受験生にとって避けては通れない「模試(模擬試験)」。入試本番を迎える前に模試を受けて試験慣れしておくのはとても大事なことです。
にもかかわらず、試験前に特に何もしないという人も少なくありません。しかし、それでは模試を受ける意味を最大限に生かすことができず、志望校の合格からは遠ざかってしまいます。
この記事では、模試を受ける前の心構えから、模試直前に有効な勉強法まで詳しくお伝えします。高3生・高卒生はもちろん、高1・高2生もこのような点を意識し、模試を活用してみてください。
模試を受ける意味を理解して心構えをしておこう
模試は何のためにある?
本番の入試を模した形式で行われるのが模試です。模試を受ける意味は、大分けて次の二つがあります。
1. 今の自分の学力を確認できる
2. 入試本番の雰囲気や流れに慣れることができる
一つ目については意識している受験生も多く、偏差値や合否判定を気にする人が大半でしょう。しかし、二つ目を意識できている受験生は少ないのではないでしょうか。模試は偏差値を知るためだけに受けるものではありません。入試本番と同じような緊張感、試験問題、拘束時間などを体験するために受けるものでもあるのです。
仮にぶっつけ本番で入試当日を迎えてしまうと、普段と違う環境に戸惑ってしまって実力を十分に発揮できない可能性が高いでしょう。そのため、試験の雰囲気には前もって慣れておかなければなりません。模試は入試当日のシミュレーションができる貴重な機会ですから、本番のつもりで受けるようにしましょう。
模試前日までの準備と心構え
模試の前日はどう過ごせばいいのでしょうか? 普段通り過ごすという人も少なくないと思いますが、模試の受験による学習効果を最大限に高めるには、前日にはやっておかないといけないことがあります。次のようなことを意識して、少しでも模試を受ける意義を高めましょう。
模試の目標を立てよう
ただ何となく「良い点を取りたい」と思うだけではなく、具体的な目標を立てましょう。目標を立てる項目としては、点数、偏差値、順位、そして志望校の合否判定などがあります。以下は一例ですが、自身で目標を立てるために参考としてください。
- 得意科目は8割以上、苦手科目は6割以上の点を取る
- 得意科目は65以上、苦手科目は55以上の偏差値を取る
- 全国で4分の1以内の順位に入る
- 第一志望校はC判定以上、滑り止めはA判定を取る
このようにハッキリとした目標を立てることで、目指すべきゴールが明確になります。そこから逆算し、計画的に勉強を進めましょう。
模試前日も気を抜かずに勉強しよう
翌日に向けて「体力を貯めておこう」と考え、模試前日はつい勉強を休んでしまうという受験生もいるでしょう。しかし体力を温存するよりも、前日もしっかりと勉強することをおすすめします。
なぜなら、模試は受験本番のリハーサルになるからです。さすがに本番の前日に何もせずぼ〜っと過ごす人はいないでしょう。ほとんどの人は重要単語の総復習をしたり、今まで間違えた問題をおさらいしたり、あるいは細かい応用問題を突き詰めたりし、万全に対策して当日に備えます。
本番の前日にそのように勉強するのであれば、模試の前日も同じようにするのがおすすめです。たかが模試と思わず、できる限り本番と同じリズムで行動するようにしましょう。試験前日から当日までのルーティーンを作っておくことで、「今までこうしてきたから大丈夫」という感覚が身に付き、本番の入試も落ち着いて受けられるようになります。
前日のうちに持ち物や当日の流れを確認しよう
もう一つ忘れてはいけないのが、前日のうちに試験の持ち物を準備することと、当日の流れを確認しておくことです。当日の朝になってバタバタと準備をすると、忘れ物の原因になります。受験票や筆記用具などを忘れてしまうと、動揺して思うような力を出せませんし、場合によっては受験自体ができなくなる可能性もあります。
以下はほとんどの模試で必要となる持ち物一覧です。これらに加え、必須の持ち物が指定されることもありますので、前日までに必ず準備しておきましょう。
- 受験票
- アナログ時計
- 筆記用具(マーク式試験の場合は指定の濃度の鉛筆)
- 試験直前に見る教材やノート
- 温度調整用の上着
- 休憩時間に食べるもの(糖分補給や空腹の防止に)
また、いくら前日までの勉強が完璧であっても、試験に遅刻してしまっては元も子もありません。特に試験開始時刻はよく確認し、試験会場までの移動時間・使う電車の路線・電車の発着時刻などを併せて調べておいてください。さらに、電車が遅れるなどの不測の事態に備え、家を出る時間は30分ほど余裕を持って行動すると良いでしょう。
模試当日の準備と心構え
いよいよ模試当日。前日は模試に備えて勉強するのがおすすめですが、当日に勉強するかしないかは好きな方を選択してください。「後悔しないために直前まで追い込みたい」という人もいれば、「当日まで勉強すると逆に焦ってしまう」というタイプの人もいます。これに関しては、何度も模試を受けるうちに自分に合っている選択肢が分かってくるでしょう。
直前まで勉強したいタイプの人には、次のような勉強法がおすすめです。
- 要点をまとめて自作したプリントを見る
- 以前間違えた問題など、自分の弱点をまとめたノートや単語帳を見る
- 英語のリスニング対策として、英語の音声を聴いて耳を慣らす
模試が終わった後の心構え
模試が終わったら、可能であれば自己採点し、事前に立てた目標を達成できているかを確認します。間違えた問題・解けなかった問題を洗い出し、忘れずに復習して次のテストに生かしてください。
【種類別】模試を受ける時に意識することを解説
模試の種類には大きく分けて、「マーク式模試」「記述式模試」「大学別模試」というものがあります。一口に模試といっても、このような種類によって押さえるべきポイントは異なります。それらを意識すると、模試の効果を最大限に生かすことができ、合格に近付くでしょう。
マーク式模試のポイント
一般的にマーク式模試と呼ばれるものは「大学入学共通テスト」を想定したものです。マーク式の解答方式では、記述式とは異なる慣れが必要とされます。
・時間配分をつかむ
大学入学共通テストは試験時間の割に問題数が多く、時間内に解き終われない受験生も出てきます。いかに速く正確に解くかが重要ですので、マーク式模試で時間配分に慣れておきたいところです。
・マーク式特有の解答方法に慣れる
「解答欄を正しく塗り潰す」という動作にも慣れておかなければなりません。マーク式試験では「解答用紙にマークし忘れた」「解答が1つずれて全て塗り直しになった」といったトラブルが想定されます。せっかく正解が分かっていても、マークミスによって失点してしまうのは非常にもったいないことです。
マーク式模試の問題は記述式よりも簡単な傾向にありますが、油断せず「マーク式の解答方法に慣れる」ことを意識して受験しましょう。
記述式模試のポイント
記述式模試は、記述問題が出される一般入試を想定した模試です。
・時間配分をつかむ
記述式模試では、序盤は一問一答のような出題が多く、解き進めるにつれて記述量が増えることが一般的です。例えば、数学では解答用紙の半分ほどを使う証明問題もありますし、国語や日本史・世界史では200~300字もの記述が求められることもあります。
そのため、記述式試験ではマーク式よりもさらに時間配分が重要です。重めの記述問題に十分な解答時間を残しておくためには、序盤の基本問題はサクサクと解かなければなりません。分からない問題が出てきても長時間悩まず、後回しにするという決断も必要です。
・問題を解く順番に注意する
受験生の中には、1問目から最後の問題まで順番通りに解いていく人も多いようですが、場合によっては順番を変えて解いていくのもおすすめです。例えば、先にお伝えしたような重い記述問題が中盤に挟まっていた場合、そこに時間を取られて後半の問題がおろそかになってしまう恐れがあります。時間が足りずに後半の基本問題を取りこぼしてしまうのは、もったいないことです。
また誰しも得意分野と苦手分野があると思いますが、実際の試験では得意分野から先に解いてしまい、苦手分野にたっぷり時間を残しておくといった工夫も必要です。例えば「国語は古文が一番解きやすい」という場合、古文は後半に出題されることが多いですが、真っ先に古文から解き始めても問題ありません。
大学別模試のポイント
大学別模試は記述式模試の一つで、特に各大学の出題傾向を模して予想問題を出す模試のことです。主に難関大学を対象に実施されています。
・出題傾向の「癖」に慣れる
一般入試の問題は各大学が作成するため、出題傾向や難易度はそれぞれ異なり、大学ごとに「癖」のようなものがあります。志望校の出題の特徴に慣れることができる大学別模試は、可能な限り受けるようにしましょう。
・ライバルの数や自分の順位を把握する
基本的に、大学別模試を受けるのは同じ大学を受験するライバルたちです。大学別模試を受けることで、ライバルの人数やその中での自分の順位を把握できます。現役生・浪人生が交じった模試だと、さらに実際の入試に近いデータを得ることができます。
模試直前にやると効果的な勉強法をご紹介!
以上のようにさまざまな種類のある模試ですが、具体的にはどのような勉強をして挑めばいいのでしょうか。
模試の過去問を解く
大手の予備校は自社で模試を実施しているわけですが、それだけでなく模試の過去問題集を発売しているところもあります。この模試の過去問を解いておくことには、以下のようなメリットがあります。
- 出題形式や傾向が分かる
- 問題量と時間配分が分かる
- 今回出そうな問題を予想できる
ぶっつけ本番で模試を受けると、慣れない出題形式に戸惑っているうちにどんどん時間が経ってしまい、いつも通りの実力を出せないことがあります。事前に実際の過去問を解いてみて、出題形式や出題傾向をつかんでおきましょう。
過去問を数年分解いていくと、出題されやすい「頻出」と言われる問題が分かり、「次はこんな問題が出そう」という大体の予想ができるようになってきます。このように、出題傾向を自分なりに分析してみることは非常に大切です。なぜなら、過去問から出題傾向を分析する経験は、実際の志望大学の入試にも生かせるからです。
暗記ものを総復習する
模試の前に暗記ものを総復習しておくことも効果があります。数学や理科の公式、英語や古文の単語、日本史・世界史の重要語などを全体的にざっとおさらいしましょう。テスト中は緊張して、基本をど忘れしてしまうこともあるものです。不安要素を少しでも減らすために、何度も見直しておくと安心できます。「ここはもう覚えたから大丈夫」と思っている部分も、もう一度見ておくことでさらに定着します。
自分の苦手なところだけを集めた単語帳やノート、プリントを作っておき、直前に見る方法も有効です。高校生の場合、定期テスト期間と違って模試の前にも部活があり、勉強時間があまり取れないこともあるのではないでしょうか。そんな時に自分専用の単語帳などがあると、スキマ時間に暗記の復習ができるので重宝します。
睡眠をしっかり取ることを忘れずに!
ここまで模試の前の勉強法についてお伝えしましたが、やり過ぎは禁物です。深夜まで勉強して睡眠時間を削ってしまうと、寝不足で十分な力が発揮できなくなりますし、寝坊してしまう可能性も高くなります。模試前日だからと言って夜遅くまで勉強せず、早めに就寝しましょう。普段通りの睡眠時間を確保することをおすすめします。
きちんと実力を出すことで正確なデータを取ろう
睡眠不足で集中できていないと、自分の本当の実力を測れません。模試を受ける意味の一つは「今の自分の学力を確認すること」です。普段の力を発揮できないと、そもそも正確な偏差値や合格可能性を計測できず、信頼性の低いデータとなってしまいます。
受験勉強では模試のデータから今後の対策を決めることが多いです。このデータが正確でないと、今後の受験勉強にも影響が出てしまいます。不正確なデータに基づいて的外れな勉強を続けても、学力は伸びていきません。正しいデータを取るために前日はしっかり寝るようにしましょう。
模試前日の睡眠も本番のシミュレーションになる
試験前日はどうしても緊張してしまい、なかなか寝付けないものです。そんなときにどうやって眠り、十分な睡眠時間を確保するかということも、模試の機会にシミュレーションしましょう。
試験当日の朝起きてから試験が始まるまでの間にどのように過ごすべきかも、模試を受けることで見えてきます。試験前にどのように過ごせば一番リラックスできるのかは人によって異なり、絶対の正解はありません。「単語帳やノートをギリギリまで見直す」「心が落ち着く音楽を聴く」「目をつむって気持ちを整理する」など、自分なりの方法を見つけましょう。