近年、採用する大学が増えている「総合型選抜(旧AO入試)」は、学力重視の入試とは異なり、学力以外の能力なども含めて総合的に評価する選抜方式です。
一般選抜とは異なる点が多いため、いつから受験対策を始めれば良いのかわからない方もいるでしょう。
この記事では、総合型選抜のスケジュールや準備開始のタイミングと対策方法について詳しく解説します。早めの行動が合格へのカギとなるため、受験を検討している方はぜひ参考にしてください。
総合型選抜の準備はいつから始めるべき?必要な対策と開始時期

それでは、具体的にいつから総合型選抜の対策を始めれば良いのでしょうか。対策すべき項目と併せて解説します。
総合型選抜のスケジュール
通常、総合型選抜は一般選抜より早い時期に行なわれ、おおむね以下のスケジュールで行なわれることが多くなっています。
6月:各大学のホームページなどで募集要項の配布開始 7月:願書の配布開始 9~10月:出願開始 9~11月:選考 10~12月:合格発表・入学準備 |
総合型選抜は一般選抜より4~5ヵ月早いスケジュールで進むため、その分早めに対策を行なう必要があるのです。
スケジュールは国公立か私立かによっても異なり、また同じ大学でも学部によって時期がずれることがあります。志望校の出願・選考スケジュールは早めに確認しておきましょう。
総合型選抜による受験日までに取り組んでおくべき対策
総合型選抜では、学力のみならず、受験生の人物像や大学とのマッチ度が多面的に評価されます。以下は一例ですが、このように幅広い対策が必要となります。
・評定平均を上げる ・書類や面接でアピールできる活動実績を作る ・オープンキャンパスに参加する ・英検やTOEICなどの英語資格を取得する ・大学入学共通テストの対策をする ・小論文の対策をする ・面接の練習をする ・志望理由書や自己推薦書の内容を練る ・一般選抜を受ける場合の学力試験対策 |
総合型選抜では、学校の成績や課外活動など、高校1~2年からの実績も評価対象となります。
オープンキャンパスは、志望大学で学ぶ内容や雰囲気を知ることができる貴重な場です。自分が大学生として学習する姿をイメージするためにも、必ず参加しましょう。
また、総合型選抜で共通テストを課す大学・学部もあるため、場合によっては共通テスト対策が必要となるでしょう。さらに、総合型選抜に加えて一般選抜を受験予定の人は、通常の学力試験対策も行なわなければいけません。
総合型選抜の準備は早めに始めると安心
以上のように、総合型選抜では多岐にわたる対策が求められます。そのため、「対策を始めるのは早ければ早いほど良い」といえるでしょう。
高1から総合型選抜を意識する人もいますし、高2の夏頃から対策を始めるのが理想的といえます。
高2の夏であれば、一般選抜の対策もまだそれほど忙しくありません。学校の勉強に集中できるため評定を上げやすく、課外活動やオープンキャンパスに参加しやすい、英語資格の勉強時間を確保しやすいといったメリットがあります。
また、早い時期から総合型選抜を意識することで、より深い自己分析ができ、明確な志望理由を立てやすくなります。さらに、小論文では時事問題について出題されることが多いため、日頃からニュースなどで情報収集をしておくことが望ましいでしょう。
とはいえ、高3から総合型選抜の準備を始める人も少なくありません。高3からでも小論文や面接対策をしっかり行なうことで、総合型選抜に合格することは可能です。総合型選抜に特化した予備校に通うことも強力な助けになるでしょう。
【時期別】総合型選抜の対策方法

ここでは、総合型選抜を受験する場合の対策について、時期ごとの目安をお伝えします。高1~高2年の間から対策を始められれば理想ですが、高3からでも遅くないため、予備校や学校の先生と相談しながら進めてください。
高校1~2年生
・評定平均を上げる ・部活で結果を出したり課外活動に参加したりする ・志望大学について理解を深め、自己分析を進める ・英検やTOEICなどを受験する ・オープンキャンパスに参加する |
高1〜2の間は、入試に向けての準備期間といえます。勉学のほか、部活や課外活動の実績を積んだり、志望大学への理解を深めたりしましょう。特に語学系の大学・学部を志望する人は、夏休みや春休みを利用して短期留学に行くのもおすすめです。
高校3年生4~7月頃
・最終的な志望校を決定する ・オープンキャンパスや入試説明会に参加する ・志望理由書、自己推薦書など提出書類の準備をする ・小論文対策をする ・共通テスト対策をする |
高3になると、本格的に受験が始動します。総合型選抜の選考時期は早いため、春頃から書類の準備、小論文対策などを進めましょう。総合型選抜に特化した予備校で、書類の添削や小論文の指導を受けるのもおすすめです。
高校3年生8月~試験日
・総合型選抜の過去問対策を進める ・面接と2次選考の準備をする |
出願後は、総合型選抜の過去問を進め、傾向と対策を練りましょう。また、面接の練習と、2次選考の準備も進めてください。
そして試験終了後~合格発表の時期は、万が一不合格だった場合に備え、まだ総合型選抜を募集している大学を探しておくと安心です。また、一般選抜を受験する準備も進めておきましょう。
総合型選抜で実施される選考方法

総合型選抜では、多様な選考方法を組み合わせて受験生を総合的に評価します。
おもな選考方法には、書類審査や小論文、資格・検定試験の成績、プレゼンテーション、面接、ディスカッション、フィールドワーク、模擬講義、大学入学共通テストなどが含まれます。
基本的には書類審査と面接、小論文を中心に構成されますが、大学ごとに選考パターンはさまざまです。例えば、以下のような選考方法の組み合わせがあります。
・書類選考+面接 ・書類選考+小論文+面接 ・書類選考+学力試験+面接 ・書類選考+プレゼンテーション+面接 ・体験授業+書類選考+面接 |
学力を何らかの形で問う点が挙げられ、学力と人物評価をバランス良く見ることが総合型選抜の特徴です。
総合型選抜とほかの選抜方式との違い

大学受験の選抜方式には、総合型選抜のほかにも「一般選抜」「学校推薦型選抜」があります。これらと総合型選抜には、どのような違いがあるのでしょうか。
一般選抜との違い
一般選抜は、個別学力検査の結果をもとに評価される入試方式であり、筆記試験の得点が合否を大きく左右します。
小論文や調査書なども評価の対象にはなりますが、総合型選抜よりは学力が重視される選抜方式といえるでしょう。
国公立大学では、大学入学共通テスト(1次試験)と大学独自の2次試験を合わせた合計点で合否が決定されるため、総合的な学力の高さが求められます。
私立大学の場合は、個別試験のみで合否を決める方法と、共通テストも利用して合否を決める方法に分類されるのが特徴です。
これに対して総合型選抜は、人物像や将来性、志望理由などが重視され、多面的な評価がなされる点で大きく異なります。
学校推薦型選抜との違い
学校推薦型選抜は、高校からの推薦を得ることで出願が可能となる入試方式です。推薦書の内容や調査書、小論文、面接などによって総合的に評価されます。
基本的には、学校生活における実績や人物評価が重視される一方で、一部の国公立大学では大学入学共通テストや大学独自の学力試験が課されることもあるようです。これにより、一定の学力水準を保ちつつ、人物評価を取り入れたバランスの取れた選抜が行なわれます。
一方、総合型選抜は高校からの推薦が不要で、出願条件を満たしていれば誰でも受験が可能です。
AO入試との違い
総合型選抜は、2020年度以前は「AO入試」として実施されていました。AO入試も書類や面接、小論文などによって、アドミッション・ポリシーにマッチする学生を求める入試です。
しかし総合型選抜になり、より学力を重視する選抜方法へと変更されました。人物評価や大学とのマッチ度に加え、「学力の3要素」と呼ばれる「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」が総合的に評価されるようになったのです。
総合型選抜を受ける際の注意点

総合型選抜で受験をするにあたって、注意しておくべきことは何なのでしょうか。ここでは、総合型選抜による受験を検討する際に注意しておくべきことを解説します。
エントリーと出願は別物
総合型選抜を受験する際には、「エントリー」と「出願」の違いを正しく理解しておくことが重要です。
大学によっては、出願の前に「エントリー」という手続きを求めるケースがあります。エントリーとは、あくまで受験する意思を示すための予約のようなものであり、正式な受験申し込みではありません。
一方の出願は、入試を受けるための正式な申し込み手続きであり、入試の意思表示として扱われます。
大学によってエントリーの方法や期間は異なり、事前にエントリーを済ませていなければ出願が認められないこともあるため、各大学の募集要項をよく確認し、スケジュールをしっかり把握しておきましょう。
特に、学部や定員数などによってはエントリー期間が短く設定されていることもあるため、早めの準備がカギとなります。
綿密な準備が必要
高校の評定平均が良くても、準備不足が原因で不合格になることがあります。アドミッション・ポリシーを正確に理解していなかったり、面接時の質問への対策が不十分だったりすると、評価が下がる可能性があるため注意が必要です。
また、総合型選抜は一般選抜とは異なりますが、学力試験が課される場合もあるため、基礎的な学力対策も欠かせません。万が一の場合、一般選抜に切り替えて受験する可能性もあるため備えておくと安心です。
学校ごとに出願スケジュールは異なる
総合型選抜の出願スケジュールは、国公立大学、私立大学、専門学校など、学校ごとに大きく異なります。
大学によっては、個別の説明会やオープンキャンパスへの参加が出願条件に含まれている場合もあるため、参加するためのスケジュールを組まなければなりません。
特に総合型選抜では、志望理由や活動報告書などの提出書類が多く、準備に時間がかかる傾向にあります。出願期間を過ぎてしまわないよう、各大学の公式サイトで最新情報を確認しながら、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
オープンキャンパスや説明会への参加は、大学への理解を深める良い機会にもなるため、積極的に活用しましょう。
総合型選抜に関するQ&A

総合型選抜による受験を検討している方に向けて、ここでは、総合型選抜に対する疑問にお答えしていきます。
総合型選抜も公募制の学校推薦型選抜も選べる場合はどちらを選択するべき?
総合型選抜と公募制推薦の両方を選べる場合、まずは各入試の出願条件や選考基準、過去の倍率などを丁寧に調べることが重要です。自分の強みや高校での活動実績、学力傾向と照らし合わせて、どちらの方式が自分にとって合格の可能性が高いかを見極めましょう。
ただし、倍率が低いからといって安易に選ぶのは危険です。倍率が低い背景には、出願条件の厳しさや、求められるレベルの高さが影響している場合もあるため、全体像を把握したうえで戦略的に選択する必要があります。
検定や資格の取得は評価にどれくらい影響する?
大学によっては、総合型選抜の評価項目に検定や資格の取得を含めているケースがあります。特に、英検など語学に関する資格は、グローバル化が進むなかで評価対象として重視される傾向にあるでしょう。
加えて、学部や学科の内容と関連する資格を取得していると、学習意欲や将来性のアピールにもつながります。
ただし、評価基準や具体的な加点方法は大学ごとに異なるため、志望校の入試要項や募集要項をしっかりと確認しておくことが欠かせません。事前の情報収集と戦略的な準備が、合否を分けるポイントとなります。
総合型選抜の併願はOK?
なかには、総合型選抜での併願を認めている大学もあります。ただし、併願には細かい条件が設定されていることが多いため、早い段階で確認しておくと安心です。
基本的には一般選抜のように自由に複数の大学を併願できるケースは少なく、実質的には専願としての受験になると考えておいたほうがよいでしょう。そのため、万が一の結果に備えて、一般選抜の勉強も並行して進めておくことが、進路確保のうえでも重要です。
まとめ
総合型選抜では、学力だけでなく、受験生の人物像や大学とのマッチ度を多面的に評価されます。そのため、さまざまな対策を実施しておくことが大切です。さらに、一般選抜よりも4~5ヵ月ほど早い時期に行なわれることから、受験の準備は早めに始めたほうがよいでしょう。
基本的な選考方法としては、書類選考のほかに面接や小論文を中心とした構成が多いと考えられますが、学校ごとに選考パターンは異なります。また、エントリーの有無や出願のスケジュールなども、学校によって違いがあることに注意が必要です。