数ある学部の中でも、医学部受験は最難関と言ってよいでしょう。文部科学省の調査によると、2021年度のデータでは全国の大学の医学部医学科合格率は13.55%でした。
さらには合格者のうち、6割以上を浪人生が占めているというデータも公開されています。つまり、医学部医学科は難関である上に、現役合格となるとかなり狭き門と言えます。
医学部合格を目指すために最も重要なポイントのひとつは、良質な指導を受けられて、かつ自分に合った予備校に通うことです。予備校との相性が良ければ、効率良く成績を伸ばせるでしょう。
本記事では、医学部を目指す受験生の皆さんへ向けて、予備校の選び方のポイントや、医学部受験に強いおすすめの予備校をご紹介します。
医学部を目指せる予備校にはどんな種類がある?
医学部受験を目指す上で選択肢となる予備校には、大きく分けて「大手予備校の医学部向けコース」と「医学部受験専門予備校」の2種類があります。それぞれに特徴があるため、さまざまな面を総合的に考えて、どちらにするか決めましょう。
一般的な大手予備校の医学部コースなど
数多くの予備校のうち、年間に何万人もの生徒が通うような大手の予備校がいくつかあります。河合塾、駿台予備校、東進ハイスクール・東進衛星予備校といった予備校がこれに当てはまります。このような予備校には医学部受験に対応したコースがある場合も多いため、確認してみてください。
たとえば河合塾には、東大・京大・医学部受験向けの「ONE WEX講座」があり、麹町校、名駅校のように、医学部に特化した校舎もあります。駿台予備校だと、「スーパーα医系」や「スーパー医系」と名前の付いている講座は医学部向けで、市谷校舎は医学部専門校舎です。また、後ほど紹介するように、東進ハイスクール・東進衛星予備校も医学部受験に力を入れています。
医学部専門予備校
医学系の学部を専門とした予備校もあります。ほとんどは小〜中規模の予備校で、少人数授業や個別指導となることが多いです。
医学部受験では医学に絡めた特殊な問題が出るなど、他学部と異なる点も複数あります。医学部専門予備校の講師やチューターは医学部のノウハウをよく知っており、的確に対策できるでしょう。
遠方に住む生徒のために、寮を完備している予備校もあります。また、他の生徒も医学部受験を目指す人ばかりであるため、ライバルから刺激を受け、モチベーションを保てるというメリットもあるでしょう。
大手予備校と医学部専門予備校、4つのポイントで比較
さまざまな面で違いがある大手予備校と医学部専門予備校。では、どちらの予備校がおすすめできるのか、4つのポイントから比較しました。
- カリキュラム:大手<医学部専門
医学部専門予備校では、医学部受験に照準を合わせた最適なカリキュラムを用意しています。そのため、効率良く学習できるのです。一方、大手予備校では、「東大・京大・医学部コース」などのように他の難関大対策と医学部対策が一緒のコースになっている場合も多くあります。
- サポート:大手<医学部専門
医学部専門予備校は、医学部受験のための情報を多数持っています。そのため、生徒一人ひとりに対してどんな対策が必要か、的確に見極めてサポートしてくれるでしょう。また、大手と比べて生徒数が少ないため、質問や相談がしやすく、講師やチューターの目が届きやすいという面もあります。
- 学習環境:大手>医学部専門
大手予備校は全国に校舎があるため、どこに住んでいても通いやすいでしょう。一方で医学部専門予備校は校舎が少なく、遠方の場合は寮に住む必要が出てきます。現役生が寮で暮らすのは現実的に難しいうえ、もし寮に入る場合は学費に加えて寮費もかかってしまいます。また、医学部専門予備校には浪人生が多いという特徴もあり、現役生はやや居心地が悪いかもしれません。
- 料金:大手>医学部専門
医学部を受験するとなると、高額な授業料を心配する受験生や保護者も多いでしょう。大手予備校と比べて、医学部専門予備校の学費は高い傾向にあります。安い金額に抑えたい場合は特待生になるなど、学力と努力も必要とされます。
医学部を受ける!その時、予備校選びのポイントは?
実際に通う予備校を選ぶ際は、どんなポイントに気を付ければよいのか迷ってしまうかもしれません。医学部合格を目指せる予備校を探す時は、以下のようなポイントを見極めましょう。
「医学部に強い」予備校かどうか
医学部受験は、医学に関わる問題が出されたり、二次試験に面接と小論文があったりと、他の学部と違う点が多いです。そのため、特に大手予備校を選ぶ場合、いわゆる「医学部に強い」予備校かどうかが重要になってきます。
授業のカリキュラムをチェックし、医学部に特化した講座やコースがあるか、面接・小論文対策ができるかなどを確認しましょう。また、各予備校で公開されている、最新の合格実績もチェックしてみてください。医学部医学科の合格者が多い予備校は、それだけ「医学部に強い」と言えます。
授業方式や講師が自分と合っているか
その予備校の授業方式や、講師との相性も大切なポイントです。どんなに評判のよい予備校でも、自分と合っていなければ十分な効果は得られないでしょう。
予備校の授業方式には、大きく分けて集団授業と個別指導があります。集団授業なら他の生徒からの刺激を感じることができ、個別指導なら一人ひとりにぴったりのカリキュラムで学習が可能です。
また対面授業・オンライン授業・対面とオンライン併用といった違いもあります。遠方にある医学部専門予備校でも、オンライン授業であれば受けられます。
そして、よい講師がいるかどうかもチェックしてください。授業が分かりやすい、受験問題をよく研究している、質問や相談をしやすいなどといったことです。体験授業を受けたり、授業映像を見たりして、成績を伸ばしてくれる講師を見つけてみましょう。
サポート体制がしっかりしているか
予備校では授業を受けるだけでなく、受験に向けたサポートもしてくれます。しかし、どれくらいサポートしてくれるかは予備校によって差があります。
できるだけサポート体制が整っている予備校を選ぶなら、授業以外の面もしっかりチェックしましょう。講師やチューターに質問をしやすいか、志望校の相談に乗ってくれるか、模試のフィードバックをしてくれるかなどを確認してみてください。
特に医学部専門予備校だと、現役医大生のチューターが在籍していることもあります。実際に行っていた受験勉強の方法や大学生活についてなど、年齢が近いからこそ聞けることもあるでしょう。
その点、大手予備校は1つの校舎に通う生徒が多過ぎて、講師やチューターも生徒全員を把握しきれず、サポートが手薄になりやすいと言えます。
学習環境・設備が整っているか
通いやすく、学習しやすい環境かどうかも重要です。自習室の使いやすさと開室時間、通学にかかる時間、駅やバス停から近いか、近くにコンビニや本屋などはあるか、といったポイントを確認しましょう。
医学部専門予備校には、寮が付いているところも数多くあります。遠方に住んでいて家から通えない場合、寮生活を検討してもよいでしょう。医学部専門予備校の寮では、授業外の時間にも質問ができたり、赤本が完備されていたりなど学習環境が整っていることが多いです。
医学部受験、予備校の学費はどれくらいかかる?
医学部受験は、他の学部を受験する場合と比べても、特に学費がかかると言われています。
医学部受験ではレベルの高い授業が必要とされるうえ、面接や小論文の対策もしなければなりません。これらを全て予備校でカバーしようとすると、他学部と比べて高額の費用がかかるのです。しかし、学費を抑える方法もいくつかあります。
年間300万円以上も珍しくない!?上手に特待生制度などを使おう
医学部専門予備校に通うと、年間で300万円以上の学費がかかることも珍しくありません。また、一般的に浪人生の学費は現役生より高く設定されます。加えて、寮に入る場合は数百万円の寮費も支払うことになります。
しかし、学費を安く抑えるために工夫できる点もあります。代表的なものは特待生になることです。特待生制度を設けている予備校で一定の基準をクリアすれば、授業料を大幅に抑えられます。予備校の学費に関しての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
予算と相談しつつ、資料請求や個人面談、体験授業などを利用して決めよう
まずは候補となる予備校へ資料請求をしましょう。ほとんどの予備校は無料で資料を送ってくれます。予算をはじめ、授業の質や学習環境などを総合的に考えましょう。
候補を絞ったら、各予備校へインターネットや電話で入学の相談をします。中には、無料で個人面談や体験授業を受けられる予備校もあります。疑問点はここで解消し、予備校との相性を確認しておきましょう。
医学部を目指せるオススメの予備校(大手予備校編)
ここからは、医学部合格を目指すためにおすすめの予備校をご紹介していきます。
まずは大手予備校の中でおすすめの2校「東進ハイスクール・東進衛星予備校」「早稲田アカデミー」をピックアップして、詳しく解説します。
東進ハイスクール・東進衛星予備校
大手予備校の東進ハイスクール・東進衛星予備校は、当サイトが集計した「2021年 国公立医学部合格実績ランキング」「2021年 私立医学部合格実績ランキング」共に、現役生の合格実績で1位にランクインした医学部受験に適した予備校です。現役・浪人合わせた順位でも、国公立で4位、私立で5位となっています。
映像授業をメインに学習を進める東進では、「医学部・歯学部総合英語」「国公立大医学部対策数学」「医学部対策物理」「医学部対策小論文トレーニング」など、医学部受験向け講座が設けられています。「過去問演習講座」では、医学部のある大学も含め、全国101大学の過去問をカバーしており、受験のプロによる採点・添削まで受けられます。
また、東進は「野田クルゼ」や「メビオ」といった医学部専門予備校の協賛のもと、「医学部82大学判定テスト」を年に2回実施。医学部を持つ大学は全国で82校ありますが、その全ての合否判定を受けられます。
早稲田アカデミー
早稲田アカデミーは医学部に強い予備校で、同じ系列に医学部専門予備校の「野田クルゼ」があります。こちらも当サイトの「2021年 国公立医学部合格実績ランキング」「2021年 私立医学部合格実績ランキング」にもランクインしました。
早稲田アカデミーでは、現役生向けに、野田クルゼと連携して「医学部必勝講座」を行っています。これは、2時間×4コマ=1日8時間の授業を月3日受ける集中講座です。
また、女子は無料で「東大・医学部クラブ」に入会できます。現役の医学部生に質問や相談ができる他、備え付けの赤本や参考書などを自由に使えるのです。
医学部を目指せるオススメの予備校(医学部専門予備校編)
ここからは、5つの医学部専門予備校について、それぞれの特徴をお伝えします。一口に医学部専門と言ってもそれぞれ特色が異なるため、自分に合いそうなところを見つけましょう。
メルリックス学院
メルリックスは私立医学部・私立歯学部だけに的を絞った予備校です。校舎は、東京都渋谷区、大阪府吹田市、愛知県名古屋市の3校です。
これらの学部の入試は大学受験全体を見ても特殊とされており、対応が難しいと言われます。しかしメルリックスは開校以来のノウハウを生かし、私立医歯学部入試対策となるの強力な情報を持っています。
野田クルゼ
野田クルゼは、1970年に開校し50年以上の歴史を持つ、早稲田アカデミーグループの医系学部(医学部・歯学部・薬学部)専門予備校です。校舎は、東京都・御茶ノ水に1校のみとなっています。
クラス授業と個別指導があり、個別指導では教師を指名できるためミスマッチを防げます。また、オリジナル模試の「クルゼ模試」を、30年以上にわたり実施。受験者のほとんどは医学部志望のため、正確な偏差値や判定を把握できます。
メビオ
メビオは、大阪府大阪市に校舎がある予備校です。少人数授業や講師自らが作成するオリジナルテキスト、そして年間1800時間(自習を加えると3200時間)にも上る授業時間によって合格を目指せます。
メビオには、高卒生向けの「高卒生本科」、高3生向けの「高3生本科」、高1・高2生向けの「高1・高2生本科」があります。また、オンライン授業のコースもあり、そこでもクラス授業か個別指導を選べるのが特徴です。
また、YMSおよび英進館メビオと共同で、「私立医学部 大学別模試」を開催しています。
YMS
YMSは、東京都・代々木に校舎があります。手厚いサポートや多様なコースなどが特徴で、授業を行う講師が担任となり、生徒は週に1度、担任と面談を行います。
コースは高卒生向け、高3生向け、中3〜高2生向けコースがそれぞれある他、「外国人留学生コース」もあります。授業では、40年以上の歴史の中で改良を重ねたオリジナルのカリキュラムとテキストを5周し、「繰り返す」ことで学力を定着させます。
クエスト
クエストは東京都・新宿に校舎があります。オーダーメイドで学習計画を作成するなど、生徒一人ひとりに細かく対応する「個人差対応システム」を導入。
さらには、タイムカードと、達成度や模試の結果を記録する「個人学習カルテ」により、生徒の学習スケジュールを厳しく管理しています。授業時間以外でも、細かくサポートしてほしい人におすすめと言えるでしょう。
医学部を目指せるオススメの予備校(その他編)
英進館
英進館は幼児から高卒生まで対象としている一般向け予備校ですが、多くの医学部医学科合格者を輩出しています。また、福岡県福岡市に校舎を持ち、私立医学部医学科の受験対策を専門とする「英進館メビオ」も展開しています。
国公立としては九州大学や佐賀大学、私立としては福岡大学や久留米大学など、九州地方にある大学の医学部に強いため、これらの大学を志望する人は要チェックです。
学参
学参は小学生から浪人生まで対応している個別指導の予備校です。家庭教師による指導がメインですが、全国600カ所以上の教室で個別指導も受けられます。
高校生向けコースの中に「医学部受験コース」があり、多くの医学部合格実績を持つプロ講師が付きます。授業は完全オーダーメイドのため、基礎からやり直したり、他の予備校の授業をフォローしたりすることも可能です。さらに、指導を受ける時間や回数を柔軟に変更することもできます。