大学受験は、受験生だけでなく保護者である親にとっても大きな関門です。子どもの将来がかかった重要な時期に、親としてどのようなサポートができるのでしょうか。
この記事では、大学受験において親にできることや避けるべきこと、また親も知っておきたい大学受験の知識について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
大学受験期の子どもがいる親のよくある悩み

大学受験を控えた子どもを持つ保護者のなかには、さまざまな悩みを抱えている方が少なくありません。
例えば、以下のような不安や心配を感じているケースが多く見られます。
- 子どもの成績がなかなか上がらず、志望校に合格できるのか不安。
- 子どもが家で勉強しているように見えない。塾や学校でもちゃんと勉強しているのかわからず心配。
- 夜遅くまで勉強していることが多く、生活リズムが崩れていることが気になる。
- 入試当日、子どもが体調を崩さないか心配。
- 仲の良い友達が推薦入試で早めに進路を決めたこともあり、子どもが不安定でピリピリしていて心配。
- 私立大学に通うことになった場合の学費や、一人暮らしをすることになった場合の生活費について悩んでいる。
- 進路についての意見が子どもと合わない。
- 親として子どもを励ましてやる気を出させるつもりが、逆効果になってしまうのではないかと思い、どう接すべきかわからず悩んでいる。
- 自分が受験した頃と比べて受験制度が複雑になっており、把握するのが難しい。
子どもの大学受験に対して親ができる7つのこと

受験生の子どもを持つ保護者が行なえるサポートとして、特に重要なものを7つご紹介していきます。それぞれのサポート方法について、詳しく見ていきましょう。
精神面のサポート
受験生が合格を勝ち取れるかどうかの鍵は、「精神的な支えがあるかどうか」にあるといっても過言ではありません。なぜなら、長い受験準備期間において、心の状態が落ち着いていなければ、勉強に集中することが難しいからです。
学力はすぐに上がるものではなく、日々の積み重ねで少しずつ上がっていくものなので、受験期ともなると焦ってしまったり、切羽詰まって自分を追い込んでしまったりする受験生も少なくありません。子どもが自信を持って受験に臨めるよう、次のような精神面のサポートを心がけましょう。
大切なのは子供の努力を認めること
まずは、子どもの努力を認めることが大切です。「毎日勉強を頑張っていて偉いね」「一生懸命なあなたなら大丈夫」といったポジティブな言葉をかけることは、子どもの自信につながります。
また、「あなたが大学に合格すると信じているよ」と、親が子どもの成功を信じていることを伝えることで、本人はより前向きに受験に取り組めるようになります。前向きな言葉で子どもを励ますことは重要ですが、それが子どものプレッシャーになることもあることには注意しながら、タイミングを見計らって声かけをするとよいでしょう。
息抜きの場も忘れずに
さらに、子どもの精神面をサポートするうえで親が意識したいのは、適度な息抜きの時間を設けることです。子どもは受験勉強に没頭するあまり、ストレスが溜まりすぎてしまうこともあります。
だからこそ、親が意識的に休息を促すことが大切です。例えば、家族みんなでゆっくり食卓を囲んで会話を楽しむ時間をつくったり、週末に近所の公園へ散歩に出かけたりと、ちょっとした気分転換が子どものストレスを和らげてくれます。
学習環境の整備
受験期の子どもは、日々、勉強の進捗状況に敏感になっています。「今日は集中できて、いつもより多くの問題が解けた」「今日は調子が悪くて、予定の半分しか進まなかった」など、自分の学習の成果を細かく意識しています。
そこで、子どもが集中して学習を進められるよう、親は家庭内の環境に気を配る必要があるでしょう。
具体的には、
- 騒音に気を付け、できるだけ静かな学習空間を用意する
- 子どもが欲しがる参考書や問題集はできるだけそろえるようにし、本人のモチベーションを低下させないようにする
- 必要に応じて学習塾に通わせ、夏期講習などに参加させる
などの方法が挙げられます。
受験に挑む子どもの気持ちを尊重し、効果的に受験勉強を進められるようにサポートしましょう。
また、子どもが塾に通っているなら、送り迎えも親ができる大きなサポートです。特に夜間は防犯面も不安ですから、どうしても送迎できない日は親戚に頼むなどして、安全に通塾できる環境を整えてあげましょう。
情報収集と進路相談
情報収集は、受験生を持つ親ができる重要なサポートの一つです。受験生は日々の勉強に追われ、希望する進路に関係する大学・学部の情報を、詳細に調べきれていない場合があります。そこで、親が積極的に情報収集を行ない、子どもに大学や学部の選択肢を提示できるようにしておくとよいでしょう。
また、オープンキャンパスは、各大学の雰囲気を直接知るための貴重な機会です。子どもが気にしている大学については、オープンキャンパスの日程も把握しておきましょう。
さらに、親子で一緒に大学の説明会に参加するのもよいでしょう。親子で同じ情報を共有できれば、その後の進路相談をより具体的に進められます。
ただし、見学や説明会の際は親が前面に出すぎず、子ども自身が主体的に情報を得られるよう配慮することが大切です。
受験にかかる費用の負担
大学受験にかかる費用は、意外と多岐にわたります。受験料や入学金はもちろん、受験会場が遠方の場合は交通費や宿泊費も必要です。
また、塾に通う場合は塾代や夏期講習代、模試代、参考書代なども用意しておかねばなりません。これらの費用がどの程度かかるか把握しておき、必要なときに慌てず対応できるように前もって準備しておくと安心です。
受験料は、複数の大学を受ける場合、その分だけかかります。
入試日程によっては、第一志望の合否がわかる前に、先に合格した大学の入学金を支払わねばならないこともあります。
そのため、子どもとよく話し合い、受験する大学の数や順序を含めたスケジュールを立てておくことが大切です。
もちろん、経済的な負担が大きくなる場合もあるでしょう。それでも、子どもが安心して勉強に集中できるよう、「お金のことは気にしなくていいよ」と声をかけてあげられるようにするのが理想的です。
健康的な生活をサポート
受験勉強は長期戦です。無理をして身体を壊すと勉強が滞ってしまうため、子どもが毎日健康的な生活を送れるよう、親が積極的にサポートすることが大切です。
子どもが集中して勉強に励めるよう、栄養バランスが取れた食事を用意しましょう。また、十分な睡眠も必須です。
子どもが塾から帰宅するタイミングで食事やお風呂を準備しておけば、帰宅後早めに眠れます。子どもがあまりに根詰めて勉強しているようであれば、適度に運動や休養を取るよう促してあげてください。
試験日が近づいてきたら、家族全員で普段以上に感染症に気を付けましょう。インフルエンザの予防接種を受け、こまめな手洗いやうがいを心がけてください。
スケジュール管理と手続きのサポート
受験に関する手続きやスケジュールの管理を親にサポートしてもらえると、子どもは安心して勉強に集中できます。
最新の受験情報を把握するため、進路説明会は親も積極的に参加しましょう。
大学入学共通テストや国公立2次試験、私立大学の試験日、願書締め切り日、受験料や入学金の支払い期限などを調べてカレンダーにまとめ、子どもと共有できるようにしておくと、お互いにうっかり忘れてしまう事態を防げて安心です。
遠方の大学を受験する場合、ホテルや交通機関の予約手続きも代わりにしてあげると、入試直前で不安を感じている子どもにとって大きな助けとなるでしょう。
子どもが学習スケジュールの立て方に悩んでいるようであれば、相談に乗ってあげるのもオススメです。
まずは志望校を決め、合格するために何をすべきか、今何が足りていないのか書き出します。
それを細分化して短期目標に落とし込むことで、入試本番までのスケジュールを立てやすくなるでしょう。
子どもと一緒にスケジュールを立てることで、いつまでに何ができていればいいか共有できるため、むやみに「勉強しなさい」と言う必要がなくなるというメリットもあります。
信じて見守る
受験生の親ができるサポートを紹介してきましたが、最終的には子どもが決めたことを尊重し、信じて見守ることが大切です。
人生の一大イベントである大学受験を控えた子どもにとっては、親からの応援の言葉や「大丈夫」がプレッシャーになってしまうことがあります。もちろん、励ましやアドバイスも大切ですが、ゆっくり話を聞いて、そっと子どもの好きなご飯やお菓子を用意するだけで良い場合もあるはずです。
どんなに手厚い親のサポートがあろうと、結局頑張らねばならないのは子ども自身です。子どもの頑張りを信じて、温かく見守りたいものです。
受験生の親が避けるべき5つの行動

次に、大学受験を控える子どもがいる親が避けるべき行動についても解説していきます。
プレッシャーをかけすぎない
大学受験において、親が子どもにプレッシャーをかけることは一番のタブーであると心得ておきましょう。なぜなら、子ども本人は学校でのテストや模試の成績、志望校の判定について神経質になっており、ただでさえ精神的にプレッシャーがかかっている状態だからです。
また、受験生の大半が「親の期待に応えたい」「親が喜ぶ結果を出したい」という思いを無意識のうちに抱えています。合格を期待しながらサポートしつつ、本人の不安やプレッシャーを取り除いてあげることを優先しましょう。
親の希望を押し付けない
受験する大学について、親の希望を子どもに押し付けることは避けるべきです。「この大学に行くべきだ」「この学部がいいよ」といった親の一方的な主張は、子どもの本来の希望や適性を無視することにつながります。
特に気を付けたいのが、親世代の時代とは、大学入試の制度や社会情勢自体が変わっている可能性があるということです。
例えば以下のように、親世代とは違った大学受験事情があります。
- 一般入試以外にも、総合型選抜入試や学校推薦型入試などさまざまな入試の形式が増えていること
- 社会のニーズに合わせて新しい学部や学科が次々と誕生していること
- 多くの大学が国際化を進め、留学プログラムの充実や英語での授業を取り入れていること
そのため、親は自身の経験や固定観念にとらわれすぎず、今の教育事情や就職市場について最新の情報を収集することが大切です。
そのうえで、子どもの興味や適性を尊重し、一緒に考えながら志望校や学部を選定していくことを心がけましょう。
また、親の希望を押し付けないようにするために重要なのは、定期的に子どもの興味や将来の夢について話し合う時間を設け、対話を重ねることです。
その際、親は「聞き役」に徹し、子どもの考えを否定せずに受け止めてあげるよう努めてください。
ほかの子どもと比較をしない
子どもは一人ひとり、成長するペースが異なります。成績が早く伸びる子もいれば、ゆっくりと時間をかけて伸びていく子もいます。
だからこそ、ほかの子と比べて焦ったり落ち込んだりするのではなく、目の前の子ども自身のペースを大切にし、着実に勉強を進められるようサポートしてあげてください。
親としては、相対的な比較ではなく、子ども自身の成長や努力に注目しましょう。例えば、「以前よりも点数が上がった」「苦手な科目に真剣に取り組んでいる」など、子どもの学習に対する姿勢とその結果を具体的に褒めることが大切です。
このような前向きな声かけが、子どもの意欲的な受験勉強につながり、やがて良い成果を生み出します。
ネガティブな発言をしない
子どもの成績が伸びないと、つい「本当に合格できるの?」と不安を口にしてしまいそうになりますが、これはNGです。親が不安を感じてネガティブな発言をしてしまうと、その不安が子どもにも移ってしまうためです。
子どもの前で受験に関するネガティブな発言は避け、前向きな言葉をかけてあげるように気を付けましょう。
無関心にならない
親が子どもの受験に口出ししすぎるのは良くありませんが、逆にまったく無関心な状態も望ましくありません。親が受験について興味を持っていない様子だと、子どもは応援されていないと感じ、モチベーションが下がってしまいます。
プレッシャーをかけたり希望を押し付けたりするのではなく、話を聴いてあげることが大切です。
親も知っておきたい大学受験の基礎知識

親世代が受験した頃と比べて、大学受験の仕組みは大きく変わっています。親も最近の大学受験について知っておかないと、子どもに適切なサポートができません。
ここからは、大学受験を経験したことがある親もそうでない親も知っておきたい、大学受験の基礎知識を紹介します。
大学入試にまつわるキーワード
大学受験といえば、「一般入試」や「AO入試」、「センター試験」という言葉を思い出す方もいるでしょう。しかし、最近の入試ではこれらの名称は使われていません。
試験のことを表す「入試」は、現在は「選抜」という言葉に置き換えられています。また、「センター試験」は、2021年度より「大学入学共通テスト」へと変わりました。
旧名称 | 新名称 |
一般入試 | 一般選抜 |
AO入試 | 総合型選抜 |
推薦入試 | 学校推薦型選抜 |
大学入試センター試験 | 大学入学共通テスト |
大学受験のおもな選抜方法
大学受験のおもな選抜方法は「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」の3つです。ただし、国公立大学の一般選抜と私立大学の一般選抜は特徴が異なるため、別々に解説していきます。
国公立大学の一般選抜では、まず大学入学共通テスト(原則6教科8科目)を受け、それに加えて大学ごとに実施される個別試験(2~4教科ほど)を受け、その総合点で合否を判定します。
国立大学は前期・後期の2回、公立大学は前期・中期・後期の3回チャンスがありますが、最近では後期を廃止する大学が増えています。なお、前期で合格したら中期や後期を受験することはできません。
私立大学の一般選抜は、大学ごとに実施される個別試験(2~3教科ほど)の成績で合否を判定するのが基本です。個別試験を受験せず、大学入学共通テストの点数のみで判定する方式もあります。なお、私立大学は試験日程が学校によって異なるため、日にちがかぶっていなければ複数の大学を併願できます。
学校推薦型選抜は、学校長の推薦を受けた学生が出願できる方式で、書類審査や面接、小論文などの結果で合否を判定します。
総合型選抜は、大学や学部が定めたアドミッション・ポリシーに合った学生を選ぶ方式です。志望理由書や面接、小論文、ディスカッション、学力テスト、資格・検定試験の結果など、大学によってさまざまな方法で合否を判定します。
ここで紹介した選抜方法はあくまでも基本です。大学によっては独自の選抜方法を導入しているため、入試要項を必ず確認してください。
大学受験の選抜スケジュール
大学入試までのおおまかなスケジュールを紹介します。あくまでもこれは例年の流れですので、正確な日程については選抜要項や募集要項を確認してください。
<国公立大学一般選抜スケジュール(前期日程)> 6~7月:選抜要項発表 9月下旬:共通テスト出願 12月中旬:募集要項発表 1月中旬:共通テスト 1月下旬:個別学力検査出願 2月下旬:前期日程試験 3月上旬:合格発表 3月中旬:入学手続き締め切り |
<私立大学一般選抜スケジュール(2月入試・一般方式)> 6月~12月:募集要項発表 12月~1月:出願 1月下旬~2月中旬:個別試験 2月下旬:合格発表 3月上旬:入学手続き締め切り |
親のサポートが大学受験成功の鍵
受験生の親の心得として、親ができるサポートや避けるべき行動、大学受験の基礎知識について紹介しました。
大学受験で親が大切にすべきなのは、「どうすれば子どもが前向きに受験できるかを優先的に考えること」です。子どもの心の支えとなり、寄り添う姿勢でサポート役に徹しましょう。本人が安心して大学受験に臨むことができれば、良い結果につながるはずです。