備校を探すのであれば費用の安さだけに着目して選ぶのは危険です。ここでは、予備校を選ぶときのポイントについて解説します。
サポート体制が充実しているか
まず、サポート体制が充実しているかを確認しましょう。大学受験は長期的な戦いとなります。相談しやすい環境が整っているか、モチベーション管理もしっかり行ってもらえるかなどを確認しましょう。
また、サポートは別料金となっている予備校もあるため、その点についてもよくチェックしておきましょう。
予備校の口コミや評判をチェックする
利用前に予備校の口コミや評判をチェックしましょう。現代ではネットから簡単に口コミを調べることができます。評判がよくない予備校であれば、生徒に対する対応も悪い可能性があります。なるべく信頼できそうな予備校を選択することをおすすめします。
通学にかかる時間はどれくらいか
このほかにも、通学にどれくらい時間がかかるかをしっかり確認しておきましょう。予備校に通う場合、毎日通学することになります。なるべく自宅や学校から通いやすい予備校を選ぶことが大切です。
まとめ
予備校と塾を比較すると、料金の違いに驚く方も多いかもしれません。しかし、予備校や塾を選ぶ際は安い料金だけにこだわらず、実績や成果を重視するのがおすすめです。大学合格を目指す受験生にとって、講師陣がいかに受験に詳しいか、受験指導のノウハウを持っているかは非常に重要なポイントになります。
予備校や塾を実績・成果で比較してみて、それでも迷う場合には、無料体験に参加するのがおすすめです。授業内容や校舎の雰囲気を体感し、受験勉強に最適な環境を選びましょう。
経済的にどうしても予備校や塾を利用できず、比較的安い料金で利用できるオンライン予備校やインターネット塾、通信教育などを利用することになる方もいらっしゃると思います。そうした方には、以下の記事でオンライン予備校などを比較・分析していますので、参考にしてください。