塾と予備校の違い、大学受験にはどっちがおすすめ? 特徴や向き不向き、費用・料金などを解説!

「このままでは志望校に合格できるラインまで届かない。大学受験のため、塾・予備校に通おう!」と思って調べてみたものの、「どこに通えばいいのか分からない……」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。大学受験対策をプロに頼るのなら、予備校や個別指導塾、地元の塾など、さまざまな選択肢が用意されていますが、一体どの塾・予備校を選んで学習していくのが正解なのでしょうか。

そもそも「塾・予備校」と書きましたが、実は「塾」と「予備校」には、違いがあります。どちらが合っているかは人それぞれ。自分の課題・目的に合った通学先を選ばないと、大学受験までの貴重な時間をより有意義に使えなくなってしまいます。

塾と予備校、あなたに向いているのはどちらなのか。この記事では両者の違いを解説します。塾・予備校選びに迷っている人は、ぜひ参考にしてください。

「塾」と「予備校」の違いとは?

「塾」と「予備校」はどちらも勉強を教えてくれる場所ですが、勉強を教える対象、指導形式、授業内容などの点で異なっています。まずは、塾と予備校の基本的な違いを理解しておきましょう。

塾の特徴

塾は小学生~高校生を対象としていて、学校の授業のサポートや定期テスト対策がメインです。

指導形式は「授業形式」を取っていることが多いです。講師が生徒を指名して答えさせたり、逆に生徒から講師に質問できたりすることが特徴です。

また、最近では「個別指導形式」タイプの塾も増えています。講師が生徒1人1人の学習進度・理解度に合わせて、1:1や1:2といった少人数制で学習指導してくれます。

塾の場合、講師と生徒の距離が近いこともポイント。長期間にわたって講師が担当する生徒に対面で教えることが多くなりますから、自然と生徒の顔と名前、得意・不得意などを覚えることになります。しっかりとした人間関係を築きながら、生徒に寄り添った指導をしてくれる講師が多いことでしょう。

そして授業の内容については、基礎から学ぶ塾が多いです。必要に応じて過去の学習内容も振り返りつつ、苦手な単元や学校で教わっていない学習範囲について、丁寧に教わることができるはずです。

予備校の特徴

一方の予備校は、高校生・高卒生(浪人生)を対象に、主に大学受験に向けて対策していきます。

指導形式は「講義形式」で、講師の話を聞きながら生徒がノートを取っていくスタイルが主流です。基本的に予備校では、講師から個別指導を受けられません。ただし、講義後、分からないところを講師やティーチングアシスタントなどに質問すれば、ほとんどの予備校で個別に教えてもらえることでしょう。

質の高い講師が多くそろっていますから、「予備校の講義を受けて、分からなかったところがようやく理解できた」「苦手だったタイプの問題を解くコツが分かった」など、予備校に通うことで確かな学習成果を得られた先輩たちも多いです。

予備校での講義は、学校の授業と同じように基礎的な内容の理解を促すものもありますが、基礎レベルから踏み込んで応用問題レベルまで解けるように学力をさらに伸ばす内容や、特定の志望大学・学部の出題傾向を踏まえて実戦的な受験対策をする内容になっているものが多くあります。


予備校
対象小学生~高校生大学受験を目指す高校生・高卒生
指導形式授業/個別指導形式講義形式
授業内容基礎から学べるレベルの高い内容を学べる

塾と予備校の費用の違いは?

塾と予備校の根本的な違いを理解していただけたでしょうか。続いては、塾と予備校の費用(学費)の違いについて、説明していきます。

ちなみに塾・予備校比較ナビがネットアンケート調査したところ、大学受験する1年間に使った塾・予備校の費用の平均は、51.4万円でした。塾と予備校、それぞれどのくらいの費用がかかっていたのでしょうか。

塾の費用:月謝として毎月支払。授業形式か個別指導か差があり、毎月2~5万円が目安

塾の費用(学費)は月謝として毎月支払うところが多いです。1カ月あたりの金額は、指導形式が授業形式か個別指導形式かで異なり、講師1人が多くの生徒に教える授業形式なら毎月2~5万円程度、講師1人が生徒1人~数人に教える個別指導形式なら毎月3~8万円程度が目安になると言われています。

例えば、学研教室の高校コースなら、1教科コースの月謝が1万6500円、全教科コースの月謝が2万8600円です。神奈川県を中心に展開している大学受験STEPの場合、月額の授業料は講座数に応じて変動し、1講座なら1万6800円、8講座以上の受講時には6万4000円になります。

個別指導形式の塾になると、具体的な料金を公式サイトなどで明示しているところは少ないです。塾・予備校比較ナビが独自に調査したところ、「個別教室のトライ」(有効回答数11件)の場合、年間で平均36.8万円。「東京個別指導学院/関西個別指導学院」(同11件)は平均44.1万円でした。年間80万円以上使ったケースもありましたが、おおむね年間20~60万円程度になっていました。月額にならすと3~4万円程度ということになります。「授業形式の塾よりも個別指導形式の塾の方が授業料は高い」と言われてはいますが、賢く利用することで授業形式と同程度の予算に抑えている家庭も多いようです。

予備校の費用:受講する講座・コースごとに支払うことに。大手の平均費用は57.8万円(東進)、63.9万円(河合塾)、76.8万円(駿台)

予備校に通う費用としては、入学金や受講する講座・コースごとの授業料、模試の料金などが含まれてきます。総額として100万円くらいかかる覚悟を持っておいた方がいいですが、実際のところ、どのくらいの費用になってくるのでしょうか。

塾・予備校比較ナビが2023年3月に実施したネットアンケート調査では、大手予備校に通って大学受験の1年間で使った費用の平均値は、「東進ハイスクール/東進衛星予備校」(有効回答数68件)が57.8万円、「河合塾/河合塾マナビス」(同66件)が63.9万円、「駿台予備学校」(同39件)が76.8万円でした。

20万円未満と回答した人もそれぞれ一定数含まれていました。恐らく、模試や季節講習などで利用しただけの回答者もいるのでしょう。通常の講座・コースもしっかり利用しようと考えているのなら、これらの金額よりもお金はかかると考えておいた方がいいでしょう。

塾と予備校のメリット/デメリット

ここまでに取り上げてきた塾と予備校の違いも踏まえて、ここからは塾と予備校のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。

塾に通うメリット

塾に通うメリットとしては、次のような点が挙げられます。

個人のレベルに合わせて基礎から学べる

塾では、苦手な科目について基礎の内容から習得できます。講師は生徒1人1人の苦手をよく把握しているため、きめ細やかな指導が可能です。

苦手な科目については補習を受けられるなど、レベルに合わせて学習できます。

講師との距離が近く、個別指導の塾も

塾は授業形式で指導するため、講師と生徒間のコミュニケーションを取りやすいことが特徴です。例えば、授業中に分からないところがあればすぐに質問できます。個別指導形式で教えている塾なら、講師1人に対して生徒1~3人程度といった体制でじっくり教えてもらえます。

進路指導や学習サポートを受けられる

塾講師は長期間にわたって関係性を築くことで、生徒の状況を事細かに把握していきます。生徒の志望大学や性格、学力レベルをよく把握しているため、志望校を一緒に選ぶなど、手厚い進路指導を受けられる塾もあるでしょう。また、個々の成績や学習スタイルに合わせて、志望校合格のための勉強法を提案してくれる塾もあるかもしれません。

塾のデメリット

では反対に、塾のデメリットはどのようなものでしょうか。

講師のクオリティーはそれほど期待できない

塾講師は、現役大学生などがアルバイトで務めていることが多いです。受験指導に特化した予備校のプロ講師と比べると、指導力のばらつきが大きく、過度の期待は禁物だと言わざるを得ません。

正社員の塾講師もいますが、多くの場合は保護者向けの資料作りやホームページの管理など、授業以外にもさまざまな業務を任されています。このような雑務にどうしても時間を取られるため、授業のクオリティーはあまり高くないかもしれません。

好きな講師を選ぶことができない

基本的に、塾ではクラスごとに講師が割り当てられ、自分で好きな講師を選ぶことはできません。相性が良くない講師に当たっても変更できないなど、不便だと感じる可能性があります。

予備校のメリット

続いて、予備校のメリットを確認してみましょう。

好きな講師の授業を選んで受けられる

予備校では、好きな講座・コースを選べます。多くの講座・コースが開講されているため、自分にぴったりのものを受けられるでしょう。大手予備校であれば、人気講師や有名講師の講義を受けられるかもしれません。

講師のクオリティーが高い

予備校講師は、予備校の運営関係の事務作業など、講義以外の業務を行うことはほとんどありません。そのため、塾講師と比べると講義内容のクオリティーを磨くことに専念できるので、教え方の上手い講師が多いと期待できます。

また、生徒は講座・コースを自由に選べるので、説明の上手い講師は自然と評判が広まり受講者数が多くなります。どの先生の授業が良いかが分かりやすいので、「良くない講師に当たってしまった……」という失敗も起こりにくいでしょう。

志望校対策など、大学受験に特化した指導が可能

予備校は、大学入学共通テストや各大学の過去問を分析し、どの分野からどんな切り口の問題が出てきたのか、出題傾向を研究することに力を注いでいます。

どう教えれば難問を解けるようになり合格ラインを突破できるのか、塾よりもずっと多くの生徒を相手に受験指導してきた経験からノウハウを蓄えていますから、予備校に通えばより的確・効率的な指導を受けられることでしょう。

予備校のデメリット

予備校のデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。塾のメリットと表裏一体と言えるかもしれません。

基礎ができていないと講義についていけない

予備校の講義は、学校の授業を受けたり予習したりして、事前に学習していることを前提に進むものもあります。そのため、クオリティーの高い内容を学べる反面、基礎中の基礎の部分は解説してくれない講義も含まれています。

ですので、基礎を理解していないと講義内容を理解できず、ただ聞き流すだけになってしまう可能性があります。予備校で基礎から教えてくれる講座・コースを受講するという手もありますが、利用する講座・コースの選び方には注意する必要があるでしょう。

学力に合わせた指導を受けづらく、講師との距離が遠い

予備校では従来、多くの受験生と一緒に講義を聞くスタイルが採られていたため、個人の学力に合わせた講座・コースを選ぶことが難しくなっていました。講義の最中に分からない部分が出てきても、質問できないことがほとんどでした。大手予備校の場合は教室も大きく、講師と生徒の距離はどうしても離れてしまいがちです。

講師から進路指導が受けられない

予備校では、講師が進路の相談に乗ってくれることはないと考えましょう。進路指導によって志望校を決めていくのではなく、志望校を絞った上で合格を目指して受講する講座・コースを選んでいく方がいいでしょう。

自主性が求められる

予備校でただ講義を聞くだけでは、実力は身に付きません。学力を上げていくためには予習や復習を自力で行う必要があり、自主性が求められます。

予備校にはさまざまなコースや自習室などの設備が用意されています。これらを上手く活用して、同学年のライバルなど、周囲の環境から刺激を受けて勉強していくことが学力アップの鍵と言えます。

ここまで予備校へ通うデメリットを挙げてきました。ただしここ最近、自分の学習ペースで受講できる映像授業を活用する予備校や、1人1人の学力に合わせた多彩な講座・コースを用意した予備校、講師とは別に「担任(助手)」「チューター」などと呼ばれるスタッフを置いて親身になって学習をサポートして進路相談にも乗ってくれる予備校が増えてきました。

予備校に通うことを検討しているのなら、そうしたサポート面が充実しているかどうかという点にも目を向けて、長丁場になる受験勉強を支えてくれる予備校を探すようにしましょう。

塾と予備校、あなたにはどちらが合っている? 向き不向きをチェック!

塾と予備校の特徴をそれぞれお伝えしましたが、「結局、自分にはどっちが合っているんだろう?」と気になる人もいるでしょう。

ここでは、塾が向いている人・予備校が向いている人のポイントをそれぞれまとめました。こちらを参考にして、あなたの性格や学力レベルを踏まえ、より適した方を選んでください。

塾が向いている人

塾が向いているのは次のような人です。

  • 基礎から学びたい苦手科目がある
  • 講師にたくさん質問したい
  • 志望校選びに迷っていて、進路相談を受けたい
  • 勉強の方法について親身に相談に乗ってもらいたい
  • 課題を出してもらった方が学習がはかどる

予備校が向いている人

一方、予備校が向いているのは次のような人と言えます。

  • 教え方が上手い講師の講義を選んで受けたい
  • すでに志望校が決まっていて、大学別に対策をしたい
  • 大学入試の最新情報をゲットしながら受験対策をしたい
  • ある程度、自分で計画を立てて学習を進められる

塾を利用すれば、日々の高校授業で学んだ内容をしっかり理解していくことで学力を積み上げ、その延長線上で大学受験を考えていくことになります。一方の予備校では、志望校合格をゴールとして設定し、節目ごとに到達しておくべき学習進度や学力レベルを考え、入試本番から逆算して学習内容を決めていくことになります。

予備校講師は受験のプロですから、各大学の出題傾向にも詳しいですし、志望校合格のためのさまざまなコツを教えてくれます。大学受験や志望校合格が目的であれば、合格する可能性をより高めるため、予備校に通うことを検討してみてはいかがでしょうか。