学校推薦型選抜(旧推薦入試)とは? 公募推薦、指定校推薦の違い、受けるときのポイントまで解説

大学入試の方法には、「一般選抜」「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」「総合型選抜(旧AO入試)」の3つがあります。このうち「学校推薦型選抜」は高校の推薦が必要となるもので、学力テストを免除される場合も多いです。

そう聞くと「勉強しなくてもいいなら受けたい」と思う人もいるかもしれません。しかし、学校推薦型選抜を受けるためには、高校で一定以上の成績を取っていることが条件です。そのため、全く勉強しなくてもいいわけではないのです。また、準備期間が長くなるなどの特徴もあり、しっかりとした対策が必要です。

今回はそんな「学校推薦型選抜」について、どんな入試方法なのか解説。受ける際のポイントもお伝えします。

学校推薦型選抜とは?

「学校推薦型選抜」とは、以前は「推薦入試」と呼ばれていた大学入試の方法です。特に私立大学で募集人数が多く、2019年度のデータによると、私立大学入学者の40%以上が学校推薦型を利用しての入学者となっています。同年、90%以上の国公立大学でも実施されており、近年では東京大学や京都大学などの最難関大学でも導入されたことで話題になりました。

入試の方法として、ただ受験勉強をするだけでなく、こうした推薦を活用することは当たり前になりつつあります。

しかし、学校推薦型選抜を出願するためには、大学側の求める条件をクリアしなければならず、受けたい人が誰でも出願できるわけではありません。条件には「高校での学習成績の状況が4.0以上」「オリンピック・全国高等学校総合体育大会・国民体育大会のいずれかで実施されている種目で、国民体育大会またはそのブロック大会に出場していることしていること」などがあり、大学・学部によってさまざまです。そしてこのような条件を満たした上で、出身高校の校長の推薦が必要となります。

学業の成績に加えてスポーツや芸術、学校外での活動を総合的に見て、「高校時代に何をどのように頑張り、どんな結果を残したか」が評価されると考えましょう。

また、多くの場合「専願制」であることも、学校推薦型選抜の大きな特徴です。専願制とは、1つの大学に絞って入試を受けることを言い、合格した場合は必ず入学することになっています。学校推薦型選抜では基本的に1校のみ受けることになり、いくつも併願して受かった大学から選ぶことはできません。

しかし、近年は併願ができる大学も増えています。ここは重要なポイントなので、募集要項で必ず確認しておきましょう。

学校推薦型選抜は大きく分けて2タイプ

学校推薦型選抜には「公募制(公募推薦)」と「指定校制(指定校推薦)」の2タイプがあり、公募制はさらに「公募制一般選抜(一般推薦)」と「公募制特別推薦選抜(特別推薦)」に分かれています。

ここからは、それぞれのタイプの基本的な情報と、メリット・デメリットを紹介します。

公募制とは?

「公募制」は、大学の求める出願条件をクリアした上で校長の推薦があれば、どの高校からでも受験できる選抜方法です。浪人生(既卒生)でも出願できる場合があります。

公募制には、以下のようなデメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 一般選抜で手が届かない大学でも狙える
  • 不合格になっても一般選抜で再チャレンジが可能

デメリット

  • 人気大学は一般選抜よりも倍率が高く、狭き門
  • 一般選抜と比べて合格基準がわかりにくく対策しづらい
  • 一般選抜に向けた準備が遅れる可能性がある

公募制一般選抜

公募制のうち「公募制一般選抜(一般推薦)」とは、「学業の成績が一定以上であること」が条件となっているものです。国公立大学の学校推薦型選抜はほとんどの場合がこちらとなります。私立大学でも募集人数が多いため要チェックです。

「極端に苦手な科目がなく、どの教科もまんべんなく良い成績が取れている」「一般選抜で合格する自信がないが、学校の成績は安定している」といった人におすすめです。

公募制特別推薦選抜

もう1つの公募制である「公募制特別推薦選抜」は、「勉強以外の実績があること」が条件となっているものです。例えば、以下のような条件が設定されます。

  • スポーツや芸術分野の活動で入賞した
  • 委員会やボランティア活動を積極的に行った
  • 大学の指定する資格を持っている

上のような条件があることから、「スポーツ推薦」や「有資格者推薦」とも呼ばれます。中には、この条件さえ満たせば学業の成績は問わない大学も。高校でこのような活動に力を入れていた人は、公募制特別推薦選抜にチャレンジしてみましょう。

指定校制

「指定校制」は、大学側が指定する高校の生徒のみ出願できる方法で、現役生に限られます。私立大学が中心で、国公立大学ではほとんど実施していません。指定校制には以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 一般選抜で手が届かない大学でも狙える
  • 校内選考で推薦を取れれば、合格する確率がかなり高い

デメリット

  • 校内選考が激戦の場合もある
  • 原則として専願のため、合格したら入学を辞退できない

指定校制では高校での活動をもとに評価されるため、一般選抜だと難しいレベルの高い大学にもチャレンジできるでしょう。

多くの場合、高校ごとの推薦枠は数人で、応募者多数の場合は校内選考が行われます。学校の成績の他、課外活動の実績や生活態度などが総合的に評価され、推薦される生徒が決まります。しかし、校内選考さえ突破すれば、かなりの確率で合格となることも特徴です。

そして、指定校制の出願は、原則として専願のみとなります。合格した場合は必ずその大学に入学することになるので、出願は慎重に決めましょう。しかし、「絶対に入りたい第一志望校があり、その大学の指定校枠がある」という場合はまずエントリーしてみる価値があります。

また、大学入学後についてですが、指定校制で入学した人が良い成績を取れていない場合、次年度から母校の指定校推薦枠が取り消されたり、減ったりしてしまう可能性もあります。これをプレッシャーと感じることがあるかもしれません。

国公立大学の「地域枠」

地方の国公立大学では「地域枠(地域枠推薦)」という方法を実施していることもあります。

医学部で行われることが多く、「卒業後に一定期間、地元の医療に従事すること」などが条件となります。これは、地域によっては医師不足が深刻となっており、地方で働く医師の数を確保するためです。

場合によっては「県内・地域内の高校出身者のみ」と、出身地域・学校の条件が設けられていることもあります。

学校推薦型選抜の出願条件や評価基準とは?

学校推薦型選抜の出願条件や評価基準は、大学によって差があります。

国公立大学は条件が厳しく、学校で高い成績を修めていることが求められます。また、公募制のみであったり、現役生しか受けられなかったりすることも多いため注意しましょう。

一方、私立大学の出願条件はさまざまで、中には成績の基準を設けていない大学も存在します。

学校推薦型選抜でチェックされる成績基準としては、「全体の学習成績の状況」と「学習成績概評」があります。よく似た言葉ですが、実際の出願条件では「全体の学習成績の状況が4.0以上」あるいは「学習成績概評A以上」など、どちらかの最低基準が示されるので、違いを知っておきましょう。そこに課外活動の評価が加味されるイメージです。

「全体の学習成績の状況」はすべての科目の評定平均

「全体の学習成績の状況」とは、「すべての教科・科目の評定(1~5の5段階)の合計数を、すべての評定数で割った数値」であると文部科学省が定めています。つまり、すべての教科・科目の成績の平均ということです。以前は「評定平均値」と呼ばれていました。

対象となる期間は、高校1年~高校3年の1学期(前期)であることが多いようです。高校に入学してから出願する時点まで、ほぼすべての成績が含まれると考えればよいでしょう。

「学習成績概評」はA~Eの5段階

「全体の学習成績の状況」をもとに、成績をA~Eの5段階で表したものが「学習成績概評」です。Aが最も優秀で、Aを取るには「全体の学習成績の状況」が4.3以上でなければなりません。

全体の学習成績の状況によって、学習成績概評がどのように判定されるかについては、文部科学省が以下のように定めています。

全体の学習成績の状況(評定平均値)学習成績概評
5.0~4.3A
4.2~3.5B
3.4~2.7C
2.6~1.9D
1.8以下E

「A」の生徒のうち特に優秀な人は、高校の校長にその理由を書いてもらった上で「Ⓐ(丸囲みのA)」と示すことができます。国公立大学の中には、「Ⓐ(丸囲みのA)であること」を出願条件としているところもあります。

課外活動などの実績

公募制特別推薦選抜の場合は、スポーツや文化活動の実績を提出します。

スポーツ推薦では競技種目や大会などが指定されていることもあるため、入賞経験がある人は確認しておきましょう。公募制一般選抜の場合も、部活や委員会、留学、ボランティアなどの活動を積極的に行っていると有利とされています。

また、志望学部に関連した実績があればアピールしたいところです。一例ですが、ディベートや数学の大会、ロボコンなどが挙げられます。実用英語技能検定(英検)やTOEIC、簿記などの資格が評価基準となることもあります。

学校推薦型選抜の選考方法・実施時期

文部科学省は、学校推薦型選抜の選考方法について「大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力も適切に評価する」こと、提出された出願書類だけではなく、「小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、学力テスト、資格・検定試験の成績など、または大学入学共通テストのうち少なくとも1つ」を含めて評価することと定めています。

つまり、学習記録などを提出しただけで学校推薦型選抜に合格することはありません。小論文や面接などを併せて受けた上で、総合的に合否が決まります。

選考方法はさまざま

学校推薦型選抜では、まず以下のような書類によって選考が行われます。

書類選考

  • 学習記録(「全体の学習成績の状況」など)
  • 調査書(生活態度など)
  • 推薦書(担任などがその生徒の推薦理由を記入)
  • エントリーシート(志望理由など) 

これに加えて、志望学部に沿った内容の小論文やプレゼンテーション、実技試験などが行われます。個人あるいはグループでの面接を実施する大学も多いです。

また、大学独自の学力テストや大学入学共通テストを受けるケースもあります。特に国公立大学の場合、共通テストの利用が多いことは覚えておきましょう。推薦だからといって全く勉強しなくてもいいわけではないため、計画的に学習を進めることが重要です。

実施時期は一般選抜よりも早い11~12月

学校推薦型選抜の出願・選考時期は、一般選抜とは大幅にずれているため、注意しましょう。出願は11月、選考は11~12月であることが多いです。ただし指定校制では7~10月に校内選考が行われ、通過した人のみ11月に出願できます。公募制も指定校制も、早ければ12月中に合否が通知されます。

いずれにせよ、一般選抜に先行して行われるため、早め早めの準備が大事です。

一般選抜、総合型選抜との違いは?

大学入試の方法には、学校推薦型選抜の他に「一般選抜」と「総合型選抜」があります。ここまでご紹介した学校推薦型選抜の特徴を踏まえ、他の2つの方法との違いを知っておきましょう。

一般選抜

「一般選抜」は、学力試験をメインに合格者を選抜するものです。予備校で勉強し、試験日に教室で学力テストを受ける、といったよくイメージされる大学入試は、この一般選抜のことを指しています。

出願条件は「令和○年3月に高等学校または中等教育学校を卒業見込みの者(現役生)」「高等学校または中等教育学校を卒業した者(浪人生)」「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」など。学校推薦型選抜と比べて、出願条件はそれほど厳しくありません。

試験は1~3月に行われ、通常はいくつもの大学・学部を併願できます。また、同じ大学・学部で数回試験が行われる場合、何度受験しても構いません。

総合型選抜

「総合型選抜」は、以前は「AO(アドミッションズ・オフィス)入試」と呼ばれていたものです。「学校推薦型選抜」と似ており、選考はエントリーシートなどによる書類選考、小論文、面接、プレゼンテーションなどを組み合わせて行われます。しかし、総合型選抜では高校からの推薦は必要ありません。

選考基準となるのは、「各大学が求める理念(アドミッション・ポリシー)に沿っている人物か」です。学力試験では評価できない、さまざまな能力や意欲を活かせる入試方法です。

一般的に、出願・選考時期は9月から翌年2月までです。しかし、大学によってばらつきがあるため、早めに確認しておきましょう。

学校推薦型選抜を受けるときのポイント

学校推薦型選抜は、大学ごとに、さまざまな出願条件と選考基準のもとで行われます。一般選抜と異なり、勉強ができれば合格できるものではないので、相応の対策が必要となります。

また、学校推薦型選抜では早めの対策が鍵となります。高3になってからではなく、高1・2の時点から計画的に準備を進めましょう。

オーキャンや予備校も利用して情報収集を

推薦の出願前の準備として、情報収集はとても大事です。第一志望校の出願条件については必ず確認しましょう。情報の集め方には以下のような方法があります。

大学のホームページや入試案内を見る各大学では毎年6月頃から順次、入試情報を公開しています。
出願条件とともに、出願開始・終了時期も確認しましょう。
オープンキャンパスや入試説明会に参加する
インターネットで調べるだけでなく、実際に大学へ出向いてみてください。
雰囲気が分かるうえ、志望動機を固めるためにも役立ちます。
高校の先生や先輩に聞く学校の成績に関しては、高校の先生に相談しましょう。
指定校制で進学した先輩がいれば、選考の流れや気をつけることを聞くと役立ちます。
予備校で講師やチューターに相談する予備校には各大学の最新情報が集まってきます。
講師や現役大学生のチューターに対策方法を相談してみてください。

選考の準備は早め早めに

学校推薦型選抜では、高校3年になって追い込みをするといった対策は効果がありません。出願条件として、「高校1年~高校3年の1学期(前期)」の成績が対象となるからです。評定が良くないと大学側の条件を満たさず、出願すらできない可能性があるでしょう。高校1年の時点から定期テスト対策をしたり、課外活動を頑張って実績を作ったりする必要があります。

小論文や面接などに関しても、付け焼き刃の対策は通用しないと考えてください。予備校の中には、小論文や面接の対策ができるところもあるため、検討してみるとよいでしょう。

万が一落ちたときの対策もしておこう

公募制推薦の場合は倍率が高く、不合格となってしまう可能性もあります。あるいは指定校制推薦であれば、校内選考に通らないこともあり得るでしょう。また、学校推薦型選抜は基本的に専願制のため、いろいろなレベルの大学を複数受けるという対策もできません。

そのため、学校推薦型で合格できなかったときに備え、一般選抜や総合型選抜の対策も行っておきましょう。あまり一般選抜対策をしてこなかった人は、総合型選抜の対策に切り替えるのもおすすめです。

中には、どうしても推薦で大学を決めたいあまり結果的に志望校のレベルを下げてしまい、専願なので入学せざるを得ないという受験生もいます。しかし、入学後に「一般で第一志望校を受けてみればよかった」と後悔するケースもあるのです。学校推薦型選抜のメリットだけに目を向けることなく、納得できるまで第一志望校にチャレンジしましょう。