かつて「AO入試(アドミッション・オフィス入試)」と呼ばれていた入試方法は、2021年度から「総合型選抜」となり、名称とともに内容も変更されました。具体的には「各大学が実施する評価方法、あるいは大学入学共通テストのいずれかの利用が必須」となり、かつ「志願者本人が記載する活動報告書、大学入学希望理由書及び学修計画書などの資料を積極的に活用すること」とされたのです。
しかし、上のような変更点にどう対応すればよいのか分からない人は多いでしょう。そんな受験生に向けて、各予備校や塾では総合型選抜の対策を行っています。この記事では、総合型選抜を受ける人におすすめの塾・予備校をランキングでご紹介します。
近年利用者が増加している総合型選抜で合格を目指そう
文部科学省「令和4年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、国公立・私立ともに、総合型選抜の実施大学数・入学者数は増加しています。
2020(令和2)年度の実施大学数は計607校・入学者数は6万5041人。対して2022(令和4)年度は652校・8万4908人まで増加しています。総合型選抜は、今やポピュラーな入試方法と言えるでしょう。
学力だけで判断されるわけではないため、一般選抜では入りにくいようなレベルの高い大学も狙えます。とはいえ、まだ新しい入試方法であり、どういった準備をすればよいのか、手探りな受験生が多いでしょう。志望校に合格するためには、総合型選抜がどんな入試方法なのかを知り、適切な対策をする必要があります。
AO入試から総合型選抜へ。名称以外にどこがどう変わった?
AO入試から「総合型選抜」へ変更するにあたり、文部科学省は以下の点を改善しました。
- (1)小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテ スト,資格・検定試験の成績などもしくは(2)「大学入学共通テスト」の少なくともいずれか1つを必ず活用すること
- 志願者本人が記載する資料(活動報告書、入学希望理由書、学修計画書など)を積極的に活用すること
今回の変更点を大きくとらえると、学力だけではなく、より多面的・総合的に受験生を評価する方針になったといえます。高校時代にどんなことを学んだか、また学業以外にどんな活動をしたか、ということに重点が置かれるようになったともいえるでしょう。
また、出願時に提出する「調査書(内申書)」にも変更点があります。評定平均値だけでなく、部活動や課外活動、特技、留学経験、持っている資格など、学校の成績以外の項目も細かく記入する形式になったのです。
選抜方法に「大学入学共通テスト」を利用する大学もあります。評価の方法は大学・学部によってさまざま。文部科学省では「小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト」などとしており、どんな選考方法を取るかは大学の自由です。そのため、志望校に特化した対策を立て、柔軟に対応しなければなりません。
一方で、「大学とのマッチ度」が求められている点は、総合型選抜になっても変わりません。AO入試は、各大学や学部のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)にマッチする学生を求めて実施されていました。総合型選抜でも「アドミッション・ポリシーに合致するかどうか」は引き続き重視しましょう。
他の入試方式との併願は可能なのか?
同じ大学であれば、総合型選抜と公募推薦、一般選抜などとの併願は基本的に「可能」です。たとえば、総合型選抜で不合格だった場合でも、公募推薦や一般選抜に出願し、再度チャレンジできます。
一方で、総合型選抜は一般的に「専願」であるため、他大学との併願は「不可能」なことが多いです。専願とは、「合格したら必ず入学することを了承した上で出願すること」を言います。ただし、他大学と「併願可能」としている大学も一部にはあります。例えば、慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部の募集要項には以下のような記載があります。
Q. 慶應義塾大学の他学部,他大学との併願は可能ですか?
A. 本学の他学部や他大学への出願に関しては、それを禁止するものではありませんが、総合政策学部・環境情報学部 AO入試への出願条件は、あくまで本学総合政策学部・環境情報学部を第一志望とする者です。
併願に関しては募集要項に記載されているため、総合型選抜を受験する人は必ずチェックしてください。
浪人生でも総合型選抜は受けられる?
結論からお伝えすると、浪人生でも総合型選抜を受けられます。一般的に、総合型選抜の出願資格には「高等学校もしくは中等教育学校を卒業した者、および出願時点で入学までに卒業見込みである者」などとあり、現役生に限定されていません。
実は、総合型選抜は浪人生におすすめの方式です。浪人生は現役生と比べて時間に余裕があり、面接や志望理由書の準備が入念にできます。総合型選抜は出願時期が早く、夏~秋に締め切られることが多いため、早めに準備を進めましょう。
総合型選抜は塾・予備校で対策できる! おすすめ塾・予備校ランキングをチェックしよう
これまでお伝えしてきたような点から、自分だけ、あるいは学校のフォローだけで総合型選抜対策をすることは難しいでしょう。そんな受験生のために、総合型選抜対策ができる塾や予備校が存在します。
塾や予備校の講師は、いわば大学受験のプロフェッショナル。毎年変わる受験傾向を分析し、皆さんが志望校に合格できるよう役立てています。こうした塾や予備校に通い、最新情報とノウハウを活用するのも一つの手です。
当サイトでは、各予備校における総合型・学校推薦型選抜の合格実績ランキングを集計しました。2023年の結果は以下のようになっています。
ただし、学校推薦型選抜も合わせたランキングであること、そもそも総合型選抜の合格実績を公開している塾・予備校が少ないことは、ご承知おきください。「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」は総合型選抜とよく似た入試方法ですが、こちらは出身高校の校長による推薦が必要となり、総合型選抜とは異なるものです。
学校推薦型選抜に関しては、以下の記事を参考にしてください。
塾・予備校で総合型選抜対策を! どんな講座がある?
塾や予備校で総合型選抜対策をすることになったら、受講の内訳は以下のようになるでしょう。徹底的に対策するなら高1から始めてもよいです。幅広い準備が必要だと思ってください。
- 定期テスト対策
調査書に記載する評定平均値は、高1の1学期(前期)から高3の1学期(前期)までの成績によって割り出されます。評定平均値を上げるためには、なるべく早くから定期テスト対策をするに越したことはありません。定期テスト対策はグループ指導や映像授業でも可能です。
- 資格・検定取得のための対策
資格を持っていると、選考で有利になる可能性が高いです。また大学・学部によっては、指定の資格・検定を取得していることを出願条件としているところもあります。資格取得を目指す場合は、失敗を避けるため、手厚い指導を受けられる個別指導がおすすめです。
- 提出書類の準備
塾や予備校では「志望理由書」や「活動報告書」、その他任意で提出する書類など、出願時に必要な書類の作成をサポートしてくれます。高校生にとっては慣れない作業になるため、個別にアドバイスを受けることをおすすめします。
- 小論文、口頭試問など二次選考対策
二次選考は、小論文や口頭試問をはじめ、プレゼンテーション、グループディスカッションなど、大学ごとにさまざまな方法を採用しています。口頭試問やプレゼンテーションなら、個別指導で対策することになるでしょう。小論文であれば個別指導以外に、グループ指導・映像授業・短期講習などでも対策できます。
- 大学入学共通テスト対策
二次選考で共通テストを利用する場合は、共通テストに特化した対策も必要です。共通テスト対策はグループ指導や映像授業でも受講できます。
- 一般選抜対策
万が一、総合型選抜で不合格だった場合に備え、一般選抜の対策もしておくと安心です。グループ指導や映像授業、短期講習の志望校別講座でも可能ですが、最短ルートで効率よく志望校を目指すなら個別指導がよいでしょう。
塾・予備校で総合型選抜の対策をすると、費用はどれくらいかかる?
塾や予備校で総合型選抜対策をする場合、おおよその費用は1年間で40万~120万円程度でしょう。
総合型選抜専用コースが用意されていることもありますが、通常の個別指導を選択し、オリジナルのカリキュラムを組むことも多いです。そのため、どの程度しっかりと対策するかによっても料金に差が出てきます。個別指導では費用が高めになることもありますが、その分じっくりと、一人ひとりに合った対策を立てられると考えてください。
また、浪人生は現役生より費用がかかり、総額で現役生の数倍になることも珍しくありません。
費用はホームページなどでは公開されていないことも多いため、ご自身で各校舎へ問い合わせることになるでしょう。その際は1つの塾・予備校だけに絞るのではなく、いくつかの候補へ問い合わせることがポイントです。費用だけでなく指導内容、サポート面などを総合的に比較し、納得できるところに決めましょう。
総合型選抜対策におすすめの塾・予備校とその特徴
最後に、ランキング上位の塾・予備校から、1位の早稲田塾と2位のトフルゼミナール、加えて総合型選抜対策向けのおすすめとして、大手の東進ハイスクール・東進衛星予備校と総合型選抜専門塾のLoohcs志塾をピックアップして特徴をご紹介します。
いずれも、総合型選抜対策に力を入れていたり、実績がある予備校です。総合型選抜対策のできる塾・予備校を探す際、ぜひ参考にしてください。
1位:早稲田塾
早稲田塾は、数ある塾や予備校の中でも、特に総合型選抜に力を入れている塾です。
2023年度の総合型・学校推薦型選抜における合格者は、全大学合わせて1549人。そのうち早稲田・慶應義塾・上智・国際基督教大学(ICU)の難関大合格者は338人でした。これらは全て現役合格なのも注目したいところ。
早稲田塾では、志望校の決定から出願書類対策、志望校に合わせた二次選考対策まで、総合型選抜における全行程をフォローしています。小論文対策は必修となっており、「英語4技能資格試験系講座」では英語の資格・検定対策も可能。第一線で活躍する社会人を招いた「未来発見プログラム」、プロの俳優から表現力を学べる「表現力開発講座」など、オリジナリティあふれる講座があることも特徴です。
また、早稲田塾は海外志向が強く、必要であれば海外の大学も提案してくれる他、高度な英語教育やワークショップも行っています。留学や海外での就職を視野に入れている人には特におすすめの塾です。
2位:トフルゼミナール
英語専門塾のトフルゼミナールでは、総合型選抜の対策も行えます。2023年度には741人(総合型選抜・学校推薦型選抜の合計)が特別選抜で合格しました。中でも、早稲田大学や上智大学 国際教養学部の合格者数占有率は8割超という実績を誇っています。
トフルゼミナールでは、大学別のオリジナルカリキュラムによって対策ができます。その他、英語面接対策講座、志望理由書・自己推薦文・面接で重要な表現力とコミュニケーション能力を養う人間力養成講座など、さまざまな面から対策が可能です。
また英語専門塾であることから、英語資格試験の対策は申し分ありません。特に志望大学の出願資格として英語の資格試験の条件が設定されている場合、トフルゼミナールはおすすめです。
東進ハイスクール・東進衛星予備校
数ある予備校の中でも大手であり、「3大予備校」の1つとしておなじみの東進。ナガセグループ直営の「東進ハイスクール」の他に、フランチャイズ予備校である「東進衛星予備校」を全国に展開しています。2つの予備校で受けられる授業は同じものです。
2023年度の総合型・学校推薦型選抜合格者は、旧帝大・東工大・一橋大・神戸大を合わせて446人、国公立医学部医学科で318人。難関大の総合型選抜に強い予備校と言えます。
東進では映像授業を中心に進めるため、好きな時間に視聴でき、自宅学習も可能です。総合型選抜を受ける場合、出願書類の作成や面接の練習、課外活動などで忙しくなりますが、自分のペースで学習できます。ちなみに、2つの予備校で受けられる授業は同じものです。
また、生徒一人ひとりに担任が付き毎週面談を行うなど、合格に向けて徹底サポート。総合型選抜を受験する場合も、それぞれのケースに合わせて柔軟に対応してくれます。実力講師陣による授業を効率良く受けられるので、共通テストを利用する人や一般選抜対策もしたい人には特におすすめです。
Loohcs志塾
Loohcs志塾は総合型選抜の専門塾です。2022年度入試の総合型選抜・学校推薦型選抜では、慶應義塾大学124人、早稲田大学11人、上智大学31人などの結果を出しています。東京大学の学校推薦型選抜合格者も3人。難関大にも強い塾であるといえるでしょう。
また、学費は平均して年40万円程度と安いことも特徴です。
専門塾だけあって、志望理由書の作成、小論文、グループディスカッションなど、総合型選抜における全てのステップをフォローしています。単なる入試対策だけではなく、生徒の「志」をともに考えることをモットーとしています。そのため、自立した意思と思考力も身に付けられるでしょう。