大学受験を控える高校生にとって模試は、自らの現在地を知る貴重な機会です。
模試を通じてわかることは、志望校の合格率だけではありません。学んできたことがどれほど定着し、何が苦手なのか、現状を分析した上で、本番に向けた対策が立てられるようになります。
しかし、塾や予備校が実施する模試は有料のものが多く、繰り返し受ける経済的負担は少なくありません。少しでも模試にかかる費用を抑えたいのであれば、無料で受けられる模試を活用するとよいでしょう。
本記事では、無料で受けられる模試の種類や、注意点を紹介します。
無料の模試にはどんなものがある?
前述の通り、模試には有料のものが多い一方、無料の模試もいくつか存在します。
無料で受けられる模試には、以下の3つが代表的です。
- 全国統一高校生テスト
- 大学入学共通テスト トライアル/チャレンジ
それぞれの模試について、詳しく説明します。
全国統一高校生テスト|東進
東進 全国統一高校生テスト 公式ページより
「全国統一高校生テスト」(以下、統一テスト)は、「東進ハイスクール」などで知られるナガセが実施している無料の模試です。2024年度は6月9日(日)に実施され、次回は11月4日(月・休)に実施される予定です。
大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わり、2021年1月から大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が始まりました。東進の統一テストは、その共通テストレベルが体験できるというものです。
統一テストは、厳正実施(統一実施日・会場実施)にこだわっていることが特徴です。そのため、本番さながらの緊張感を持って受験できます。会場は東進ハイスクール・東進衛星予備校の各校舎など、全教科マーク式で行われます。対象も高校3年生に限らず、高校1、2年生、また高校生レベルの学力を持った中学生(高0生)まで可能となっています。
「診断レポート」と呼ばれる成績表が、試験実施後、中5日で返却されます。設問ごとに正答率がわかるため、結果と照らして、今後どのように学習を進めていくべきかを判断できます。また、自身の志望校に合格した先輩が、前年1年間にどのように成績を伸ばしていったのかを表すグラフも確認できます。そうしたデータも活用すれば、目標に向けた勉強の進み具合をつかむのに役立つでしょう。
大学入学共通テスト トライアル/チャレンジ|河合塾
予備校大手の河合塾は、無料で受けられる模試を、「大学入学共通テスト トライアル」と「大学入学共通テストチャレンジ」の2種類提供しています。
河合塾 大学入学共通テスト トライアル 公式ページより
大学入学共通テスト トライアルは高校1・2年生が対象です。以下の教科のオリジナル問題を用意しています。
- 国語
- 英語(リーディング、リスニング)
- 数学(ⅠA、ⅡBC)
この模試は、会場に出向くのではなく、自宅で受験するシステムです。申し込むと、自宅に問題冊子と解答用紙が届きます。決められた期間内に取り組み、解答したマークシートをスマートフォンなどで撮影してデータを送信すれば、受験は完了です。
最短でテストの3日後から個人成績表がWEB上で確認できるほか、講師による解説講義もオンラインで見られます。
2024年度は11月10日(日)に開催されます。
河合塾 大学入学共通テストチャレンジ 公式ページより
もう1つの無料で受けられる模試が、大学入学共通テストチャレンジ(以下、チャレンジ)です。
対象は大学入学共通テスト トライアルと同じく高校1・2年生ですが、チャレンジの場合は、自宅のパソコンやタブレットなどからサイトにアクセスし、WEB上で解答します。
また、問題はオリジナルではなく、実際の大学入学共通テストと同じ問題を使用します。そのため、受験の際は公表された問題や解答を見ていないことが前提です。
開催期間は、共通テストの直後に設定されています。2024年の大学入学共通テストは1月13日(土)~14日(日)に実施されましたが、チャレンジは1月14日(日)~16日(火)の間に受験可能でした。また、統一テスト実施日の翌週まで、各自の自由な時間に受験することができます。
個人成績表は、1月16日までに受験した場合、1月17日(水)から確認可能で、ほぼ即日で採点結果を知ることができます。また、全ての受験者の採点が終わった後、大問別・設問別分析や、受験者全体の中での順位が分かります。
それぞれの違いをまとめると、以下の通りです。共通テストのイメージをつかむために、受験を検討してもよいでしょう。
大学入学共通テスト トライアル | 大学入学共通テストチャレンジ | |
対象 | 高校1・2年生 | 高校1・2年生 |
開催期間 | 11月 | 11月中旬 (共通テスト終了直後~) |
問題の内容 | 国・英・数の河合塾オリジナル問題 | 「共通テスト」で実際に出題された問題 |
受験方法 | 申し込み後に届く冊子と解答用紙を使って解答し、その内容を撮影してデータを送信する | 自宅からテストのサイトにアクセスし、WEB上で解答 |
条件付きで無料になる模試も
以下の塾・予備校では、受験料がかかる模試であっても、条件を満たせば費用が無料になる場合もあります。
- 代々木ゼミナール
- 臨海セミナー
ただし、すでに生徒・会員になっている必要があったり、受験後に入塾の勧誘を受けやすくなったりする場合もあります。
事前によく確認してから、受験の申し込みをするとよいでしょう。
条件付きで無料の模試の注意点は?
塾や予備校によっては、たとえば「生徒や会員に限り無料」など、条件付きの無料の模試を準備しています。すでにその塾・予備校に通っているなど、無料で受けられる条件に該当しているのであれば、積極的に活用するとよいでしょう。
ただし、条件付きで無料になる模試は、広く参加者を募る無料の模試と比べて、受験者数は限られます。そのため、志望校の合格可能性や弱点などを分析する際は、母集団が小さいことにも留意しましょう。
中には、生徒や会員を増やすために、あえて費用を無料にしているケースもあります。受験後に入塾の勧誘をされることがあるため、事前にどう対応するのか、検討しておいた方がよいかもしれません。
代々木ゼミナール
代々木ゼミナールは、「高1・高2 共通テストチャレンジ」「全国共通テスト模試」「大学別入試プレテスト」「大学入学共通テスト入試プレ」など、さまざまな種類の模試を実施しています。対象学年も、模試ごとに高校1年生~高校3年生・高卒生と幅広く、自分に合った模試を選んで受験しやすいのがポイントです。
「高1・高2 共通テストチャレンジ」は、代ゼミマイページに登録すると無料で受験することができます。
その他の代々木ゼミナールの模試は、以下のいずれかに該当する場合は無料で受けられます。
- 年間または学期の講座を受けている高校メイト会員・大学受験科生
- 難関大学・学部への現役合格を目指すグループの進学塾「Y-SAPIX」に通う生徒
ただし、代々木ゼミナールの生徒であっても、高卒メイト会員、講習会・セミナーメイト生の場合は有料です。
臨海セミナー
学習塾の臨海セミナーは、オリジナルの「大学受験スタート模試」を無料で提供しています。
対象は、臨海セミナーの生徒ではない高校1年生~高校3年生です。英語、数学、国語の中から科目を選択し、最寄りの臨海セミナー、あるいは自宅で受験可能です。
入試対策を本格化させる前に、基礎学力の定着度や弱点を確認することに重きをを置いており、最寄り教室で受験した場合は面談も用意されています。自宅受験の場合も、希望すれば学習面談を実施してもらえます。
過去問なら無料で受験体験できる
センター試験や共通テストの過去問を活用して無料で受験を体験する方法もあります。模試ではありませんが、費用を抑えつつ取り組めるという点では、活用する価値はあるでしょう。
大手の過去問データベースを利用しよう
大手予備校では、過去問のデータベースを用意しているところがあります。
たとえば東進の「大学入試問題 過去問データベース」は、1995~2024年(最大30年分)の大学入試センター試験・大学入学共通テストをはじめ、各大学の入学試験をデータベース化しており、過去問として利用可能です。
閲覧するための会員登録は無料で、東京大学や京都大学などの主要な国公立大学から、早稲田大学や慶應義塾大学などの私立大学まで、190大学分の問題と解答を無料で閲覧できます。実際の入試問題を体感するチャンスとして、大いに活用するとよいでしょう。
まとめ
模試は、現状の自分の力を試す場だけでなく、弱点を見極め、本番に向けた対策を立てる絶好の機会となります。
ただし、有料の模試を受け続けるのは、経済的な負担になるのも事実です。そこで、無料で参加できる模試を組み合わせれば、より効率的に経験値を上げていくことが可能です。
中には、予備校の会員・生徒だけが無料になる模試や、勧誘の一環として無料にしているものもありますが、注意点さえ忘れなければ有効に活用できます。
データベース化された過去問に無料でアクセスできるサイトなどもあり、実際の入試問題を体験するのもよいでしょう。