これから通う塾・予備校を選ぶ基準にはいろいろありますが、中でも重要なのが合格実績でしょう。合格実績は塾・予備校の優劣を表す鏡のようなもので、これを見ればその塾・予備校がどれだけ優れているかが分かります。
合格実績が高いということは、それだけ講義やカリキュラムの質が高いということを示しています。高校生におすすめの著名な塾・予備校を比較し、その合格実績を見てみましょう。
高校生におすすめの塾・予備校の合格実績
東進(東進ハイスクール・東進衛星予備校)
~浪人せずに現役で難関校への合格切符を手にしたい学生におすすめ~
合格実績 令和5年度 (2023年3月31日時点)
東京大学 | 845人 |
京都大学 | 472人 |
北海道大学 | 468人 |
東北大学 | 417人 |
一橋大学 | 195人 |
東京工業大学 | 198人 |
名古屋大学 | 436人 |
大阪大学 | 617人 |
九州大学 | 507人 |
神戸大学 | 548人 |
国公立医学部・医学科(防衛医科大学校を含む) | 1064人 |
私立医学部・医学科 | 727人 |
早稲田大学 | 3523人 |
慶應義塾大学 | 2218人 |
東進の合格実績の特徴は、現役生のみ(講習生含まず)の合格実績を公表していることです。旧帝大、医学部・医学科、早慶という難関校に、現役生のみでこれだけの数を送り出しています。
特に驚異的なのが、東大現役合格者の36.9%という数字、つまり2.8人に1人は東進生が占めているということです。これらは2023年の実績ですが、5年連続で800名超えを達成しています。
以上のことから、浪人せずに現役で難関校への合格切符を手にしたい学生にはおすすめの塾・予備校といえるでしょう。
駿台(駿台予備学校)
~「文系の河合、理系の駿台」理系大学の合格実績が非常に高い~
合格実績 (2023年度入試実績)
東京大学 | 1409人 |
京都大学 | 1372人 |
北海道大学 | 487人 |
東北大学 | 550人 |
一橋大学 | 211人 |
東京工業大学 | 280人 |
名古屋大学 | 213人 |
大阪大学 | 881人 |
九州大学 | 340人 |
神戸大学 | 698人 |
国公立医学部・医学科(防衛医科大学校を含む) | 1628人 |
私立医学部・医学科 | 2044人 |
早稲田大学 | 3484人 |
慶應義塾大学 | 2647人 |
難関校に多くの合格者を輩出しているのが駿台の特徴です。特に東大・京大、医学部・医学科といった最難関校への高い合格実績を誇っています。
また、塾・予備校の業界に詳しい人は「文系の河合、理系の駿台」と呼んでおり、駿台は東京工業大学など理系大学の合格実績が非常に優れています。
河合塾
~一橋大や早慶への合格者が多いことが強み~
合格実績 (2023年度入試実績)
東京大学 | 1321人 |
京都大学 | 1377人 |
北海道大学 | 648人 |
東北大学 | 671人 |
一橋大学 | 366人 |
東京工業大学 | 253人 |
名古屋大学 | 845人 |
大阪大学 | 685人 |
九州大学 | 721人 |
神戸大学 | 640人 |
国公立医学部・医学科(防衛医科大学校を含む) | 1605人 |
私立医学部・医学科 | 2599人 |
早稲田大学 | 5849人 |
慶應義塾大学 | 3608人 |
河合塾もまた、難関大に多くの合格者を輩出しています。東京工業大学や国公立医学部・医学科など、難関理系大学の合格者数は駿台に劣りますが、文系の合格者数は駿台よりも多いです。特に、一橋大や早慶への合格者が多いことを強みとしています。
東進、駿台、河合塾――どこが一番よいか、合格実績の推移にも注目してみよう
なお、ここまでに紹介した合格実績は、2023年度単年でのデータになります。合格実績が順調に伸びている予備校もあれば、伸び悩んでいる予備校もあります。
東進ハイスクール、駿台予備学校、河合塾という大手予備校3校の勢いを見てみるため、直近4年間の東大合格者数の推移をまとめた表・グラフがこちらです。
東進(現役のみ) | 駿台 | 河合塾 | |
2020年度 | 802人 | 1373人 | 1313人 |
2021年度 | 816人 | 1474人 | 1207人 |
2022年度 | 853人 | 1362人 | 1258人 |
2023年度 | 845人 | 1409人 | 1321人 |
2021年度には前年度比で101人も多く東大合格者を輩出した駿台ですが、2022年度には1362人となり、躍進前の2020年度も下回る数字となってしまいました。2023年度には復調の兆しを見せています。河合塾については、ここ4年間では最新の2023年度が1321人で最高に。2021年度に前年比で100人以上減少したものの、2022年度と2023年度で盛り返しました。
一方、残る東進は、2020年度の802人から、816人(2021年度)、853人(2022年度)と微増し、2023年度には845人と、安定して東大合格者を輩出しています。
ここまでは、東大の合格者数で比較してみましたが、例えば河合塾の2023年度合格実績を前年度と比較すると、私立大学 医学部医学科の合格者数は前年度比で207人減の2599人でした。一方で、名古屋大学・九州大学の合格者数は前年度比でそれぞれ68人増、52人増と伸びています。
駿台は2022年度合格実績の場合、名古屋大学の合格者数は、2021度の445人からほぼ半減の233人となり、2023年度も21人減の213人と低迷しています。
東大の合格者数は、ある意味、塾・予備校の実力を比較する上で一番分かりやすい数字です。各校が最も力を入れて実績を残そうとしていますので、総合力が問われ、大きな変動は生じにくいと考えられます。ただ、先の例で見たように、地方の有力大学などの合格実績は、時期によってかなり変動が生じる可能性もあるでしょう。
こうした3校の勢いは、今後どうなっていくかは分かりません。偶然、「この年だけ成績が悪かった」「この年だけ、合格者数が著しく増えた」ということもあるでしょう。それでも、特にあなたが地方の有力大学などを志望しているのなら、その大学への合格実績が伸びている予備校はどこか、どの予備校は合格者数が伸び悩んでいるか、と複数年の実績を比較してみてはいかがでしょうか。本当に実力があって適切に学習指導や志望校対策をしてくれる塾・予備校を、見抜くことができるようになるかもしれません。
高校生は塾・予備校に通うべきなのか? 実績で比較する独学との差
ここまで著名な塾・予備校の合格実績を見てきましたが、塾・予備校経由で難関校へ進学する学生が非常に多いことが分かります。
確かに、独学で難関校への合格を果たす学生も少なくありません。学校や、参考書・問題集をうまく使い、自力で難関校への入学を果たす人もいます。しかし、どちらかといえば、塾・予備校に通うことで難関校合格の夢を果たした学生の方が多いのも事実です。
東進が実施した「国公立大受験者2000人アンケート調査速報」によると、上位国公立大合格者のうち、塾に通っていた学生の割合は54%。旧帝大合格者のうち、塾に通っていた学生の割合は60.6%とのことです。
上位国公立大にせよ旧帝大にせよ、合格者の多数派は塾・予備校経由で難関校への進学を果たしています。このことから、難関校に合格するには、予備校に通うのが一番の近道だと言えるでしょう。
塾・予備校に通う大きなメリットは何か? 難関校への合格実績が高い理由
難関校の合格者に塾・予備校に通っていた学生が多いということは、難関校への進学を考えている学生にとって塾・予備校に通うことに相応のメリットがあると言えます。塾・予備校に通うことは、独学に比べてどれだけ有利なのでしょうか。両者を比較することで、そのメリットを考えてみましょう。
- 試験までのペース配分が容易
- 講義のレベルが高い
- 難問でも質問がしやすい
- フィードバックをしてもらえる
1. 試験までのペース配分が容易
独学する場合、どんな勉強をどれだけやるか全て自分で決められるため、勉強をマイペースに進められます。そのため、やる気のある学生は学習ペースを早めて先に進められますし、学習ペースが遅れている学生の場合は、他の学生よりもハイペースで学習を進めることで追いつくこともできます。
しかし、マイペースに進められるということは、ペース配分に失敗する可能性があるということでもあります。浪人生なら1度受験を経験しているのでまだ勝手が分かるでしょうが、大学受験初体験となる現役生の場合、ペース配分で失敗して志望校に落ちる人も少なくありません。
一方、塾・予備校に通っている場合は、決められたカリキュラムでゴールまで向かうことになります。塾・予備校による長年の研究が積み重ねられたカリキュラムなので、ペース配分に失敗するという心配はまずありません。カリキュラムから1度でも脱落すると戻ってくるのが大変というデメリットは確かにあるものの、通わなければ参考とすべきペース配分も分からないわけですから、独学よりも安心して受験勉強を進められることでしょう。
2. 講義のレベルが高い
大学受験対策に強みのある一流講師の講義を聞けるのが塾・予備校のメリットです。特に、大手予備校の講師はしっかりと大学受験対策を研究している先生が多く、試験に出やすいポイントを押さえて分かりやすく説明してくれます。また、東大などの旧帝大、早慶対策などの一流大学向けの講義も開講し、特定の大学に合格するためのメソッドも伝授してくれます。
一方、独学の学生は学校の先生の授業しか聞けません。学校の授業は大学受験に特別に対応しているわけではないため、進学校に通っていなければ、一流大学に行きたい学生には物足りないでしょう。難関校志望の学生が知っておくべき内容まで、授業では踏み込めないこともあるかもしれません。
3. 難問でも質問がしやすい
塾・予備校では、分からないことがあれば講師に質問できます。チューターに質問できるようにしている塾・予備校も少なくありません。
しかし、独学だと、分からないことは基本的に参考書を使って自分で解決しなければなりません。学校の先生に質問するという手もありますが、難関大レベルの難しい問題であれば、学校の先生では手に余る場合もあります。
4. フィードバックをしてもらえる
独学だと厳しい科目の筆頭が小論文です。小論文や記述式問題の答えは一つに決まっているわけではありません。こればかりは専門の先生に添削してもらわないことには、なかなか上達しません。
模範解答を見て独学するという手もありますが、模範解答をまねるというのは非常に難しいことなので、おすすめはできません。特に、小論文は課題文を踏まえて論理的に自分の意見を書いているかが採点されます。自分では論理的な文章を書いていると思っていても、他人の目から見ると論理的に書けていないことも多いものです。やはり独学ではなく、専門の先生からのフィードバックを求めた方が、より短期間で実力を伸ばすことができるでしょう。
同じ理由から、国語や社会の論述問題も専門の先生に添削してもらった方がいいでしょう。数学や理科にも答えに至るまでの過程を書いていく記述式問題がありますから、専門の先生に正しい答案の作成方法を教えてもらうことが、志望校合格への近道になるはずです。
予備校による合格実績の嘘・水増しに気を付けよう
過去に、大手学習塾の臨海セミナーでは、入試直前に他の塾の生徒をその塾に在籍させたまま臨海セミナーの特待生として勧誘していました。「その生徒が合格した際には臨海セミナーの合格実績としてもカウントしているのではないか」という合格実績の水増し疑惑が浮上し、競合他社19社から連名で業務改善が求められています。
昔は、合格実績に模試だけの利用者を含めるなど、合格実績の嘘や水増しがあったと考えられています。しかし、大手予備校を中心に是正の動きが起こり、業界は健全化が進んでいる状況にあります。
例えば、東進の合格者数には、模試だけの利用者はもちろん、春期講習や夏期講習といった季節講習生は含まれません。通期講座を受講している生徒のみをカウントし、公表しています。さらに特徴的なのは、高3時に在籍した生徒のみを対象とし、高1や高2時にのみ在籍した生徒、高卒生も合格実績に含めていない点です。
先ほど、東進、河合塾、駿台の主要予備校3校について東京大学の合格実績を紹介しましたが、3校の合格者数を足し合わせると3575人となります。しかし、東京大学が発表している2023年度の合格者数はそれを下回る3085人でした。2校以上を兼用していた合格者もいるのでしょうが、主要3校だけでもかなりの人数が重複していることが分かります。
予備校選びにおいて合格実績は重要な要素となります。自身が入校を考えている予備校の合格実績が、どのような定義となっているのかは、確認しておく必要があるでしょう。
自分に合う塾・予備校はどこかを比較して考える
塾・予備校の利用には上述したようなメリットがあり、それは塾・予備校の高い合格実績に反映されています。本稿では、東進、駿台、河合塾の3校の合格実績を比較しましたが、それぞれ特徴は異なっています。自身の志望校と照らし合わせて、ぜひ自分に合ったところを見つけてください。