大学入試の方法には、大きく分けて一般選抜、学校推薦型選抜、そして総合型選抜の3つがあります。総合型選抜とは、以前は「AO入試」と呼ばれていたものです。総合型選抜では、学力だけではなく、書類審査や小論文、面接、プレゼンテーションなどで入学者を決定します。現在では主要な大学のほとんどが採用している、ポピュラーな入試方法です。
試験の内容は大学・学部によってさまざまです。柔軟な試験を行うことで、各大学・学部の「アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)」にマッチする学生を見極めることが総合型選抜の目的です。実施時期が一般選抜よりも早く、12月頃までに入試結果が出ることが多いので、早めに入試を終わらせたい人にもおすすめです。
総合型選抜のメリットの1つとして、「一般選抜では狙えないようなレベルの高い大学も狙える」ことが挙げられます。総合型選抜を上手く活用すれば、難関大学や有名大学に入ることも夢ではありません。この記事では、総合型選抜で入りやすいおすすめの大学を一覧でご紹介します。志望校を選ぶ際はぜひ参考にしてください。
総合型選抜だと入りやすい難関大学一覧
総合型選抜で入りやすい大学や、人気大学の中でも意外に狙いやすい大学をご紹介します。評定がいらない大学も挙げますので、学校の成績に自信がない人も要チェックです。
旧帝大の総合型選抜
「旧帝大」とは、日本にある東京大学、京都大学、東北大学、九州大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学という7つの国立大学群のことを指します。これらの大学は国公立大学の中でも最難関で、毎年人気が高いです。しかし、旧帝大のような難関大学でも総合型選抜であれば受かりやすくなる可能性があります。
旧帝大のうち、おすすめは東北大学と九州大学です。
- 東北大学(AO入試Ⅱ期)
文学部・教育学部・法学部・理学部・医学部・歯学部・工学部・農学部
【おすすめポイント】
東北大学は比較的、総合型選抜に力を入れてきた国立大学です。2025年度全学部の入学定員が合計で2406人なのに対し、総合型選抜(AO入試Ⅱ期・Ⅲ期)の募集人数は666人と、全体の約4分の1以上を占めます。多くの学部で総合型選抜に対応していることもうれしいポイントです。AO入試Ⅱ期は大学入学共通テストを課さないので、特に狙い目です。
- 九州大学(総合型選抜Ⅱ)
文学部・法学部・経済学部
【おすすめポイント】
2024年度のデータによると、九州大学の「総合型選抜Ⅱ」の文学部・法学部・経済学部は一般選抜より受験倍率が低く、狙い目と言えます。旧帝大に入りたい人は、こうした総合型選抜の穴場をチェックしてみましょう。
総合型選抜 | 一般選抜 | |
文学部 | 1.8倍 | 4.2倍 |
法学部 | 1.9倍 | 2.3倍 |
経済学部 | 2.5倍 | 3.6倍 |
有名私立大学の総合型選抜
続いて有名私立大学の中でも、総合型選抜が狙い目の大学を2024年度の倍率とあわせてご紹介します。
関東の私立大学
- 早稲田大学
社会科学部(全国自己推薦入学試験)/倍率:5.7(一般選抜8.0倍) など
【おすすめポイント】
早稲田大学は日本の私立大学の中でもトップクラスの偏差値・倍率を誇ります。総合型選抜も人気が高く、選抜方式によっては20倍を超える倍率になることも多いほどです。しかし社会科学部の自己推薦は倍率5.7と、一般選抜より競争率が低く狙い目です。出願資格としては、評定平均が4.0以上であることと、部活動や生徒会での活躍、語学検定の成績や資格試験の合格などが求められます。
他にも政治経済学部など、いくつかの学部で一般選抜より倍率が低いところがあります。
- 青山学院大学(自己推薦)
文学部 英米文学科/倍率:3.2(一般選抜2.8)
地球社会共生学部 地球社会共生学科/倍率:2.4(一般選抜3.6倍)
【おすすめポイント】
青山学院大学 文学部 英米文学科と地球社会共生学部の総合型選抜(自己推薦)は、同大学の自己推薦枠の中でも合格者数が多く、倍率も低めの穴場と言えます。
文学部 英米文学科では、実用英語技能検定、TOEIC、TOEFL iBTなどで一定以上の成績を修める必要があります。しかし、評定平均は必要ないため、英語が特に得意な人にとっては一般選抜より合格確率が上がる可能性があるでしょう。
地球社会共生学部 地球社会共生学科では、英語資格試験で高得点を取ることに加え、全体の評定平均が3.8以上といった条件が課されるので注意が必要です。
「青学に行きたい」と強く希望する場合は、これらの学部からチェックしてみるといいでしょう。
- 法政大学(自己推薦)
文学部 日本文学科・地理学科/倍率:3.0・2.3(一般選抜A方式3.0倍・4.0倍)
理工学部 機械工学科〈航空操縦学専修〉/倍率:3.1(一般選抜A方式3.4倍) など
【おすすめポイント】
法政大学では、倍率が一般選抜と同じかそれよりも低い総合型選抜(自己推薦)が複数あります。ただし、「全体の評定平均が3.8以上」(文学部 日本文学科)、「全体の評定平均が4.0以上、かつ、の「地理探究」「地学」のいずれかの評定平均が4.5以上」(文学部 地理学科)など、出願条件が厳しいためでしょう。学校の成績に自信がある人は、出願すれば合格できるチャンスが十分あります。
また、理工学部 機械工学科〈航空操縦学専修〉では、「航空身体検査『第1種相当』の基準を満たすこと」といった特殊な条件もありますので、志望の学部・学科を調べてみましょう。
関西の私立大学
- 関西大学
商学部/倍率:2.7(一般選抜4.0倍)
外国語学部/倍率:1.6(一般選抜4.9倍)
【おすすめポイント】
関西大学 商学部と外国語学部の総合型選抜は、同大学の中で特に倍率が低いため狙い目です。商学部に出願するためには、「設定平均値が3.5以上」であることが必要です。それに加え、ビジネスプラン・コンペティションでの優れた実績、優れた資格(英語・簿記・情報処理など)のどれかでアピールする必要があります。
外国語学部の場合は、「中国語」「クロス留学」「英語教員」「日本語教育」「グローバルキャリア」の5つのプログラムがあり、それぞれ必要な評定平均や英語の4技能試験の得点などが定められています。
これらに自信がある人であれば、一般選抜よりも遥かに入りやすいと言えるでしょう。
- 同志社大学
商学部フレックス複合コース/倍率:2.2(一般選抜 学部個別日程3.5倍)
【おすすめポイント】
同志社大学 商学部フレックス複合コースの総合型選抜では、TEAPやTOEFL iBTなどの英語検定で一定以上の成績を修めることが出願資格となります。二次審査の内容も「小論文、面接(プレゼンテーション含む)」とシンプルなので、対策を立てやすいと言えるでしょう。
国立大学でも受験生の個性を重視した選抜方式が採用されている
国立大学の中には、独自の基準で選抜を行っている大学もあります。以下の大学・学部の募集要件に当てはまっている人は、受験してみる価値があるでしょう。
- 筑波大学(国際科学オリンピック特別入試)
理工学群・情報学群
【特徴的な出願要件】
・理工学群
国際科学オリンピック(国際物理オリンピック、国際化学オリンピック)日本代表として選抜された人、または日本国内の代表選考会などで一定の成績を修めた人
・情報学群
日本情報オリンピック本戦でAランクとなった人、または情報処理推進機構が主催する未踏IT人材発掘・育成事業に採択されたテーマのクリエータ
- 千葉大学(理数大好き学生選抜)
工学部 総合工学科 物質科学コース
【特徴的な出願要件】
・方式Ⅰ
審査制度のある自然科学並びに 工学系のコンテストやコンクール等で優れた成果を発表した者または、クラブ活動、個人等で行った課題研究で優れた成果をあげた人
・方式Ⅱ
著名な国際科学コンクールの日本代表またはそれに準ずる成績をおさめた人
- 広島大学(光り輝き入試総合型選抜Ⅰ型)
理学部 地球惑星システム学科(日本地学オリンピック利用型)
医学部医学科
【特徴的な出願要件】
・日本地学オリンピック利用型
過去3年間に実施された日本地学オリンピック大会の予選試験において上位10%の成績を修めた人→第1次選考が免除
・医学部医学科
科学研究に関する活動を積極的かつ継続的に行い、その成果や活動を示すことができる人、日本数学オリンピック予選合格者、全国物理コンテスト(物理チャレンジ)第一チャレンジ合格者、化学グランプリ一次選考合格者、日本情報オリンピック予選合格者、日本生物学オリンピック予選合格者、日本地学オリンピック二次予選合格者のいずれかを満たす人
(入学後は医師国家試験受験資格と博士号の両者を取得するMD-PhDコースへ進学)
総合型選抜の出願に評定平均の条件を設けていない旧帝大・私立大学
国立・私立とも、「評定平均○以上」という条件がない大学もあります。「総合型選抜を受けたいけれど評定平均が思わしくない」という人は、以下の大学をチェックしてみてください。ただし、基本的に調査書の提出は求められると考えたほうがいいでしょう。
国立大学(旧帝大)
- 北海道大学
- 大阪大学
- 九州大学 など
私立大学
- 慶應義塾大学 法学部(FIT入試 A方式)
- 中央大学 法学部・文学部など
- 立命館大学 文学部・経済学部・情報理工学部 など
公募推薦で入りやすい国公立大学の一覧も併せてチェック!
ハイレベルな国公立大学に合格する可能性をより一層高めたいのであれば、総合型選抜だけでなく、公募推薦への挑戦も検討することをおすすめします。ここでは、公募推薦について解説した上で、関東・関西にある公募推薦で入りやすい国公立大学を紹介します。
公募推薦とはどんな入試? 総合型選抜との違いを説明
公募推薦とは、学校推薦型選抜の一種です。大学が提示した出願条件を満たし、かつ、学校長の推薦を得られれば、誰でも受験することができます。
公募推薦には、「公募制一般選抜(一般推薦)」と「公募制特別推薦選抜」の2種類があります。
公募制一般選抜(一般推薦)は、一定以上の学業成績を収めていることを出願条件としている選抜方法です。評定平均のみを問う大学もあれば、大学入学共通テストを課す大学もあります。中には、評定平均は問わず、大学入学共通テストのみを課す大学も。
公募制特別推薦選抜は、学業以外の活動実績があることを出願条件としている選抜方法です。スポーツや芸術活動の成績、委員会や地域活動の取り組み、所持している資格などが評価されます。
公募推薦(学校推薦型選抜)と総合型選抜との大きな違いは、学校長の推薦が必要か否かです。公募推薦に挑戦したい場合には、学校長から自信を持って推薦できる生徒として認めてもらえるよう、できる限り遅刻や欠席はしないように心がけ、謹慎や停学などの処分を受けるような行為は慎みましょう。
国公立大学の公募推薦
関東の国公立大学
ここでは、関東にある国公立大学の中でも公募推薦で入りやすい大学を3校、2024年度の倍率とあわせて紹介します。
- 一橋大学
商学部/倍率2.0:(一般選抜3.3倍)
経済学部/倍率1.5:(一般選抜6.5倍)
社会学部/倍率2.5:(一般選抜3.2倍)
【おすすめポイント】
文系の学生にとって憧れの的である一橋大学に入学したいのであれば、公募推薦をチェックしない手はありません。すべての学部で一般選抜より倍率が低い傾向にあります。商学部・経済学部・社会学部はでは、実用英語技能検定(英検)や日本数学オリンピックなど、指定の検定や大会で一定以上の成績を収めていることと、大学入学共通テストの指定の教科・科目を受験することを主な出願要件としており、評定平均は問われません。語学関係の資格が豊富な人は、ぜひ受験を検討してみてください。
- 筑波大学
人文・文化学群/倍率:2.4(一般選抜2.9倍)
社会・国際学群/倍率:3.2(一般選抜3.2倍)
生命環境学群/倍率:2.7(一般選抜2.9倍)
情報学群/倍率:2.1(一般選抜2.8倍)
体育専門学群/倍率:1.7(一般選抜3.1倍)
芸術専門学群/倍率:3.8(一般選抜5.8倍)
【おすすめポイント】
筑波大学の公募推薦の倍率は、多くの学群で一般選抜の倍率を下回っています。
情報学群の知識情報・図書館学類は評定平均が4.0以上であること、体育専門学群は大会などで抜群の成績を収めていることが求められます。それ以外の学群・学類は、学習成績概評A段階に属することや、該当する分野への強い関心や能力、国際的な素養などを主な推薦要件として挙げています。なお、人間学群 心理学類でのみ、大学入学共通テストの指定の教科・科目の受験が課されます。
ほぼすべての学群で学習成績が優秀であることが求められますが、研究への熱意がある人は、一般選抜に挑戦するよりも合格の可能性を高められるでしょう。
関西の国公立大学
関西にある国公立大学のうち、公募推薦で入りやすい大学は以下の3校です。倍率は、2024年度のものです。
- 神戸大学
国際人間科学部/倍率:1.7(一般選抜2.6倍)
【おすすめポイント】
神戸大学で公募推薦による選抜を実施している学部のうち、国際人間科学部(グローバル文化学科)は一般選抜よりも倍率が低く、狙い目と言えます。主な出願条件は、評定平均が4.0以上であること、TOEFL iBTで65以上またはIELTS6.0以上のスコアを所持していること、大学入学共通テストの指定の教科・科目を受験することの3つです。条件は厳しめですが、英語に自信がある人は挑戦する価値があります。
- 奈良女子大学
文学部/倍率:1.4(一般選抜2.6倍)
【おすすめポイント】
公募推薦で奈良女子大学への入学を目指すのであれば、文学部(人間科学科 子ども教育専修プログラム)を受験することをおすすめします。主な推薦要件は、大学入学共通テストの指定の教科・科目を受験することで、評定平均は問われません。大学入学共通テストで十分な得点をとることができれば、一般選抜よりも容易に合格をつかめるでしょう。
- 大阪公立大学
理学部/倍率:3.4(一般選抜3.5倍)
工学部/倍率:3.1(一般選抜5.9倍)
【おすすめポイント】
大阪公立大学の公募推薦では、理学部と工学部の倍率が低めです。理学部では、評定平均は問われず、大学入学共通テストの指定の教科・科目を受験することが主な出願条件とされています。
工学部では、評定平均が4.0以上であることが主な出願条件とされています。ただし、機械工学科・電子物理工学科・マテリアル工学科・化学バイオ工学科は指定の科目を履修していることと大学入学共通テストの指定の教科・科目を受験すること、応用化学科は「数学及び理科」または「理数」の評定が4.2以上であることも求められます。
他にも現代システム科学域と農学部で、一般選抜より倍率が低くなっています。自身の得手不得手を分析して相性の良い学部・学科を選ぶことで、合格を引き寄せられるでしょう。
総合型選抜を受験する際に注意したいポイント
総合型選抜では、一般選抜より倍率が大幅に低いこともあります。有名大学でも2倍以下の倍率となることがあり、受験生としては飛びつきたくなるかもしれません。しかし、倍率だけを見て受験を決めないようにしましょう。
例えば出願条件に「評定平均4.0以上」「指定の大会で優れた成績を修めた人」とあるなど、条件が厳しいため受験者が少なく、倍率が低いということもあり得ます。もちろん条件に当てはまるなら出願して問題ありませんが、募集要項をよく確認してから受験する大学を決めましょう。
また、近年の総合型選抜は全体的に低倍率の傾向にあります。これは、コロナ禍の影響で部活動や課外活動ができなかった高校生が多かったためと言われています。アピールポイントがないことから、出願を諦める受験生が多かったようです。その反動で、今後は各大学が総合型選抜に力を入れ、ますます狙い目になっていくかもしれません。
どのような大学・学部を受けるにしても、高校生活から何を学び、大学でどう活かしたいのかをしっかりアピールすることが大事です。