大学入試の選抜方法は、大きく分けて3つに分けられます。大学入学共通テストや各大学の独自の試験により学力を測る「一般選抜(旧一般入試)」、出身高校長の推薦が必要な「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」、そして大学とのマッチ度と学力で合否を判定する「総合型選抜(旧AO入試)」です。
総合型選抜は、2021年度入試(2021年4月入学者を選抜する入試)からAO入試に代わって導入されました。この選抜方法を採用する大学も募集人員も拡大傾向にあり、志願者数も増加していることから高い関心を集めています。
この記事では、総合型選抜の特徴やメリット・デメリットに加え、デメリットをカバーする方法ついても解説。総合型選抜について詳しく知りたい人や総合型選抜での受験を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
総合型選抜って?どんな特徴がある?
総合型選抜とは、大学の求める人物像や入学者に求める能力などを示した「入学者の受け入れの方針」、いわゆる「アドミッション・ポリシー」に合致する人物を選抜するための入試制度です。
以下のような試験を実施することにより、学生の能力・適性・人物像や学びへの目的意識などを総合的に評価し選考します。
- 書類審査・面接
- 小論文
- プレゼンテーション
- 筆記・実技試験
そのため、学校の評定平均を出願条件としない大学も多く、高校での成績が大きく影響しないのが特徴です。
また、学校推薦型選抜と違って出身高校長の推薦は必要なく、自分の意志で出願できるのも総合型選抜の特筆すべき点でしょう。
総合型選抜のメリット/デメリット
総合型選抜には、メリットとデメリットがあります。
メリットとして挙げられるのは、以下の点です。
- 多面的に評価してもらえる
- チャンスが増える
- 倍率が低い
しかし、これらの点には同時に下記のようなデメリットも存在します。
- 時間がかかる
- 一般選抜準備との両立が難しい
- 出願条件が厳しい可能性も
総合型選抜のメリット・デメリットについて、詳しく見ていきましょう。
多面的に評価してもらえる/時間がかかる
総合型選抜のメリットは、学校での課外活動や資格・検定試験の成績、人間性や入学後の学習意欲など多面的に評価してもらえることです。
また、「大学が求める人物像」に合致する学生を選抜する入試制度であるため、大学のアドミッション・ポリシーにマッチしているかが重要視されます。一般選抜のように、学力のみで合否が決まるわけではない、という点が最大の利点でしょう。
ただし、総合型選抜がAO入試に代わり導入される際、文部科学省は、書類選考に加えて、学力評価を必須化するように示しました。
そのため現在の総合型選抜では、国公立大学では大学入学共通テストを、私立大学では小論文や口頭試問で知識を問うなど、学力を推し量る試験が実施されるケースが多くなってきているのです。
中には高校での評定平均や履修科目、語学検定のスコアを出願条件としている大学もあります。志望大学が決まったら、募集要項などをしっかりと確認しておきましょう。
また、総合型選抜は、出願書類の作成や小論文・面接などの準備に時間がかかるというデメリットがあります。
さらに、多面的に評価するため、複数回にわたって選考が実施されることもあり、選考期間が長引くことも。他の選抜方法と並行して準備する場合は、試験対策の両立が課題となるでしょう。
チャンスが増える/一般選抜準備との両立が難しい
総合型選抜の出願開始は、2022年度入試では9月1日以降とされています。初回の2021年度は、高校等の臨時休業が長期化したことに配慮し、9月1日以降の予定だったものが2週間後ろ倒しされ、9月15日からとなりました。試験は一般的に9月から年明けの2月ごろまで実施されます。
他の選抜方法と比べて全体的に入試スケジュールが早いため、万が一総合型選抜で不合格となっても、一般選抜にチャレンジが可能です。受験のチャンスが増えるというのは、学生にとって大きなメリットだと言えるでしょう。
総合型選抜の詳しいスケジュールについては、下記の記事もチェックしてみてください。
ただし、総合型選抜は「その大学に進学する意志・学ぶ意欲」自体も評価対象であるため、「専願」が基本です。
私立大学の中には併願できる大学もありますが、そういった場合でも「同じ大学内での他学部との併願不可」といった条件が設けられていたりします。そのため、気軽に受験したり、滑り止めで出願したりすることができません。
また不合格となった場合、出願が間に合う他大学の総合型選抜を受験するか、一般選抜へ切り替えるかという選択を迫られます。
しかし、限られた時間の中で受験対策をしなければならない以上、一般選抜の準備と両立させるのは負担が大きく難しいことも。いずれも、専願であるからこそのデメリットだと言えます。
倍率が低い/出願条件が厳しい可能性も
旺文社の調査によると、2021年度の共通テスト免除総合型選抜の平均倍率は、国立大学で3.0倍、公立大学で3.1倍でした。また、私立大学の総合型と学校推薦型(公募制)を合わせた倍率は2.8倍でした(合計した値となっているのは、従来の公募制推薦を「総合型」に変更する私立大学が多かったためです)。
一方、同社の別の調査によれば、同年度の一般選抜の平均倍率は、国立大学が3.8倍、公立大学が4.4倍、私立大学が3.1倍でした。
このことから、総合型選抜の倍率は比較的低いことが分かります。志望校に合格できる可能性が高いというのは、学生にとって大きなメリットでしょう。
また、総合型選抜の募集定員が多い大学や出願に関して、地域枠を設定している大学もあります。それに加え、2022年度の国公立大学入試では102もの大学が総合型選抜を実施するなど、多くの国公立大学が総合型選抜を実施しており、募集人員も大幅に増加傾向にあります。
しかしながら、倍率が低いのは出願条件が厳しいためだったり、大学によっては募集定員が若干名だったりすることもあります。倍率だけで判断せず、募集要項などをきちんと確認しましょう。
デメリットを補うために気をつけることは?
上記のように、総合型選抜にはメリットもあれば、デメリットもあります。このデメリットを補うためには、以下の点に注意することが重要です。
- 早めの行動がカギ!すぐに動き出そう
- 出願条件やアドミッション・ポリシーに自分が合っているかじっくり考える
- 総合型選抜と一般選抜対策が両立できるように計画する
それぞれについて、詳しく解説します。
早めの行動がカギ!すぐに動き出そう
総合型選抜の入試スケジュールは、一般選抜に比べて早いのが特徴です。
出願は9月以降であっても、事前にエントリーシートを提出しなければならない大学もあります。また、一口にエントリーといっても、単に個人情報を登録するだけの大学もあれば、レポートや小論文などを書かなければならない大学もあり、エントリーに必要な準備はさまざまです。
「準備が間に合わなくて受験できなかった」ということのないように、志望大学の決定後は出願時期や選考日、出願条件をすぐに確認しましょう。そして、実際にオープンキャンパスに足を運んでみるなど早めに動き出しましょう。
特に、出願条件や評価基準については要注意です。大学によっては、出願に資格取得が必要であったり、評価基準として課外活動が対象になることもあります。大学が求める人物像に近づけるよう、早くから必要な対策を始めることが大切です。
また総合型選抜は、基本的に志望理由書などによる選考書類・面接・小論文によって選考が進みます。しかし、どれもすぐに準備できるものではありません。受験が決まったらなるべく早く高校や予備校の先生に相談し、出願書類の作成や面接・小論文対策に取り組みましょう。
高校や予備校には過去の入試データなどがあることも多く、より具体的なアドバイスをもらえるはずです。
出願条件やアドミッション・ポリシーに自分が合っているかじっくり考える
総合型選抜の評価では、志望校として選んだ理由や学びたいテーマ、志望分野への学習意欲など入学後の学びや目標が重視されます。そのため、高校での成績は大きく影響せず、出願しやすいというのが特徴です。
しかし、大学によっては一定以上の評定平均や資格試験の級・スコア、課外活動への参加実績などを求める大学もあります。
また、総合型選抜は「求めている人物像に合う学生を選抜する試験」です。そのため、大学の示すアドミッションポリシーに対する理解と、自分自身のマッチ度は非常に重要です。
丁寧に自己分析を重ね、自身の長所や短所、自身が大学の求める人物像に当てはまるのか、どのような能力を身につけておくべきなのかを考えましょう。
加えて、志望分野について関心を持ち、知識を深めておくことも大切です。どのようなテーマについて学びたいか自分なりに考え、伝えられるようにしておきましょう。それこそが、熱意の伝わる志望理由になり、ひいては面接対策にも繋がります。
総合型選抜と一般選抜対策が両立できるように計画する
総合型選抜は人物像や入学後の学びを重視する試験とはいえ、学力も評価対象です。加えて、入学後、学力不足で授業についていけなくなったり、一般選抜で入学した学生との学力差に困ったりという事態を避けるためにも、基礎学力は身につけておく必要があります。
そのため、総合型選抜で受験予定であっても、一般選抜対策も並行し学力をつけておくのが賢明です。
とはいえ、総合型選抜と一般選抜の両立は決して楽なものではありません。通常の勉強に加えて、書類準備や小論文・面接対策などを、より計画的に準備する必要があります。高校や予備校の先生に相談して、具体的な行動計画を立てられるようにしましょう。