「大学入学共通テスト」は、大学入試センター試験を引き継いで、2021年から実施されている試験です。国立大学志望者にとっては必須ともいえる試験ですが、私立大学受験でも利用されています。
この記事では、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の仕組みや傾向、大学入学センター試験との違いなどについて分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
大学入学共通テストとは?
共通テストは、独立行政法人大学入試センターと共通テストを利用する各大学が、共同で実施する大学入学試験です。毎年1月中旬に全国の大学で一斉に実施され、約50万人が受験する日本最大規模の大学入試となっています。
国公立大学の受験者は、原則としてこの共通テストの受験が必要です。また、多くの私立大学で「共通テスト利用入試」を実施しています。そのため、共通テストは国公立大学を志望する受験生だけでなく、私立大学を志望する受験生にとっても、非常に重要な試験であると言えるでしょう。
試験はマークシート方式で、科目ごとに受験します。受験科目は、各大学から指定されますが、受験する大学によって必須科目が異なるため、事前に志望校の入試要項などをしっかりと確認しておくことが大切です。
大学入学共通テストと大学入学センター試験の違いは?
共通テストとセンター試験の違いをみていきましょう。
共通テストは知識だけでは解けない
センター試験と共通テストとの大きな違いは、問題の「問われ方」です。
センター試験は、高校卒業段階での基礎的な学習達成度を判定する試験で、主に知識や技能を問う問題で構成されていました。
しかし、これからの変化の激しい時代に対応するには、「知識を活用して、自ら思考し判断・表現する力」が必要だとされています。そのため「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」などを問う問題が重視されるようになっています。そこで大学入試改革が行われ、2021年より現行の共通テストが始まりました。
センター試験と共通テストとを比較したとき、出題される問題自体の難易度は変わっていません。どちらも、高校の学習指導要領に沿った問題が出題されるからです。しかし共通テストのほうが高度な読解力が求められる問題や図表などから情報を読み取り判断するデータ処理力、問題分量が増えたことによる処理力の速さなどが求められるようになりました。
つまり、共通テストは、単なる知識の暗記だけでは解けないように設計されているということです。「問われ方」が変わったことにより、今までと同じ学習法では得点できなくなったため、難易度は上がったといえるでしょう。
共通テストとセンター試験の問題や傾向の変化
では、具体的に共通テストとセンター試験の問題の変化についてみていきましょう。
全体を通して設問数が増加したことに加え、文章やグラフ、資料を読み解くなど思考力が必要となる問題が増加傾向にあります。
英語の例を見てみましょう。 センター試験と共通テストを比較すると、以下のような違いが見られます。
試験の種別 | センター試験 | 共通テスト |
試験時間 | 110分 (リーディング80分+リスニング30分) | 110分 (リーディング80分+リスニング30分) |
配点 | ・リーディング 200点満点 ・リスニング50点満点 | ・リーディング 100点満点 ・リスニング 100点満点 |
リーディングの 総語数 | 約4300語(2020年) | 約6300語(2024年) |
このように、共通テストではリスニングの配点が大きくなっていたり、リーディングの総語数が大幅に増加していたりします。さらにリーディングでは発音やアクセント、語句整序を単独で問う問題はなくなり、センター試験のときのように丸暗記で得点を稼ぐことが難しくなりました。総語数は年々増加しており、ますます速読力が求められるようになるでしょう。また、 リスニングでは、話の流れを理解して重要な情報を聞き取る能力が求められます。
試験時間に変更はないものの、単純暗記で回答できる問題が減少し、問題量は増加しています。つまり、実質的には素早く情報を処理する力が求められるようになったということです。
このように共通テストにおける英語は問われ方が変わったことにより、センター試験よりも難易度が高くなっている傾向にあります。共通テストで得点するためには、センターと同様の対策ではなく共通テストに特化した対策が必須と言えるでしょう。
大幅に増えた英語(リーディング)試験の文章量
センター試験のころと比べて共通テストがどのくらい難しくなったか、次の画像を見比べてもらえれば、一目瞭然だと思います。
平成13年度(2001年1月実施)の英語(リーディング)試験問題|第5問(配点:30点)
令和6年度(2024年1月実施)の英語(リーディング)試験問題|第5問(配点:15点)
長文読解の大問となる第5問の文章部分を比べてみました。読解する英単語の量が数倍に増えているにもかかわらず、配点はセンター試験の半分。センター試験と比べて、共通テストでは数倍の速さで情報を処理していかないと高得点を狙えなくなっていることが分かります。
2025年度から新課程入試へ
さらに、共通テストは2025年度実施分から「新課程入試」に変更されます。
新課程入試は、新しい学習指導要領に対応した入試のことです。学習指導要領はおよそ10年に一度のペースで改訂されており、2022年度に入学した高校1年生から新しい学習指導要領が導入されました。そして、当時の高校1年生は2024年度には高校3年生となり、2025年1月から実施される新課程入試を受験することになります。
新課程入試での主な変更点は以下の通りです。
- 新しい教科として「情報」が追加される
- 「数学」「地理歴史・公民」の科目が変更される→全体で6教科30科目から7教科21科目に
- 試験時間が長くなる(国語が80分→90分、数学2が60分→70分)
- 「理科」の試験時間帯が統合される
重要なのはこれらだけではありません。新課程では、現代を予測困難な時代と位置づけ、「自ら課題を見つけ、学び、考え、判断して行動できる『生きる力』を身につける」ことを目指しています。そのためこれまで以上に、「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」もバランスよく習得することが求められるようになりました。
新課程入試は、こうした学習指導要領の改訂に対応すべく実施されます。科目の再編や時間の変更は、学習指導要領がこのように変化したことを受けたものでしょう。そのため新課程入試を受ける受験生は、これまで以上に幅広い能力を求められるといえます。
実際にどのような問題が出題されることになるのか気になる方は、大学入試センターが公表している令和7年度試験の問題作成の方向性、試験問題などを参照してみてください。従来の共通テストとの出題形式の違いを理解しておくと、効率的に受験勉強を進められるでしょう。
共通テストに特化した対策をしよう
ここまで解説してきたように、共通テストは問題の傾向や問われ方が変わったことから、従来のセンター試験に比べて難化傾向にあります。新課程入試では、ますます単なる知識の詰め込みでは解けない、応用力が試される問題が多くなると予想されるため、その土台となる基礎をしっかりと固めておくことが不可欠です。
共通テストは従来のセンター試験とはまったく別物であるという意識を持ちましょう。一朝一夕では太刀打ちできない問題も多いため、共通テストに特化した試験対策が必要です。
対策開始は早ければ早いほど、共通テストの問われ方に慣れ、問題傾向を掴みやすくなります。早めに共通テスト対策に取り組みながら、同時に過去問や模試を活用し、自分の弱点を克服して高得点を目指しましょう。