大学受験、模試の費用を抑えたいなら無料模試を活用しよう――種類や注意点を紹介

大学受験を控える高校生にとって模試は、自らの現在地を知る貴重な機会です。

模試を通じてわかることは、志望校の合格率だけではありません。学んできたことがどれほど定着し、何が苦手なのか、現状を分析した上で、本番に向けた対策が立てられるようになります。

しかし、塾や予備校が実施する模試は有料のものが多く、繰り返し受ける経済的負担は少なくありません。少しでも模試にかかる費用を抑えたいのであれば、無料で受けられる模試を活用するとよいでしょう。

本記事では、無料で受けられる模試の種類や、注意点を紹介します。

無料の模試にはどんなものがある?

前述の通り、模試には有料のものが多い一方、無料の模試もいくつか存在します。

無料で受けられる模試には、以下の3つが代表的です。

  • 全国統一高校生テスト
  • 大学入学共通テスト トライアル・大学入学共通テストチャレンジ
  • 駿台atama+プレ共通テスト

それぞれの模試について、詳しく説明します。

全国統一高校生テスト|東進

東進 全国統一高校生テスト 公式ページより

全国統一高校生テスト」(以下、統一テスト)は、「東進ハイスクール」などで知られるナガセが実施している無料の模試です。本年度は11月7日(日)に予定されています。

大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わり、2021年1月から大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が始まりました。東進の統一テストは、その共通テストレベルが体験できるというものです。

統一テストは、厳正実施(統一実施日・会場実施)にこだわっていることが特徴です。そのため、本番さながらの緊張感を持って受験できます。会場は全国1100カ所以上、全教科マーク式で行われます。対象も高校3年生に限らず、高校1、2年生、また高校生レベルの学力を持った中学生(高0生)まで可能となっています。

「診断レポート」と呼ばれる成績表が、試験実施後、中5日で返却されます。設問ごとに正答率がわかるため、結果と照らして、今後どのように学習を進めていくべきかを判断できます。また、自身の志望校に合格した先輩が、前年1年間にどのように成績を伸ばしていったのかを表すグラフも確認できます。そうしたデータも活用すれば、目標に向けた勉強の進み具合をつかむのに役立つでしょう。

さらに、統一テストを申し込むと、テストの前に「冬期特別招待プレ講習」に無料招待されます(高2生、高1生、高0生対象)。1講座(90分×5回)の講習で、テスト受験までにテーマをしぼって共通テスト対策勉強が可能です。

大学入学共通テスト トライアル/チャレンジ|河合塾

予備校大手の河合塾は、無料で受けられる模試を、「大学入学共通テスト トライアル」と「大学入学共通テストチャレンジ」の2種類提供しています。

河合塾 大学入学共通テスト トライアル 公式ページより

大学入学共通テスト トライアルは高校1・2年生が対象です。以下の教科のオリジナル問題を用意しています。

  • 国語
  • 英語(リーディング、リスニング)
  • 数学(ⅠA、ⅡB)

この模試は、会場に出向くのではなく、自宅で受験するシステムです。申し込むと、自宅に問題冊子と解答用紙が届きます。決められた期間内に取り組み、解答したマークシートをスマートフォンなどで撮影してデータを送信すれば、受験は完了です。

最短でテストの3日後から個人成績表がWEB上で確認できるほか、講師による解説講義もオンラインで見られます。

開催期間は、本年度は10月24日に開催されます。

河合塾 大学入学共通テストチャレンジ 公式ページより

もう1つの無料で受けられる模試が、大学入学共通テストチャレンジ(以下、チャレンジ)です。

対象は大学入学共通テスト トライアルと同じく高校1・2年生ですが、チャレンジの場合は、自宅のパソコンやタブレットなどからサイトにアクセスし、WEB上で解答します。

また、問題はオリジナルではなく、実際の大学入学共通テストと同じ問題を使用します。そのため、受験の際は公表された問題や解答を見ていないことが前提です。

開催期間は、共通テストの直後に設定されています。2021年の大学入学共通テストは1月16~17日に実施されましたが、チャレンジは1日遅れの17日~18日で受験可能でした。16日に実施された教科は翌17日から、17日に実施された教科は翌18日からのスケジュールで実施されたのです。

解答期間は1月24日までで、志望校判定を含む個人成績表を後日、WEB上で確認することができました。

それぞれのの違いをまとめると、以下の通りです。共通テストのイメージをつかむために、受験を検討してもよいでしょう。


大学入学共通テスト トライアル大学入学共通テストチャレンジ
対象高校1・2年生高校1・2年生
開催期間10月下旬1月中旬
(共通テスト終了直後~)
問題の内容国・英・数の河合塾オリジナル問題「共通テスト」で実際に出題された問題
受験方法申し込み後に届く冊子と解答用紙を使って回答し、その内容を撮影してデータを送信する自宅からテストのサイトにアクセスし、WEB上で回答

駿台atama+プレ共通テスト|駿台予備校

駿台atama+プレ共通テスト」は高校3年生・高卒生が対象です。問題は駿台のオリジナルで、志望大学の必要科目を選択して受験できます。また、志望校欄には第8志望まで記入できます。

オンラインまたは公開会場を選んで受験の申し込みをしますが、無料になるのはオンライン受験の場合のみ。公開会場で受ける場合は有料になるため、注意しましょう。なお、オンライン受験であっても、会場での冊子を使用した受験と同様に、試験問題を見開きで表示し、画面上で線を引いたり消したりすることも可能です。パソコン(Windows、Mac、Chromebook)やタブレット(iPad)の各種ブラウザ(Chrome、Edge、Safari)から受験できます。

2021年はオンライン受験期間が12月4日(土)〜13日(月)となっており、12月29日(水)から成績表をWEBで確認できます。共通テストに近い日程で受験できるため、本番前の肩慣らしとして受験するのもよいでしょう。

条件付きで無料になる模試も

以下の塾・予備校では、受験料がかかる模試であっても、条件を満たせば費用が無料になる場合もあります。

  • 代々木ゼミナール
  • 臨海セミナー

ただし、すでに生徒・会員になっている必要があったり、受験後に入塾の勧誘を受けやすくなったりする場合もあります。

事前によく確認してから、受験の申し込みをするとよいでしょう。

条件付きで無料の模試の注意点は?

塾や予備校によっては、たとえば「生徒や会員に限り無料」など、条件付きの無料の模試を準備しています。すでにその塾・予備校に通っているなど、無料で受けられる条件に該当しているのであれば、積極的に活用するとよいでしょう。

ただし、条件付きで無料になる模試は、広く参加者を募る無料の模試と比べて、受験者数は限られます。そのため、志望校の合格可能性や弱点などを分析する際は、母集団が小さいことにも留意しましょう。

中には、生徒や会員を増やすために、あえて費用を無料にしているケースもあります。受験後に入塾の勧誘をされることがあるため、事前にどう対応するのか、検討しておいた方がよいかもしれません。

代々木ゼミナール

代々木ゼミナールは、「大学別入試プレテスト」「大学入学共通テスト入試プレ」など、さまざまな種類の模試を実施しています。対象学年も、模試ごとに高校3年生・高卒生~高校1年生と幅広く、自分に合った模試を選んで受験しやすいのがポイントです。

代々木ゼミナールの模試は、以下のいずれかに該当する場合は無料で受けられます。

  • 年間または学期の講座を受けている高校メイト会員・大学受験科生
  • 難関大学・学部への現役合格を目指すグループの進学塾「Y-SAPIX」に通う生徒

ただし、代々木ゼミナールの生徒であっても、高卒メイト会員、講習会・セミナーメイト生の場合は有料です。しかし、優待料金で受験可能なため、多少は費用を抑えられるでしょう。

臨海セミナー

学習塾の臨海セミナーは、オリジナルの「大学受験スタート模試」を無料で提供しています。

対象は、臨海セミナーの生徒ではない高校1・2年生です。英語、数学、国語の中から科目を選択し、最寄りの教室、あるいは自宅で受験可能です。

入試対策を本格化させる前に、基礎学力の定着度や弱点を確認することに重きをを置いており、最寄り教室で受験した場合は面談も用意されています。オンラインの場合も、学習面談を実施してもらえます。

過去問なら無料で受験体験できる

センター試験や共通テストの過去問を活用して無料で受験を体験する方法もあります。模試ではありませんが、費用を抑えつつ取り組めるという点では、活用する価値はあるでしょう。

大手の過去問データベースを利用しよう

大手予備校では、過去問のデータベースを用意しているところがあります。

たとえば東進の「大学入試問題 過去問データベース」は、1995~2021年の間に実施された入学試験をデータベース化しており、過去問として利用可能です。

東進 大学入試問題 過去問データベース 公式ページより

閲覧するための会員登録は無料で、東京大学や京都大学などの主要な国公立大学から、早稲田大学や慶應義塾大学などの私立大学まで、185大学分の問題と解答をサイトに掲載しています。

大学入学共通テストと、その前身である大学入試センター試験の問題や、各学校の二次試験の問題も利用可能です。実際の入試問題を体感するチャンスとして、大いに活用するとよいでしょう。

大学公認の過去問サイトも

また、大学公認の過去問サイトも存在します。

近畿大学は、同大の過去問にオンラインで挑戦できるサイト「全国統一近大模試」を運営しています。

近畿大学 全国統一近大模試 公式ページより

アカウント登録は無料で、必要な科目をすべて受け終えたら、合否判定まで可能になっています。こうしたサイトを利用してみるのも、一つの手です。

まとめ

模試は、現状の自分の力を試す場だけでなく、弱点を見極め、本番に向けた対策を立てる絶好の機会となります。

ただし、有料の模試を受け続けるのは、経済的な負担になるのも事実です。そこで、無料で参加できる模試を組み合わせれば、より効率的に経験値を上げていくことが可能です。

中には、予備校の会員・生徒だけが無料になる模試や、勧誘の一環として無料にしているものもありますが、注意点さえ忘れなければ有効に活用できます。

データベース化された過去問に無料でアクセスできるサイトなどもあり、実際の入試問題を体験するのもよいでしょう。