大学受験を目指しているものの「塾と予備校、どちらに通えばいいのかわからない」「費用や指導スタイルの違いが気になる」という受験生は多いのではないでしょうか。
塾か予備校かを選ぶ際は、自分の学力や目的に合った環境を見極めることが重要です。授業形式やカリキュラム、費用など、塾と予備校にはさまざまな点で違いがあり、それらをよく理解したうえで選択・判断することが合格への近道になります。
本記事では、塾と予備校の違い、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説。また、費用の目安や「あなたはどちらに向いているのか?」という点についてもご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
塾と予備校の違いとは?

「塾」と「予備校」はどちらも勉強を教えてくれる場所ですが、勉強を教える対象、指導形式、授業内容などの点で違いがあります。まずは、塾と予備校の基本的な違いを理解しておきましょう。
対象学年・目的
- 塾:小学生から高校生まで幅広い学年が対象
- 予備校:おもに高校生や高卒生、浪人生などが対象
塾は、学校の授業の補習や定期テスト対策から、中学・高校・大学受験対策まで、幅広い目的で利用されています。学年や学力に応じて柔軟に対応できるのが塾の特徴の一つです。
一方、予備校は大学受験に特化しており、志望校合格を目指した専門的なカリキュラムや指導が中心です。特に高校生や浪人生に向けて、効率的かつ体系的な受験対策が提供されます。
授業形式・指導スタイル
- 塾:少人数制や個別指導が中心
- 予備校:大人数の集団授業や映像授業が中心
塾は一人ひとりの理解度や進度に合わせて授業を進めやすく、苦手分野の克服や基礎固めに最適です。個別指導や少人数制が多いため、質問にも丁寧に対応してもらえる傾向があります。
予備校は大人数を対象とした集団授業や、好きな時間に受けられる映像授業が中心です。塾に比べると個別対応は難しいケースが多いですが、ハイレベルな講義や効率重視の学習スタイルを求める人には適しています。
講師との距離感・質問のしやすさ
- 塾:講師との距離が近く、質問しやすい
- 予備校:講師と距離があり、質問機会が限られる
塾では講師が生徒一人ひとりの状況を把握しやすく、授業中や授業後に気軽に質問できる環境が整っています。疑問点や不安をその場で解消しやすいため、学習のつまずきを早めに解決できます。
予備校は大人数の授業が多いため、講師に直接質問できる機会は限定的です。質問対応はチューターやサポートスタッフが担当することが多く、自分から積極的に動く必要があります。
カリキュラム・時間割の柔軟性
- 塾:生徒の予定やレベルに合わせて柔軟に対応可能
- 予備校:決まったカリキュラムや時間割で進行
塾は個別指導や少人数制が多く、部活動やほかの習い事と両立しやすいようにスケジュール調整が可能です。生徒の理解度や目標に合わせて学習内容も柔軟に調整できるため、無理なく学力を伸ばせます。
予備校は年間カリキュラムや時間割があらかじめ決められており、個人の都合に合わせた調整は難しい場合が多いです。受験対策を効率的に進めたい人には適していますが、柔軟性は塾に劣ります。
進路指導や学習サポート体制
- 塾:個別に学習計画や進路相談が受けられる
- 予備校:進路指導専門のスタッフやチューターがいる
塾では講師が生徒一人ひとりの学習状況や目標を把握し、個別に学習計画を立てたり進路相談に乗ったりしてくれることが多いです。生徒と講師の距離が近いため、きめ細やかなサポートが期待できます。
予備校では、講師とは別に進路指導専門のスタッフやチューターが在籍していることが多く、最新の受験情報や豊富なデータをもとにした進路指導が受けられます。大規模なサポート体制が整っているため、情報量やシステム面を重視する人におすすめです。
塾 | 予備校 | |
対象 | 小学生~高校生 | 大学受験を目指す高校生・高卒生 |
指導形式 | 授業/個別指導形式 | 講義形式 |
授業内容 | 基礎から学べる | レベルの高い内容を学べる |
講師との距離感 | 講師との距離が近く、気軽に質問しやすい | 講師との距離が遠く、質問機会は限られる |
時間割・カリキュラム | 生徒の予定やレベルに合わせて柔軟に調整可能 | 固定されたカリキュラム・時間割で進行 |
進路指導・学習サポート | 講師が個別に学習計画や進路相談を担当 | 進路指導専門スタッフやチューターが在籍 |
塾と予備校の「費用」の違いは?

塾と予備校の根本的な違いを理解していただけたでしょうか。続いては、塾と予備校の費用(学費)の違いを説明します。
ちなみに塾・予備校比較ナビがネットアンケート調査したところ、大学受験する1年間に使った塾・予備校の費用の平均は、51.4万円でした。塾と予備校、それぞれどのくらいの費用がかかっていたのでしょうか。
塾の費用
- 支払い方法:月謝制が一般的
- 費用相場:集団塾の月謝は2〜5万円前後、個別指導塾は3〜8万円程度
例えば、学研教室の高校コースなら、1教科コースの月謝が1万8,150円、全教科コースの月謝が3万1,460円です。神奈川県を中心に展開している大学受験STEPの場合、月額の授業料は講座数に応じて変動し、例えば1講座なら1万6,800円ですが、8講座の受講時には6万4,000円になります。
個別指導形式の塾になると、具体的な料金を公式サイトなどで明示しているところは少ないです。
塾・予備校比較ナビが独自に調査したところ、「個別教室のトライ」(有効回答数11件)の場合、年間で平均36.8万円。「東京個別指導学院/関西個別指導学院」(同11件)は平均44.1万円でした。
年間80万円以上使ったケースもありましたが、年間20~60万円程度が平均で、月額にならすと3~4万円程度になります。
個別指導は集団形式より高額になりやすいですが、内容や回数を調整すれば予算を抑えることが可能です。
予備校の費用
- 支払い方法:月額払いのほか、入学金+年間授業料を一括で支払うことも可能
- 費用相場:年間費用は入学金、授業料、模試の料金などを含めて100万円ほどが目安
塾・予備校比較ナビが2023年3月に実施したネットアンケート調査では、大手予備校に通って大学受験の1年間で使った費用の平均値は、「東進ハイスクール/東進衛星予備校」(有効回答数68件)が57.8万円、「河合塾/河合塾マナビス」(同66件)が63.9万円、「駿台予備学校」(同39件)が76.8万円でした。
講座数や受講内容によって差が出ますが、夏期・冬期講習や模試の追加費用も考慮しておくことが必要です。予備校の場合、受講科目や利用サービスが増えるほど、総額も高くなります。
塾と予備校のメリット/デメリット

ここまでに取り上げてきた塾と予備校の違いも踏まえて、ここからは塾と予備校のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
塾に通うメリット
塾に通うメリットとしては、次のような点が挙げられます。
個人のレベルに合わせて基礎から学べる
塾では、苦手な科目について基礎の内容から習得できます。講師は生徒一人ひとりの苦手をよく把握しているため、きめ細やかな指導が可能です。
苦手な科目については補習を受けられるなど、レベルに合わせて学習できます。
生徒に寄り添ったサポートが期待できる
塾では講師との距離が近く、授業中や授業後にわからない部分をすぐに質問できる環境が整っています。特に個別指導塾では、生徒一人ひとりの学力や目標に合わせて、オーダーメイドの学習計画を作成してくれるため、苦手分野の克服はもとより得意分野も伸ばしやすいです。
また、進路指導や学習方法のアドバイスを受けやすく、モチベーション維持や不安の解消にもつながります。こうしたきめ細やかなサポートにより、生徒は安心して自分のペースで学習を進め、着実に学力を伸ばすことが可能です。
学校の授業や定期テスト対策にも対応できる
塾では学校の授業内容に合わせた予習・復習をサポートしてくれるため、授業で理解できなかった部分も効率良くカバーできます。特に定期テスト前には、出題傾向や重要ポイントを押さえた対策授業が行なわれることも多く、得点アップを目指しやすいのが特徴です。
また、過去問演習や頻出問題の解説など、実践的な指導も受けられ、内申点の向上や成績アップにつながります。学校のカリキュラムに沿った学習ができるため、日々の学習習慣の定着や基礎力の強化にも効果的です。
塾のデメリット
では反対に、塾のデメリットはどのようなものでしょうか。
講師のクオリティーはそれほど期待できない
塾講師は、現役大学生などがアルバイトで務めていることがほとんどです。受験指導に特化した予備校のプロ講師と比べると、指導力のばらつきが大きく、過度の期待はしないほうがよいでしょう。
正社員の塾講師もいますが、多くの場合は保護者向けの資料作りやホームページの管理など、授業以外にもさまざまな業務を任されています。このような雑務にどうしても時間を取られるため、授業のクオリティーはあまり高くないかもしれません。
好きな講師を選ぶことができない
基本的に、塾ではクラスごとに講師が割り当てられ、自分で好きな講師を選ぶことはできません。相性が良くない講師に当たっても変更できないなど、不便だと感じる可能性があります。
予備校のメリット
続いて、予備校のメリットを確認してみましょう。
好きな講師の授業を選んで受けられる
予備校では、好きな講座・コースを選べます。多くの講座・コースが開講されているため、自分にぴったりのものを受けられるでしょう。大手予備校であれば、人気講師や有名講師の講義を受けられる可能性もあります。
講師のクオリティーが高い
予備校講師は、予備校の運営関係の事務作業など、講義以外の業務を行なうことはほとんどありません。塾講師と比べると、講義内容のクオリティーを磨くことに専念できるため、教え方の上手な講師が多いと期待できます。
また、生徒は講座・コースを自由に選べることから、説明のうまい講師は自然と評判が広まり、受講者数が多くなります。どの先生の授業が良いかがわかりやすいため「良くない講師に当たってしまった……」という失敗も起こりにくいでしょう。
志望校対策など、大学受験に特化した指導が可能
予備校は、大学入学共通テストや各大学の過去問を分析し、どの分野からどんな切り口の問題が出てきたのかを把握し、出題傾向を研究することに力を注いでいます。
どう教えれば難問を解けるようになり合格ラインを突破できるのか、塾よりもずっと多くの生徒を相手に受験指導してきた経験からノウハウを蓄えているため、より的確・効率的な指導を受けられるでしょう。
予備校のデメリット
予備校のデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。塾のメリットと表裏一体といえるかもしれません。
基礎ができていないと講義についていけない
予備校の講義は、学校の授業を受けたり予習したりして、事前に学習していることを前提に進むものもあります。クオリティーの高い内容を学べる反面、基礎中の基礎の部分は解説してくれない講義も含まれています。
そのため、基礎が身に付いていないと講義内容を理解できず、ただ聞き流すだけになってしまうおそれがあります。予備校で基礎から教えてくれる講座・コースを受講する方法もありますが、利用する講座・コースの選び方には注意する必要があるでしょう。
学力に合わせた指導を受けづらく、講師との距離が遠い
予備校では従来、多くの受験生と一緒に講義を聞くスタイルが採られていたため、個人の学力に合わせた講座・コースを選ぶことが難しくなっていました。講義の最中にわからない部分が出てきても、質問できないことがほとんどです。大手予備校の場合は教室も大きく、講師と生徒の距離はどうしても離れてしまいます。
講師から進路指導が受けられない
予備校では、講師が進路の相談に乗ってくれることはないと考えましょう。進路指導によって志望校を決めていくのではなく、志望校を絞ったうえで合格を目指して受講する講座・コースを選んでいくといいでしょう。
自主性が求められる
予備校でただ講義を聞くだけでは、実力は身に付きません。学力を上げていくためには予習や復習を自力で行なう必要があり、自主性が求められます。
予備校にはさまざまなコースや自習室などの設備が用意されています。これらをうまく活用して、同学年のライバルなど、周囲の環境から刺激を受けて勉強していくことが学力アップの鍵といえます。
ここまで予備校へ通うデメリットを挙げてきました。ただしここ最近、自分の学習ペースで受講できる映像授業を活用する予備校や、一人ひとりの学力に合わせた多彩な講座・コースを用意した予備校、講師とは別に「担任(助手)」「チューター」などと呼ばれるスタッフを置いて親身になって学習をサポートして進路相談にも乗ってくれる予備校が増えてきました。
予備校に通うことを検討しているのなら、そうしたサポート面が充実しているかどうかにも目を向けて、長丁場になる受験勉強を支えてくれる予備校を探しましょう。
塾と予備校、あなたにはどちらが合っている?向き不向きをチェック!

塾と予備校の特徴をそれぞれお伝えしましたが、「結局、自分にはどっちが合っているんだろう?」と気になる人もいるでしょう。
ここでは、塾が向いている人・予備校が向いている人のポイントをそれぞれまとめました。こちらを参考にして、あなたの性格や学力レベルを踏まえ、より適したほうを選んでください。
塾が向いている人
以下のような人は塾が向いています。
- 基礎学力をしっかり身に付けたい人
- 少人数や個別で丁寧な指導を受けたい人
- 学校の成績アップや内申点対策を重視したい人
基礎学力をしっかり身に付けたい人
塾では、学校の授業の補習や定期テスト対策を中心に指導を行なっており、基礎学力の定着や苦手科目の克服に最適な環境です。学校の教科書に沿った内容で授業が進むため、まずは基礎を固めたいと考えている人にはぴったりです。
理解度に応じて丁寧に指導してもらえることもあり、学習の土台を築きたい人や、学力に不安がある人にも向いています。基礎をしっかり固めてから応用力を伸ばしたい場合は、塾のサポートが大きな力となるでしょう。
少人数や個別で丁寧な指導を受けたい人
塾は少人数制や個別指導が多く、生徒一人ひとりに寄り添ったきめ細やかなサポートを受けられます。自分のペースで学習を進めたい人や、わからない部分をすぐに質問したい人には最適です。
講師との距離が近いこともあって、学習状況や性格に合わせて柔軟に対応してもらえるため、苦手分野の克服やモチベーション維持にもつながります。「置いていかれないか不安」「丁寧に指導してほしい」という人には塾がおすすめです。
学校の成績アップや内申点対策を重視したい人
塾は日常の学習サポートや定期テスト対策に強みがあり、学校の成績向上や内申点アップを目指す人に向いています。学校の授業内容に合わせて予習・復習を行ない、定期テスト前には出題傾向を押さえた対策授業も実施されます。
進路がまだ決まっていない場合でも柔軟に対応してもらえるため、将来の選択肢を広げたい人にもおすすめです。推薦入試や総合型選抜を視野に入れている場合や、成績向上を重視する人には塾が向いているでしょう。
予備校が向いている人
一方、予備校が向いているのは以下のような人です。
- 大学受験を本格的に目指す人
- 競争意識の高い環境で学びたい人
- 自主的に学習を進められる人
大学受験を本格的に目指す人
予備校は大学受験対策に特化しており、志望校合格に向けた実践的なカリキュラムや最新の入試情報が充実しています。受験に必要な知識やテクニックを効率良く身に付けたい人には最適です。
プロ講師による専門的な指導や豊富な受験データを活用した進路指導も受けられるため、志望校合格への道筋を明確にしたい人にもおすすめです。受験に向けて計画的に学習を進めたい人、効率的な受験対策を望む人にも向いています。
競争意識の高い環境で学びたい人
予備校は大人数での講義形式が一般的で、同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨できる環境です。そのため、競争意識を高めたい人や、周囲の刺激を受けてモチベーションを維持したい人に適しています。
予備校は、ライバルとともに学ぶことで自分の実力を客観的に把握しやすく、受験に向けて自分を高めていけます。競争環境が学習意欲を引き出す大きな要因となり、自己成長を促せるため、刺激を求める人には予備校が適しているでしょう。
自主的に学習を進められる人
予備校では自習室や教材が充実している一方で、自主性が求められます。自分で学習計画を立てて積極的に勉強できる人、主体的に学ぶ意欲がある人でなければ学習効果が望めません。自己管理能力が高い人、自律的に学べる人は、効率良く学習を進められる予備校がおすすめです。
また、自分のペースで学習を進めながら、必要に応じて講師やチューターに相談できる環境が整っているため、自立した学習スタイルを身に付けたい人にも予備校が適しています。
大学受験には塾か予備校か?

「大学受験を目指すうえで塾と予備校のどちらが適しているのか?」という問いに、絶対的な正解はありません。受験生それぞれに異なる目的、学習スタイルがあり、それらによってどちらを選ぶべきかは変わってくるからです。
塾は基礎学力の定着や苦手科目の克服、学校の授業や定期テスト対策に強みがあり、生徒一人ひとりに寄り添ったサポートが期待できます。進路がまだ明確でない場合や、基礎から丁寧に学びたい人には塾が適しているでしょう。
一方、予備校は大学受験合格に特化した実践的なカリキュラムや情報が充実しており、志望校が決まっていて効率的に受験対策を進めたい人に向いています。大人数の講義や自主性・競争意識を重視した環境で学びたい場合は、予備校を選択するケースが多いです。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、志望校や自分の学力、学習環境、サポート体制などを総合的に考慮し、自分に最適なほうを選ぶことが合格への近道となります。
まとめ
塾と予備校は、それぞれ指導スタイルやサポート体制、学習環境に大きな違いがあります。大学受験で成功するためには、自分の学力や目標、学習スタイルに合った環境を選ぶことが非常に重要です。
基礎からじっくり学びたい人や学校の成績を上げたい人には塾が、志望校合格に向けて効率的に受験対策を進めたい人や、競争意識を高めたい人には予備校が向いています。
まずは、体験授業や資料請求などを活用し、自分に最適な選択をすることが志望校合格への第一歩です。自分に合った学びの場を見つけて、大学受験を乗り越えましょう。