大学に進学する人の多くが受験するのが、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)です。たとえ推薦入学が決まっていても、全員必須で受験させる高校もあり、受験生にとって重要な試験だといえます。
しかし、現役生は初めて共通テストを受験しますし、高1・高2生は共通テストについてよく知らない人も多いでしょう。
この記事では、大学入学共通テストについて知っておきたいことを徹底的にまとめました。共通テストとはどんな試験か、受験する方法、内容やレベル、対策方法などについて分かりやすく解説します。
そもそも「大学入学共通テスト」とは何?
まずは共通テストとはどんな試験なのか、概要を知っておきましょう。
共通テストってどんな試験?
共通テストとは、独立行政法人 大学入試センターと各大学が共同で実施している、全国規模の大学入試です。毎年1月中旬に実施され、50万人以上が受験する日本最大の入試となっています。
大学入試センターのホームページには、共通テストについてこのような説明書きがあります。
大学に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力について把握することを判定する |
共通テストは全国どこで受けても同じ問題が出題されます。そのため、全国の受験生の学力を平等に測れるのです。問題はほとんどが基礎レベルで、基礎力があるかどうかを判断できます。
共通テストは大学ごとにさまざまな形で利用されています。代表的なものは、以下の3つです。
- 一次選抜の足切り
- 大学独自の学科試験との併用
- 総合型選抜
「足切り」とは、一定の点数に達していない受験生を、二次試験受験者から外すことを指します。2023年度のデータでは、入試に共通テストを利用する大学(短期大学も含む)は870校に上っています。2023年現在は大学が810校、短大が300校であることを考えると、かなりの普及率でしょう。特にほとんどの国公立大学では共通テストが必須とされています。
センター試験から共通テストへ
共通テストの始まりは1979年にさかのぼります。最初は「共通第1次学力試験」という名前で行われていました。その後、1990年度に「大学入試センター試験」へと変わり、2021年度から現在の「大学入学共通テスト」になりました。共通テストとしての実施は、2024年度で4回目となります。
以前のセンター試験では、「知識・技能」を問う出題が中心でした。しかし共通テストに変わり、知識・技能に加えて「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」も重視されるようになったのです。
こうした変更の背景としては、社会で活躍するためには知識だけでなく応用力も必要であること、グローバル人材の需要が増えたこと、などがあります。
2025年度からの変更点
2025年度からの共通テストは、さまざまな点が変更になります。大きな変更点は、新教科が加わることです。
高等学校学習指導要領改訂によって、高校の授業で「情報Ⅰ」が必修となりました。そのため、共通テストでも2025年度から出題教科に「情報」が加わります。また、数学では「簿記・会計」「情報関係基礎」が廃止され、新たに数学Cが範囲に加わります。数学の変更点をまとめると、以下のようになります。
グループ | 2024年度まで | 2025年度以降 |
数学グループ① | ・数学Ⅰ ・数学Ⅰ・数学A | ・数学Ⅰ ・数学Ⅰ・数学A |
数学グループ② | ・数学Ⅱ ・数学Ⅱ・数学B ・簿記・会計 ・情報関係基礎 | ・数学Ⅱ・数学B・数学C |
さらに試験時間が延びる教科もあります。該当する科目は、国語(80分→90分)と数学グループ②(60分→70分)です。これは前述のように、思考力や表現力、主体性が重視される形式になった影響だと思われます。
また、現在は受験生の志願票を高校がまとめて大学入試センターに郵送するなど、書類で出願していますが、2025年度からは原則オンラインに変わる予定です。詳しくは2024年6月頃に発表されるので、続報を待ちましょう。
大学入学共通テストを受験する方法
ここからはいよいよ共通テストの具体的な受け方を見ていきましょう。
共通テストの出願の仕方や費用
共通テストの出願方法は、現役生と高卒生で異なります。現役生の場合は先述のとおり、高校が志願票を取りまとめてセンターに提出してくれるので、先生の指示に従いましょう。具体的には、志願票に「検定料受付証明書」を添え、郵送で提出します。
高卒生や海外に在籍している人などは、上記の2つの書類に出願資格を証明する書類を加え、個人で大学入試センターに直接郵送します。
出願時期は毎年9月下旬~10月初旬です。2024年度試験の出願期間は、2023年9月25日~10月5日の間となっています。また、出願締切日までに検定料の払い込みもしなければなりません。検定料は、3教科以上受験する場合は1万8000円、2教科以下受験の場合は1万2000円です。
加えて、共通テストでは希望すれば成績通知書も受け取れます。ただし、出願時に申し込みと800円の払い込みが必要です。また、成績が通知されるのは4月のため、すぐに知りたい人は自己採点をしなければなりません。しかし正確な点数を知ることができるので、成績通知書をもらっておいて損はないでしょう。
共通テストの日程と試験会場
共通テストの時期は全国共通で、毎年1月中旬に実施されています。2024年は1月13日(土)・14日(日)、追・再試験が1月27日(土)・28日(日)に実施されます。
試験会場は全国に多数あり、大学や高校、大手予備校の校舎などが使用されます。しかし、自分で好きな会場を選ぶことはできず、現役生は自分の高校がある試験地区内、高卒生は志願票に記入された現住所の試験地区内の試験場が割り振られます。
2日間受験する場合、試験会場は2日とも同じ会場となります。指定された会場以外では受験できず、会場の変更もできないので、注意してください。
大学入学共通テストのレベル・難易度・内容とは?
ここからは、共通テストの内容について解説します。
全問マーク式だが以前より難化傾向
共通テストは全問マーク式で出題されます。これはセンター試験時代から変わらない出題形式です。しかし、共通テストになってからは思考力・判断力・表現力などを重視した出題になり、全体的にセンター試験より難しくなっています。
具体的には、問題文や選択肢の文章が長くなったり、図・グラフ・地図が増えたりと、理解すべき情報量が多くなりました。そのため、知識や暗記だけでは高得点は狙えません。
実際に過去のセンター試験と共通テストの平均点を3年分ずつ比べると、英語や数学、地理歴史、理科などが難化傾向にあります。しかし、共通テストの難易度や平均点は年度によってばらつきがあるので、参考程度に考えてください。
共通テストの出題科目・配点・試験時間
2024年度の共通テストの出題科目・配点・試験時間は、以下のように決まっています。
教科 | 科目 | 配点 | 試験時間 |
国語 | 国語 | 200点 | 80分 |
地理歴史 公民 | 世界史A/世界史B/ 日本史A/日本史B/ 地理A/地理B 現代社会/倫理/ 政治・経済/ 倫理,政治・経済 | 1科目 100点 | 1科目選択 60分 2科目選択 130分 (うち解答時間120分) |
数学グループ① | 数学Ⅰ/数学Ⅰ・数学A | 1科目 100点 | 70分 |
数学グループ② | 数学Ⅱ/数学Ⅱ・ 数学B/簿記・会計/ 情報関係基礎 | 1科目 100点 | 60分 |
理科グループ① | 物理基礎/化学基礎/ 生物基礎/地学基礎 | 1科目 100点 | 2科目選択 60分 |
理科グループ② | 物理/化学/生物/ 地学 | 1科目 100点 | 1科目選択 60分 2科目選択 130分 (うち解答時間120分) |
外国語 | 英語/ドイツ語/ フランス語/中国語/ 韓国語 | 英語 【リーディング】 100点 【リスニング】 100点 ドイツ語/フランス語/ 中国語/韓国語 【筆記】 200点 | 英語 【リーディング】 80分 【リスニング】 60分 (うち解答時間30分) ドイツ語/フランス語/ 中国語/韓国語 80分 |
受験科目はどう選ぶ?
共通テストの受験科目は各大学で指定されます。必要な科目は、志望校の「入試要項」「選抜要項」などをチェックしてください。
複数の大学を受ける人が多いと思いますので、必ず全ての大学の要項をチェックし、漏れがないように科目を選んでください。
基本的な科目の選び方
2024年度までの場合、共通テストの科目数は全部で「国語/地理歴史/公民/数学/理科/外国語」の6教科30科目です。しかし、一般的な大学で使える科目のパターンはある程度決まっており、ほとんど使われない科目もあることは覚えておきましょう。
例えば東京大学の2024年度の選抜要項を見てみると、共通テストの必要科目は以下のように決められています。
教科 | 科目 | 科目選択の方法 |
国語 | 国語 | 必須 |
地理歴史 公民 | 世界史B 日本史B 地理B 倫理,政治・経済 | 文系:左の4科目のうちから2科目を選択 理系:左の4科目のうちから1科目を選択 |
数学グループ① | 数学Ⅰ・数学A | 必須 |
数学グループ② | 数学Ⅱ・数学B 簿記・会計 情報関係基礎 | 左の3科目のうちから1科目を選択 (簿記・会計/情報関係基礎を選択する場合は条件あり) |
理科 | 物理基礎 化学基礎 生物基礎 地学基礎 | 左の4科目のうちから2科目を選択 (「基礎」と付かない科目も選択可だが条件あり) |
外国語 | 英語 ドイツ語 フランス語 中国語 韓国語 | 左の5科目のうちから1科目を選択 |
国公立大学はこのパターンが多く、「世界史A」「日本史A」「地理A」「数学Ⅰ」「数学Ⅱ」は利用できない場合がほとんどです。また、利用できる場合も、受験者数は極端に少なくなります。これらの科目はよほど特殊な例でない限り、受験科目から除外していいでしょう。
公民や外国語を選ぶ時も、注意が必要です。「現代社会」「倫理」「政治・経済」を利用できる大学もありますが、東京大学のように難関大学では「倫理,政治・経済」しか認められないケースが多くなっています。外国語は、私立大学だと「英語」しか認められない場合が多いです。
「第1解答科目」に注意
地理歴史、公民、理科については「第1解答科目」に注意が必要です。
2科目を選択する場合、初めの60分間で解答する科目を「第1解答科目」と言います。国公立大学や難関私立大学では、2科目のうち1科目のみを合否判定に利用することは珍しくありません。その際、得点が高いか低いかにかかわらず、第1解答科目を採用することがあるのです。そのため、自信のある科目を第1解答科目にしましょう。
共通テストの受験科目の選び方は国公立大学と私立大学で大きく異なるので、ここからはケース別に見ていきましょう。
国公立大学の場合
国公立大学では共通テスト受験がほぼ必須で、文系は5教科8科目、理系は5教科7科目が基本となります。大学によっても異なりますが、以下のパターンが多いです。
文系 | 理系 |
・国語 ・地理歴史・公民 2科目 ・数学 2科目 ・理科 2科目 ・外国語 1科目 | ・国語 ・地理歴史・公民 1科目 ・数学 2科目 ・理科 2科目 ・外国語 1科目 |
国公立大学はとにかく受験科目数が多いため、ムラがないように全科目をカバーしなければなりません。
私立大学の場合
私立大学のみ志望する場合、共通テストは必須ではありません。
しかし多くの私立大学では「共通テスト利用方式」という入試を行っています。共通テストを1回受ければその成績を各大学の受験に利用できる、便利な方式です。
共通テスト利用方式には大きく分けて、共通テストの点数のみで合否が決まる方式、または共通テストと大学独自試験を併用する方式があります。科目数は少なければ1科目、多ければ6科目程度になることもあります。
大学入学共通テストの対策法
ここでは、共通テストの対策法を具体的にご紹介します。
塾・予備校で対策する
共通テストはほとんどの受験生が受ける試験ということから、各予備校でも対策に力を入れています。大手予備校の「東進ハイスクール・東進衛星予備校(以下、東進)」や、「河合塾」、「駿台予備学校」などでは、通年で共通テスト対策講座を開講しており、共通テストで求められる5教科8科目全てをカバーできます。
映像授業で対策できる予備校も多く、部活や習い事が忙しい人も好きなタイミングで受講できるのでおすすめです。また多くの予備校では、直前の追い込みとして毎年冬期に集中講座を実施しています。
過去問と模試で対策する
共通テストはセンター試験時代と比べて変則的な出題形式になったため、過去問対策は必須です。過去3年分の試験問題と解答は、公式サイトから入手できます。
また、共通テストの過去問対策を行なっている予備校もあります。特に東進の「過去問演習講座 大学入学共通テスト対策」では、実力講師陣による解説授業が受けられ、徹底的に過去問対策が可能です。
しかし、共通テストは2024年度でまだ4回目なので、過去問の量は十分とは言えません。そこで、各予備校が実施する模試も積極的に受験しましょう。予備校では共通テストの出題傾向を毎年分析しており、本番とほぼ同じレベルの模試で実力を測ることができます。
また東進や河合塾では高1・高2生向けに、本番と同じ問題を同日に受験できる模試を行っています。本番の緊張感に慣れておくためにも、ぜひチャレンジしてみてください。
大学入学共通テストが近づいてきたら? 直前準備と当日の流れ
共通テストに向けてばっちり対策をしたら、あとは万全の状態で本番に臨むだけです。最後に、共通テスト直前の準備と終わった直後の流れをお伝えします。
共通テスト当日の持ち物
持ち物は必ず前日のうちにカバンに入れ、忘れ物がないように準備しておきましょう。試験中、以下のものは机に置いていてもOKです。
・受験票、写真票 ・黒鉛筆(H、F、HBに限る。和歌・格言などが印刷されているものは不可) ・シャープペンシル(メモや計算に使用する場合のみ可、黒い芯に限る) ・プラスチック製の消しゴム ・鉛筆削り(電動式・大型のもの・ナイフ類は不可) ・時計(辞書、電卓、端末などの機能があるもの・秒針音のするもの・キッチンタイマー・大型のものなどは不可) ・眼鏡、ハンカチ、目薬、ティッシュペーパー |
シャープペンでマークすると解答を読み取れないことがあるため、マークする時は必ず指定の鉛筆を使用してください。
その他、試験中は使用できませんが、以下のものを持っていくと安心です。
・交通費(ICカードは事前にチャージしておく) ・スマートフォン、モバイルバッテリー ・使い慣れた参考書、単語帳など ・飲み物 ・昼食 ・糖分補給ができるおやつ |
公共交通機関で会場まで行く場合はスムーズに辿り着くため、ICカードは事前にチャージしておいてください。また、スマートフォンで地図を見ながら会場に向かう人も多いでしょう。万が一充電が切れた時のためにモバイルバッテリーもあると安心です。
普段使っている参考書や単語帳があると、試験開始直前まで復習ができ、安心感につながります。また、糖分を補給すると集中力が上がると言われているため、一口サイズのチョコレートやブドウ糖タブレットなどのおやつを持っていくのもおすすめです。
共通テストを受けた後は自己採点
毎年、共通テストは全国の予備校講師も受験生と同時に受け、その場で解答速報を作成します。そのため、共通テストが終わった直後から自己採点ができます。また、新聞各社が問題と解答を当日夜にWebサイト上で公開し、翌日の朝刊にも掲載します。先述の通り、共通テストでは成績通知を受け取れますが、通知が来るのは4月なので自己採点はほぼ必須です。
共通テストでは問題冊子を持ち帰ることができます。自己採点をするためには、解答をマークするだけでなく、問題冊子にも忘れず印を付けておきましょう。自己採点で出た点数を参考にして、私立大学の共通テスト利用入試や国公立大学に出願することができます。