女子学生が少ない理学部で性別にとらわれず学べる環境を整え、ジェンダーバランスを実現しようと、東京大学や京都大学など国立大10大学の理学部が2023年5月25日、連名で声明を発表した。理学の魅力を伝えるWebサイト「理学ナビ」を立ち上げ、理学部の魅力を発信するなどして、女子学生の比率が著しく低い現状の是正を目指す。
声明を発表したのは、東大と京大のほか、北海道大学、東北大学、筑波大学、東京工業大学、名古屋大学、大阪大学、広島大学、九州大学の10大学の理学部長で構成する国立大学法人10大学理学部長会議。「ジェンダーバランスのとれた環境を実現し、多様な人材を育成する理学部」を目指すとしている。
内閣府の「男女共同参画白書」(2022年度版)によると、大学の理学部の女子学生の比率は27.8%で、工学部と並んで他学部より圧倒的に低い。大学院修士課程でも23.6%、大学院博士課程21.0%と理学系の学生は2割台にとどまっている。
こうした状況を踏まえ、声明では「適切なジェンダーバランスを実現できていないということは、理学部が人材育成の場として『多様性のある環境を提供できていない』ことを意味する」とし、人材育成という観点からみても、深刻な問題だとしている。
このため、性別や国籍等の属性にかかわらず、学びや研究を安心して進められる理学部をつくるために環境を整備し、学生をサポートするとともに、理学部で学ぶことへの不安を解消できるよう、理学部での大学生活や卒業後のキャリアパスの情報提供を充実させると宣言した。
情報提供の取り組みとして、10大学は共同で、理学を志す生徒・学生、保護者、高校教員に情報を発信するWebサイト「理学ナビ」を開設した。今後、各大学理学部での学生生活や卒業・修了後の進路などの情報や、先輩の体験談やメッセージなどを発信し、理学部の魅力を伝えていく。