医学部の予備校費用はいくらかかる?予備校別に学費の相場を比較

医学部への合格を目指す人としては、予備校に通って少しでも合格する可能性を高めておきたいものです。しかし、一般的な予備校と違って、医学部予備校の費用は高めに設定されています。

医学部はほかの学部への合格を目指すよりも難易度が高いため、そのための対策などに費用がかかるのです。

少しでも費用を抑えつつ合格を目指すには、適切な予備校選びと費用負担の軽減につながる制度などへの理解が重要となるでしょう。

この記事では、医学部予備校の費用が高い理由や相場、費用負担を軽減する方法などを解説します。

医学部予備校の費用が高すぎる!その理由とは?

一般的な予備校の費用と比較すると、医学部予備校の費用は高めに設定されていることが多い傾向です。なぜ医学部予備校の費用は高めの設定なのか、その理由を解説します。

ほかの学部よりも入試の難易度が高いため

医学部は、ほかの学部よりも難易度が高い学部です。そのため、勉強を教える立場の講師もレベルが高くなければなりません。

予備校がレベルの高い講師を雇用するとなれば、人件費も高くなるのは想像に難くないでしょう。

なお、医学部を受験するには、最低でも偏差値65以上、難関大学なら偏差値70程度が必要です。これだけの学力を生徒に習得させるためには、たとえ人件費が高額になったとしても優秀な講師の雇用を重視することになるでしょう。

その分、予備校の費用が高くなるわけです。

個別に指導するのが望ましい対策があるため

医学部を受験するとなれば、対策しなければならないことが多数あります。そのため、個別または少人数で指導するケースが多く、費用は高額になりがちです。

また、個別指導や少人数制による指導を行なうためには、対応に必要な講師を最低限確保しなければなりません。
前述のように、ハイレベルな講師を雇用するとなれば、人件費は高額になることが予想されます。

少人数による対応、さらにハイレベルな講師を雇用しなければならないことを考慮すれば、費用が高額になるのも納得です。

医学部予備校の費用の相場はいくら?

医学部予備校の費用は、予備校の種類や指導方針、コースの設定、現役生であるか浪人生であるかなどによって異なります。

医学部予備校の種類は大きく2つに分けられ、医学部受験に特化している医学部専門予備校と、大学受験全般に対応しているオールラウンドな予備校です。

また、指導方針としては個別指導と集団授業、コースの設定としては国公立大学コースと私立大学コースに分けられます。

ここでは、現役生の場合と浪人生の場合における、それぞれの医学部予備校の費用の相場について解説します。

現役の場合の費用の相場

現役の場合の各種医学部予備校の年間費用の相場は、下表のとおりです。

医学部専門入学金:3万~30万円
授業料:100万~600万円
オールラウンド入学金:3万円程度
授業料:50万~300万円
個別指導入学金:3万~20万円
授業料:100万~600万円
集団授業入学金:3万~30万円
授業料:50万~500万円
国公立コース入学金:3万~30万円
授業料:50万~400万円
私立コース入学金:3万~30万円
授業料:50万~600万円

医学部受験のためには、面接や小論文など、医学部ならではの対策が必要になります。

そのため、医学部以外の学部の受験対策として予備校に通う場合と比べると、医学部予備校に通うための費用は高くなることが一般的です。

浪人生の場合の費用の相場

浪人生の場合の各医学部予備校の年間費用の相場は、下表のとおりです。

医学部専門入学金:10万~30万円
授業料:100万~800万円
オールラウンド入学金:3万~10万円
授業料:100万~500万円
個別指導入学金:10万~20万円
授業料:200万~800万円
集団授業入学金:3万~30万円
授業料:100万~600万円
国公立コース入学金:3万~30万円
授業料:100万~600万円
私立コース入学金:3万~30万円
授業料:100万~800万円

多くの医学部予備校は、現役生よりも浪人生の学費を高くしています。

また、寮を利用する場合、上表の料金に加えて100万~250万円ほどの寮費がかかります。

そのため、現役生の場合と比べると、浪人生の場合のほうが多くの費用が必要になることが一般的です。

医学部予備校の費用まとめ!医学部専門と大手予備校の違いを比較

ひとえに医学部予備校といっても、さまざまな予備校があり、授業料もそれぞれ異なります。

ここでは、大手予備校と医学部専門予備校について、それぞれの主要な予備校の費用をまとめて紹介します。

医学部専門予備校の費用を比較

予備校には下記のような医学部専門のものもあり、多くの医学部合格者を輩出しています。

・アガルートメディカル
・ウインダム
・ACE Academy
・KGS
・進学塾ビッグバン
・TMPS医学館
・東京メディカル学院
・野田クルゼ
・PMD医学部専門予備校
・富士学院
・プロメディカス
・メディカルラボ
・メデュカパス
・メビオ
・メルリックス学院
・横浜予備校

数ある医学部予備校のなかでも高い実績を誇っている「野田クルゼ」「メディカルラボ」「メビオ」の授業料は、下表のとおりです。

ただし、下表の料金はあくまで基本的な授業料であり、オプション講座を受ける場合には、別途料金が発生します。

野田クルゼ現役生〈基本コース(クラス授業)〉
・入学金:3万円
・教材費(1講座):4,000円
・授業料(1講座):1万6,550円/月
〈個別指導コース〉
・入学金:3万円
・授業料(1時間):8,900円
高卒生 集団授業コース
〈国立医進コース〉
・入学金:20万円
・教材費:13万2,000円
・施設費:15万3,000円
・授業料:48万0,000円
〈スーパー選抜コース〉
・入学金:20万円
・教材費:13万2,000円
・施設費:26万7,000円
・授業料:83万2,000円
〈総合コース〉
・入学金:20万円
・教材費:22万円~
・施設費:26万7,000円
・授業料:163万8,000円~
〈個別指導コース〉
・入学金:10万円
・授業料(1時間):1万1,770円
メディカルラボ高3生〈医学部総合コース〉
・入学金:10万円
・個別カリキュラム管理費:52万8,000円
・授業料:231万2,000円
・施設利用費:12万1,000円
高卒生〈国公立医学部受験コース・私立医学部受験コース〉
・入学金:10万円
・個別カリキュラム管理費:52万8,000円
・授業料:442万2,000円
・施設利用費:12万1,000円
メビオ・入学金:33万円
・授業料(1時間):高2生以下 3,850円/高3生 4,290円/既卒生 4,620円

※料金はすべて税込表示で、2024年12月13日時点のものです。特記がないものは、1年間の料金です。

大手予備校の費用を比較

おもな大手予備校の授業料は、下表のとおりです。

ただし、下表の料金はあくまで基本的な授業料であり、夏期講習・冬期講習や志望校対策講座などのオプション講座を受ける場合には、別途料金がかかります。

東進ハイスクール〈現役生〉
・入学金:3万3,000円
・担任指導費:高3生 7万7,000円(3講座以下だと3万3,000円)/高2生以下 4万4,000円
・通期講座(単科)受講料:7万7,000円(「高等学校対応 理科基礎」の受講料は5万7,750円)
・模試費:高3生 2万9,700円/高2生 1万4,850円/高1生・高0生 1万2,650円
〈高卒生〉
・入学金:10万1,200円
・授業料:特訓本科コース 68万2,000円/新宿校大学受験本科(東大・国公立医学部・難関国立) 76万3,400円/新宿校大学受験本科(私立医学部・早慶) 74万2,500円
東進衛星予備校〈現役生〉
・入学金:3万3,000円
・担任指導費:高3生 7万7,000円/高2生以下 4万4,000円
・通期講座(単科)受講料:7万7,000円(「高等学校対応 理科基礎」の受講料は5万7,750円)
・模試費:高3生 2万9,700円/高2生 1万4,850円/高1生・高0生 1万2,650円
〈高卒生〉
・入学金:3万3,000円
・担任指導費:7万7,000円
・通期講座(単科)受講料:7万7,000円
・模試費:29,700円
河合塾高校グリーンコース(現役生)
・入塾金:3万3,000円
・塾生サポート料:高1・高2生 4,540円/月、高3生 7,140円/月
・授業料(1講):4,410~8,350円
・医学部受験対策講座:約27万円
大学受験科(高卒生)※関東の例
・入塾金:10万円
・授業料:国公立大コース 98万8,000~101万8,000円/私立大コース 90万5,000~454万円
駿台予備学校高校生クラス(現役フロンティア)
・入学金:3万3,000円
・システム・サポート料:5,000円/月
・授業料(1講座):約13万~16万円
高卒クラス
・入学金:10万円(事前会員登録で5万円)
・授業料:87万~125万円

※料金はすべて税込表示で、2024年12月13日時点のものです。特記がないものは、1年間の料金です。

医学部予備校の選び方|費用面以外にも目を向けよう

医学部を受験するにあたって、予備校の費用面も気になりますが、費用面ばかりに気を取られていると、予備校を選ぶ際に重大な見落としをする可能性があります。そのため、費用面以外のことにも目を向けることが大切です。

ここでは、費用面以外のことで確認するべきことを解説します。

合格実績

たとえ学習環境が整備されていたり、サポート体制が完備されていたりしても、それが合格につながるとは限りません。

合格を目指している立場としては、合格実績の豊富な予備校に通ったほうが、安心感を持って勉強に取り組めるでしょう。

基本的には、医学部受験に精通した講師が授業を担当します。雇用している講師のレベルが高いほど、その医学部予備校の合格実績は豊富であるはずです。

種類の違い|学部・指導方針・コース

医学部予備校は、おもに以下の3つの視点で分類できます。
とはいえ、あくまで大まかな分類なので、必ずしもすべてがこれらの視点で分けられるというわけではありません。

具体的な指導方針やコースの設定などについては、個々に確認する必要があります。

医学部専門かオールラウンドか

医学部受験に特化した優秀な講師を集めている医学部専門の予備校は、大学受験全般に対応しているオールラウンドな予備校と比べて、授業料が高い傾向にあります。

個別指導か集団授業か

1~3人の生徒が個々の状況に応じて指導を受ける個別指導は、大勢の生徒が同じ授業を受ける集団授業と比べると人件費がかかるため、集団授業よりも授業料が高くなります。

ただし、例えば東進ハイスクール・東進衛星予備校のように、学習ペースは個人に合わせ、チームミーティングで集団指導の良さも取り入れているような、複合的な予備校もあります。

国公立コースか私立コースか

国公立コースは受験科目が多い分、私立コースよりも授業料が高くなりがちです。

ただ、私立大学医学部の対策のほうが国公立大学医学部の対策よりも手間がかかるという理由から、国公立コースよりも私立コースの授業料を高く設定している予備校も少なくありません。

自身との相性

どれだけ予備校の費用が安くても、自身との相性が悪ければ成績アップにはつながらないリスクがあります。そのため、講師や学習システムなどとの相性を見極めることが望ましいでしょう。

例えば、医学部指導に特化した講師なのか、自身の目的の実現に効果的な学習システムなのか、といったことにも目を向けてみることが大切です。

また、医学部は難易度が高い学部のため、質問しやすいかどうかなども重要な要素といえます。

校舎の設備や寮の有無など

予備校を選ぶ際は、自身の医学部合格にどれだけ効果的な環境が整っているのかを見極めることが大切です。

その一つとして、寮の有無が挙げられます。勉強に集中するには、寮に入るのも効果的なためです。

自宅から通う場合、自宅ではどうしても集中力の維持が難しいという人もいるでしょう。そのため、自宅から通う予定の人は、集中して勉強するための自習室が予備校に完備されているのかを確認しておくのがおすすめです。

医学部予備校の費用負担を軽減する3つの方法

医学部予備校の学費を安くする方法は、授業料が安い予備校を選ぶことです。しかし、質や相性を吟味せず、やみくもに授業料が安い予備校を選ぶことはおすすめできません。

ここでは、質も相性も妥協せずに、医学部予備校の費用を安くする方法を3つ紹介します。

特待生制度を利用する

医学部予備校には、「特待生制度」が設けられていることがあります。特待生制度とは、予備校が提示する条件を満たしたうえで、成績が優秀だと認められた場合に、授業料が減額されたり免除されたりする制度です。

多くの医学部予備校が示す特待生制度の適用条件としては、以下の3つが挙げられます。

・特待生向けの試験に合格する
・指定された模試で好成績をとる
・前年度の医学部受験の際に一次試験に合格している

なお、特待生制度による授業料の減免率は、10~50%ほどです。

単科クラス・コースを利用する

医学部予備校では、本科クラスや本科コースのほか、単科クラスや単科コースが設けられているのが一般的です。

本科クラス・コースとは、予備校が設定したスケジュールやカリキュラムに沿って、あらゆる科目の授業が受けられるシステムで、単科クラス・コースとは、特定科目の授業だけが受けられるシステムです。

本科クラス・コースは授業回数が多くなるため、学費が高くなりやすいですが、単科クラス・コースで、サポートが必要な苦手科目の授業のみに絞ることで、全体的な費用を安く抑えられるでしょう。

教育ローンを利用する

医学部予備校で利用できるおもな教育ローンとしては、以下の3つが挙げられます。

日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)

国の教育ローンは、決められた金額以内の世帯年収(所得)の方が対象で、上限350万円まで借り入れ可能なローンです。金利は固定で年2.35%と低めに設定されています。

なお、国の教育ローンの利子相当分を給付する「利子(保証料)補給制度」を設けている自治体もあります。

所定の条件を満たす必要があるため、利用を検討している方は各自治体のホームページや窓口にお問い合わせください。

民間金融機関の教育ローン

民間の金融機関が提供する教育ローンは、教育に関する資金として用途に制限があるローンです。

金利や借入上限額、返済機関などの条件は金融機関によって異なりますが、金利の相場は国の教育ローンと比べてやや高めで、年2.0~5.0%程度、借入上限額の相場は300万~1,000万円程度(医学部の場合は3,000万円の場合もあり)に設定されています。利用できる条件としては、一定以上の勤続年数や、安定した継続収入があることなどです。

予備校と提携している信販会社の教育ローン

予備校のなかには、提携する信販会社の教育ローンが利用できるものもあります。金利は、民間金融機関の教育ローンと同じくらいか、やや高めに設定されています。信販会社が予備校に直接支払いを行なうなど、対応がスピーディーな点が特徴です。

医学部予備校を選定する際のポイント

医学部を受験するにあたって、予備校を選定する際のポイントも押さえておきましょう。

学費見積もりの料金内訳を念入りに確認する

医学部予備校の学費見積もりは、予備校によって内容が異なります。
入学金や教材費、小論文対策の指導費、面接指導費、模試受験費、季節講習費、直前講習費など、内訳もさまざまです。

内訳に含まれているものと含まれていないものを詳細に確認しておかなければ、想定よりも高い費用を支払うことになりかねません。

そのため、予備校を選ぶ際は、合計金額だけを確認するのではなく、自身が受けたい指導内容と照らし合わせながら、料金内訳を念入りに確認することが大切です。

安さのみで決めるなど安易な選び方は避ける

費用が安くても合格できなければ意味がないため、目先の安さばかりを優先して選ぶべきではありません。

例えば、安い費用で合格までに4年かかるケースと、それほど安くはない費用を支払って2年で合格を目指すケースを想定してみましょう。

この場合、2年で合格することで、結果的に生涯年収は増える可能性があります。

上記はあくまでも一例ですが、実際にこのようなことも起こり得るため注意が必要です。

また、安易に割引を行ない、経営圧迫につながっている予備校がないとも限りません。通塾中に閉鎖するリスクがあることも忘れずに、慎重に予備校選びを行ないましょう。

医学部進学後も費用はかかる!学費を抑えられる大学4つ

医学部予備校には費用がかかりますが、予備校を卒業して医学部に入学した際にも費用がかかります。そのため、費用負担を軽減できる大学への入学も選択肢の一つとして検討してみるとよいでしょう。

順天堂大学

順天堂大学は、6年間の学費の総額が2,080万円となっています。この金額は、ほかの私立医科大学と比較すると非常に安い設定です。

また、地域枠選抜で入学した場合の奨学金制度など、費用負担を軽減したい人に役立つ制度も存在します。

ただし、返済の減免には条件が設けられているため、内容を詳細に確認してから合格を目指すかどうかを決めるとよいでしょう。

産業医科大学

産業医科大学では、修学資金貸与制度によって、3,000万円ほどの学費を約1,100万円まで減額できます。ただし、卒業後9年間は指定の医療機関および企業に産業医として勤務しなればなりません。

国公立大学と比較すると学費は高めですが、私立大学医学部のなかでは比較的通いやすいといえるでしょう。

自治医科大学

栃木県にある自治医科大学は、地域医療の人材確保を目的として設置された大学です。

自治医科大学も、学費の負担が原則不要になる制度を設けています。ただし、都道府県の指定する医療機関において、9年間医師として勤務することが条件になっています。

また、定員は各都道府県に割り当てられているため、優秀な受験生の多い都道府県では合格を目指すハードルが高くなる可能性を考慮して受験に臨みましょう。

防衛医科大学校

埼玉県の防衛医科大学校は、医師である幹部自衛官を養成する防衛省管轄の省庁大学校です。学費は無料のため、費用負担の心配をせずに済むのが魅力の一つといえるでしょう。

ただし、卒業後は幹部候補生として、自衛隊中央病院や部隊などで9年間勤務しなければなりません。9年間の勤務を行なわない場合、最高4,400万円ほどの学費や諸経費を返還する必要があります。

まとめ

医学部予備校は、ハイレベルな講師の雇用や少人数での対応といった理由から、費用は高めに設定されています。授業料は、現役生で50万~600万円、浪人生で100万~800万円、寮を利用する場合はさらに100万~250万円の寮費が必要です。

少しでも安く利用できる予備校を選びたいところですが、医学部に合格できなければ意味がないため、講師との相性や指導方針、コースなど、費用面以外のことにも目を向けて検討することも大切です。

費用を少しでも抑えたい場合は、特待生制度や単科クラス・コースの利用、教育ローンの利用といった選択肢もあります。なお、大学入学後も費用がかかることを考慮し、学費を抑えられる大学への入学を目指すのも選択肢として有効です。