大学受験を控えている受験生は、予備校の授業を受けたり予習復習をしたりと、やることがたくさんあります。このような勉強に加えて、受験の前には過去問も解かなければなりません。
しかし、「いつから過去問を解き始めればいいのだろう?」「なぜ過去問が必要なの?」「赤本ってどんなものなの?」「なぜ赤本や過去問が必要なの?」と思っている受験生も少なくないでしょう。今回は、過去問に関するそんな疑問にお答えしていきます。過去問をうまく活用して、志望校合格を目指しましょう。

そもそも大学受験前に過去問をやる意味って?
過去問とは「過去問題集」の略で、大学入試で過去に出された問題と解答を集めたものを指します。 過去問を解くことはとても重要ですし、実際に多くの先生は「過去問を絶対に解こう」と言います。
過去問を解く大きな意味とは次のようなものです。
- 出題傾向をつかめる
- 今の自分の実力を知ることができる
- 本番の緊張感に慣れることができる
・出題傾向をつかめる
一般入試では、各大学でオリジナルの問題を作成し、出題します。出題傾向はさまざまで、中にはクセの強い問題を出す大学もあります。一般の問題集を解くだけでは、このような個性の強い問題に太刀打ちできません。しかし、過去問を解くことで志望校の出題傾向をつかむことができ、解くコツが分かってきます。
・今の自分の実力を知ることができる
過去問を解いていくと、「今の時点でどれくらい解けるか」が具体的に分かります。多くの大学は合格最低点を公表していますから、自分が合格点に届いているか、あるいは何点足りないかを把握できます。今の実力を知ることで、合格までどのくらい学力を伸ばせばいいのかを知ることができるでしょう。
・本番の緊張感に慣れることができる
入試本番は誰しも緊張するものです。過去問を解かずにぶっつけ本番で挑んでしまうと、緊張のせいで本来の実力を出せない恐れがあります。しかし、実際に出された過去問を本番と同じ試験時間で解くことで、緊張感に慣れておくことができます。過去問は本番のリハーサルだと思ってください。
・問題が焼き直しされるケースもある
稀に、入試問題が焼き直しされるケースがあります。焼き直しとは、過去の問題に修正や加筆を行い、似たような形式の問題が出題されることを表します。各大学の赤本を解いておけば、焼き直しされた問題が出題された場合にはかなり有利になるでしょう。こうした可能性も踏まえて、赤本を利用するのはかなり効率的であると言えます。
赤本とは。過去問とは違うものなの?
大学入試の過去問のうち一般的に最も使われているのが、教学社が発行している大学・学部別の過去問です。表紙が赤色ということから「赤本」と呼ばれています。多くの大学・学部を網羅しており、2000~3000円で購入できますが、医学部は3000~4000円のものが多いです。
また、「共通テスト赤本シリーズ」というラインナップもあります。共通テスト(センター試験)の過去問が科目ごとにまとまっており、13科目が発行されているので、受験する科目のものを入手しておきましょう。こちらの価格は1冊1078円(税込)で統一されています。
赤本は部数が限られているため、入試直前などの時期には売り切れてしまうことがあります。受験する大学・学部の赤本は早めに購入しておくようにしましょう。
みんないつから赤本/過去問を始めているの?
それでは、国公立の過去問や私立大学の過去問は、いつから解けば良いのでしょうか。赤本を解き始める時期は人によって異なるものの、夏休み中や夏休み明けに始める人が多いです。
過去問は夏休み中~夏休み明けに始める人が多いが、個人差がある
大学情報センター(DJC)による「受験生アンケート」では、赤本に取り組み始めるのは「8月~9月」が約40%で一番多くなっています。過去問は基礎の学習が終わってから解くことが推奨されています。高校3年生の場合、夏休みまでに基礎の学習を終えることが多いため、夏ごろから過去問を始める人が多いようです。
「受験生アンケート」の別の項目によると、センター試験(現・大学入学共通テスト)の過去問を解き始める時期は「8月~9月」と「10月~11月」という人が約30%ずつでした。共通テストは一般入試よりも基礎的な問題が多いとされているので、赤本よりやや後回しになる傾向があるようです。
また、ベネッセが2014年10月に実施した大学合格者アンケートによると、志望大学の過去問を解き始めたのは「9月以前から」が約50%、「10月以降から」も約50%という結果が出ています。8月以前から始める人もいれば、冬から始める人も一定数おり、過去問を始める時期は人によってばらつきがあると言えるでしょう。
中には「過去問を始めるのは早ければ早いほど良い」という先生もいますが、そうとは限りません。基礎の学習が終わってからでないと、過去問を解いても力が定着しないためです。個人差がありますので、赤本を解くタイミングは基礎が身に付いた時期が最適と言えるでしょう。
しかし先ほどお伝えした通り、過去問を解くことで今の自分の実力が明らかになります。解ける・解けないにかかわらず、夏休み明けまでに一度過去問を解いてみて、現在地を把握しておきましょう。
大学受験の過去問にはどんなものがある?
上記では赤本についてご紹介しましたが、大学受験の過去問にはそれ以外にも「青本」「黒本」といった種類があります。それぞれ特徴がありますので、目的に合ったものを選ぶとよいでしょう。ここでは、過去問それぞれの概要について詳しく解説していきます。

最も種類が多く人気の「赤本」
赤本の特徴としては取り扱っている大学数と冊数の多さが挙げられるでしょう。赤本では大学数としては378大学、冊数としては614点の豊富な種類が用意されています。特定の大学や共通テストに特化している青本や黒本と違い、日本全国におけるほとんど全ての大学を網羅的に対策できるのが赤本のメリットと言えるでしょう。
ただし、その一方で解説があまり詳しくないというデメリットもあります。出版されている大学数も多く、解説者も明瞭ではありません。中には根拠として曖昧な解説が掲載されることもあるため、こうした点については事前に理解しておく必要があります。
難関大に強い「青本」
青本は駿台出版が発行している過去問シリーズで、青色の表紙が目印です。東大や京大などの国立大学、早慶といった難関私立大学の他、共通テスト対策用の過去問があります。
青本の特徴は、駿台の講師による詳しい解説が載っていることでしょう。赤本は解説があまり詳しくなく、計算や考え方の過程が省略されていることも。青本が出ている大学を志望している場合は、こちらも活用することをおすすめします。
共通テスト対策ができる「黒本」
黒本は河合出版が発行するシリーズで、こちらも通称のとおり黒い表紙が目印となります。赤本や青本とは異なり、実際の大学入試の過去問ではなく、河合塾の「全統模試」や予想問題を収録している点に注意してください。
赤本や青本の共通テストの過去問には、旧形式のセンター試験の問題が収録されています。しかし、黒本に収録されているのは新形式に対応した問題なので、他の過去問よりも新形式に慣れることができるでしょう。
また、出版元の河合出版は河合塾グループであることから、大手予備校の強みを生かした詳しい解説が載っており、理解を深めることができます。
1科目のみの赤本もある
最新の赤本では、「阪大の英語」や「京大の文系数学」のみの赤本など、有名大学の科目1つだけをまとめたものも登場しています。一般的な赤本では過去問が幅広く掲載されていますが、こうした赤本を使用すれば自分の苦手な分野に絞って対策を行うことができるでしょう。また、1科目のみの赤本では良問が重点的に掲載されているのも魅力です。
無料で過去問をダウンロード! 過去問データベースを活用しよう
過去問を解いてみたいと思ったら、前項でご紹介した「赤本」などを書店等で購入するのもいいのですが、最近ではインターネットを使って過去問を無料でダウンロードすることもできるようになってきました。
次にご紹介するサイトは、いずれも過去問を無料で利用できます。志望順位の高い大学の過去問については、数年分を購入してしっかり対策することをおすすめしますが、滑り止めの大学や「追加でもう何年分か解きたい」といった場合などは、これらのサイトで十分対策できるでしょう。

東進/大学入試問題 過去問データベース
「大学入試問題 過去問データベース」 は、東京大学をはじめとした国公立大学、早慶上智を含む難関私立大学など185の大学、最大27年分の過去問を閲覧できます。無料会員登録が必要で、ログインして利用します。
パスナビ/過去問ライブラリー
パスナビは参考書で有名な旺文社が運営するサイト。無料会員登録をすると約180校の過去問が見放題となります。
「過去問ライブラリー」には、旺文社の『全国大学入試問題正解』を基にした解答・解説が載っているため、間違えた問題もしっかりと理解できるでしょう。ただし、一部の大学は、問題のみ、問題・解答のみとなっています。
河合塾/大学入試解答速報
「大学入試解答速報」では、主要大学の一部について、最新の入試問題をPDFで見ることができます。あわせて河合塾がオリジナルで作成した解答例と分析コメントが掲載されています。
国公立大学二次試験であれば比較的多くの大学の問題をダウンロードできますが、私立大学は慶應・早稲田・関関同立のみとなっているので、やや少ないと言えます。また、最新年度の問題しか載っていないため、何年分もまとめてダウンロードすることはできません。
赤本の使い方は? 過去問を効果的に解いて合格を目指そう!
受験生にとって避けては通れない過去問。しかし、ただ闇雲に解けばいいというわけではなく、効果的に活用することで合格に近付きます。以下のポイントを押さえて過去問を解いていきましょう。

赤本/過去問は何年分くらい解けばいい? 第一志望校は最低でも5年分解こう
受験生は忙しく、過去問を解く時間をなかなか取れないかもしれません。そもそも、赤本を何年分解けば良いのか分からないという人も多いでしょう。もし、過去問を何年分解けば良いか分からないという方は、第一志望校については最低でも5年分は解くことをおすすめします。このくらいの数を解くことで、出題傾向がつかめてくるでしょう。中には10年分以上解く受験生もいます。
過去問を解く順番は、一番新しい年から始めて最近の出題傾向を知り、そこからさかのぼっていきます。
本番と同じ時間制限で解く
過去問をやる時はタイマーなどをセットし、本番の入試と同じ時間で解けるようにしましょう。入試では時間配分がとても重要になってきます。速く、そして効率的に解けるよう、本番の試験時間に慣れましょう。始めのうちは「時間が全然足りない」と感じるかもしれません。しかし、回数を重ねることで時間配分の感覚がつかめてきます。
また、本番の入試は朝に行われることが多いでしょう。たとえば朝9時など本番と同じ時刻に過去問をやることで、さらに本番に近い状況に慣れることができます。
赤本なら、解答用紙も本番と同じものを使える
赤本を使えば、解答用紙も本番と同様のものを利用して問題を解くことができます。もし参考書に解答用紙が付いていない場合、普段の過去問演習では解答用紙を自分で作成したり、ノートに書いたりすることになるでしょう。
しかし、それでは試験本番で解答欄の大きさの違いや、計算用紙の有無など、自分の想定と異なった場合にパニックになる恐れがあります。その点、赤本を使って実際に使われている解答用紙で事前に練習しておけば、安心して試験に臨むことが可能です。
赤本の勉強効率を上げる赤本ノートを使うのもいいかも
赤本の勉強効率を上げたいとお考えの方は、赤本ノートを使ってみるのもおすすめです。赤本ノートを使えば、問題の解答をページの左側、問題傾向の分析や対策などをページの右側で行うことができます。過去問を解くだけではなく、入試の傾向や自分自身の弱点も把握することができる便利なノートです。マークシートや小論文など、あらゆる出題形式に対応しており、網羅的に対策を行うことができます。過去問を最大限に活用したい方は、利用してみると良いでしょう。
過去問でも記述問題は先生に採点をお願いしてみる
過去問を解いたら必ず採点をして、できたところ・できなかったところを明らかにします。しかし、選択問題などは簡単に自己採点できますが、記述問題は採点が難しいところです。自分では書けていると思っていても、正しく理解できていない場合もあります。
ですので、学校の先生や予備校の講師に採点をお願いしてみてください。論述問題をプロの目から採点してもらうことで、できなかった部分が正確に分かります。
苦手な問題の傾向を洗い出して、繰り返し解く
採点をして点数が取れなかったところは苦手な部分だと言えます。その部分は重点的に対策して、克服できるようにしましょう。
落としてしまった問題をまとめたノートを作り、後からまとめて解くといった方法も効果的です。
赤本で試験本番の配点を確認しよう
赤本には、科目ごとの配点や合格点が掲載されているケースは多いものの、各問題に対する配点が記載されていないケースがほとんどです。これは、問題を作成している大学側が配点を公表していないことが理由となっています。もし、どうしても詳しい配点が知りたい場合には、各大学のホームページで公表されていることもあるため確認してみると良いでしょう。
また、予備校の解答速報をチェックしたり、ある程度自分で配当を予想してみたりすることで大まかな配点については計算することができます。
共通テストの英語・リスニング問題にも慣れておこう
共通テストのリスニング対策は、リスニング対策専用の赤本を利用しましょう。また、音声専用サイトでは本番モードやトライモードなどが用意されており、全ての問題を1回のみの再生で聞くことができます。本番と同じ条件で対策が行えるので、場合によって試してみると良いでしょう。
大学別でリスニング対策を行いたいという方は、基礎的な問題を集めた参考書や難関大学に特化した参考書もあります。そうした問題集を利用し、大学のレベルに合わせた対策を行うのが大切です。
赤本の間違った使い方とは?
ここまでの解説から、赤本とは何か、いつから解くべきかなど、赤本について基本的な内容は理解できたと思います。ただし、実際に利用する時に間違った使い方をしてしまえば、何年分の赤本を解いたとしても無駄になる可能性もあるのです。ここでは、事前に注意すべき赤本の間違った使い方をご紹介します。
赤本の解答を全て信用してしまう
赤本の解答について完全に信用してしまうのは少しリスクがあるかもしれません。赤本の制作者は各大学の教員が作っているわけではないケースが多いです。
稀に模範解答をネット上に掲載し、その解答が赤本に載せられている場合もありますが、ほとんどは制作者ではない人が解答を用意しています。そのため、問題を解いて解説を流し読みするのではなく、納得できない箇所があれば深く考えてみることも大切です。
場合によっては学校の先生や予備校の先生に対して質問してみるのも良いでしょう。こうした深掘りをすることで知識がより深まり、効果的に学習を進めることができます。
合格最低点と自分の得点を比べる
自分の点数と解答の最低点は比較しないようにしましょう。赤本には最低点が記載されており、どうしても気になってしまうと思います。
しかし、最低点を見てしまうと目指すべき目標が低くなってしまい、自分の力を過信してしまう恐れがあります。
そのため、注目するのであれば合格平均点をチェックしましょう。合格平均点を目標にすることでより意識が高くなり、合格する可能性を高めながら学習することができます。
復習しない
赤本は一度問題を解くだけではなく、何回も繰り返し復習することが大切です。その際、これまでに解答したことがある問題については確実に間違えないようになるまで反復しましょう。仮に答えを覚えているとしても、その解き方を思い出すことによって記憶の定着に繋がります。
先ほどご紹介した過去問データベースなどをうまく活用し、何度も繰り返し解いて万全の対策を行うようにしましょう。
赤本中毒にならないようにする
焼き直しされた問題や似たような問題が本番でも出ることはありますが、赤本に掲載されている問題がそのまま出るわけではありません。そのため「赤本だけやっていれば大丈夫」というように過信しないようにしましょう。人によっては赤本に振り回されすぎてしまい、結果的に基礎を疎かにしてしまうケースもあります。赤本を解くことはもちろん大切ですが、あくまでも学習方法の一つに過ぎません。効果的に利用しつつも、赤本中毒にならないよう気をつけることが大切です。