毎年秋頃になると、各予備校で実施される模試が大幅に増えていきます。受験生の皆さんも、模試を受ける機会が多くなるでしょう。
模試を受ける意味には「試験に慣れること」「今の自分の偏差値を知ること」「得意分野・苦手分野を把握すること」などがありますが、「志望校の合格可能性(判定)を知ること」も大きな目的のひとつです。
しかし、有名な大学をなんとなく記入したり、漠然と行きたい大学を羅列したりするのはNG。模試の結果を効果的に生かすためには、志望校の選び方にもコツがあります。
本記事では、模試を受けるときに押さえておきたい志望校の選び方をお伝えします。
模試の志望校欄に「行きたい大学」だけを書くのはNG!
志望校欄に、自分の行きたい大学や有名な大学だけを記入するのは避けましょう。
模試では通常、志望校を記入する欄(志望校欄)があります。ここに学校名・学部名・大学コードなどを記入して提出すると、成績に応じて模試の結果に「合格可能性」(多くの場合はA~E判定)が記載されます。
志望校欄には、一般的には6~8校ほど記入可能です。記入欄が多いこともあり、どの大学・学部を書けばよいのか迷う受験生は多いでしょう。迷った結果、なんとなく志望校を書いてしまう人もいるかもしれません。しかし、模試の志望校を決める際に意識したいのは、チャレンジ校、実力相応校、安全校など、「志望校のレベルに幅を持たせること」です。ある程度偏差値にばらつきのある大学を記入することで、今の学力ならどこに合格できそうかを確認でき、実際に応募する際のの大きな参考になります。
仮に、「入りたい大学」という基準で志望校を選定して記入したとします。しかし受験生の中には、現在の学力よりも1~2段階高いレベルの大学を志望校として考えている人もいるでしょう。そうした人が志望どおりに1~2段階高いレベルの大学を志望校として記入し、模試の結果が返ってきたら「全てE判定だった!」ということもあり得るでしょう。
同じレベルの大学ばかりを書けば、同じ判定が出るのは当然のことと言えます。現在の学力レベルを把握しにくくなるうえ、実際に受ける大学を決めるときにも参考になりません。
また、「そんなにたくさんの大学を受けるつもりはない」「まだ志望校が決まっていない」と、空欄を残して提出する人も少なくありません。
しかし、模試の結果を最大限に生かすためには、志望校欄はできるだけ全て埋めることをおすすめします。次からご紹介する選び方を参考に、ぜひ空欄をなくして提出しましょう。
「受けたい大学」だけでなく、幅広いレベルの大学を選ぼう
まず、「志望校欄には、必ずしも受ける予定の大学だけを記入しなくてもよい」ことは覚えておきましょう。自分の大学受験の方針を固めるためにも、模試では実際に受ける・受けないを問わず、さまざまなレベルの大学を選ぶことが重要です。
ここからは、模試の志望校の選び方を具体的にご紹介します。大学受験まで時間がある「高3夏休み前まで」の模試と、大学受験が近づく「高3秋以降」の模試について、時期に合わせて紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
「高3夏休み前まで」の模試では4ランクに分けて選ぶ
高3の夏休み前までの模試で記入すべき大学は、以下の通りです。
- 一番入りたい「第一志望校」
- 第一志望校よりワンランク低い「実力相応校」
- 安定してA判定が取れる「安全校」
- 第一志望校よりワンランク高い「チャレンジ校」
高1・高2生だと、まだ志望校が決まっていない人も多いでしょう。しかし、模試でさまざまな大学の判定を出しておくと、後々貴重なデータとなります。できるだけ幅広い学校を記入するようにしましょう。
(1)一番入りたい「第一志望校」
言わずもがなですが、まずは一番「入りたい」と思える、第一志望校を記入します。
現段階で「高望みすぎるかな」と思う場合でも、書いてしまって構いません。模試の大きな目的は、現時点での志望校合格までの距離を知ることです。少しレベルが高過ぎると思える大学でも、まずは記入して、判定や相性を知っておきましょう。
現役生の場合、まだ受験まで時間がある段階では、少しレベルが高過ぎる第一志望校を記入しておくとE判定が出ることもあるでしょう。E判定を恐れず、本当に行きたい大学を第一志望として記入しましょう。
(2)第一志望校よりワンランク低い「実力相応校」
次に、第一志望校よりワンランク低い「実力相応校」を選びます。目安としては次のような基準があります。
- 第一志望校より2~6ほど偏差値が低い大学
- B~D判定を取れそうな大学
このレベルの大学は、6校記入できる模試では2~3校、8校記入できる模試なら3~4校くらいを選ぶと良いでしょう。
「どのレベルの大学ならB判定が出るか」「どこまでレベルを上げるとE判定になるのか」を知ることが重要です。やはりレベルに幅を持たせ、少しずつ偏差値の異なる大学を選ぶようにしてください。
(3)安定してA判定が取れる「安全校」
次に、ほぼ確実にA判定が出る「安全圏」の大学も1~2校記入しましょう。目安としては、第一志望校よりも10ほど偏差値が低い大学を選びます。過去1年間の模試で安定してA判定が出るような大学は、「滑り止め」として受験を検討できます。
ほぼ確実に受かる大学が分かっていると、受験本番の際に大きな強みとなります。「滑り止めの大学があるから」と考えれば、精神的にも落ち着いて受験に臨めるのです。
また、模試の結果にひとつでも「A判定」があると、自信につながり勉強にもやる気が出てくるのではないでしょうか。
(4)第一志望校よりワンランク上の「チャレンジ校」
記入欄に余裕があれば、第一志望校よりワンランク上の「チャレンジ校」も選んでみてください。
もちろん、第一志望で良い判定が出るに越したことはありません。しかし、高3夏までの時点で第一志望校にC判定以上が出ているなら、さらに上の大学も目指せる可能性があります。
選ぶときは、偏差値は第一志望校プラス2~3くらいの大学にしましょう。第一志望校が私立大学ならチャレンジ校も私立大学に、国立大学が第一志望校なら他の国立大学をチャレンジ校に、といったやり方です。
模試の結果が返ってきたら、「第一志望校まではどのくらい距離があるか」「どのレベルの大学が自分に合っているか」「安全圏はどのレベルの大学か」などを具体的に確認しましょう。
模試の結果は、判定を見て終わりにしてはいけません。現在の自分の状況を確認し、今後の学習計画や志望校選びに役立ててください。もちろん問題の復習も忘れずに行いましょう。
「高3秋以降」の模試では実際に受ける大学を中心に
大学受験が近づく高3の秋以降の模試で志望校欄に記入すべき大学は、以下の通りです。
- まずはもちろん「受験する第一志望校」
- 第二志望は「滑り止めで受ける予定の大学」
- 前回までの模試を参考に「C判定が出そうな大学」
入試本番に向けて慎重に判断し、手応えを感じられるような志望校選びを意識しましょう。
(1)まずはもちろん「受験する第一志望校」
まずは、本番で受験する予定の第一志望校を記入します。大学名はもちろん、自分が受ける学部をよく確認し、漏れのないようにしてください。
併願する学部がある場合、合格可能性や相性を確認するためにも、両方書いておくことをおすすめします。
高3の秋時点でも、第一志望校がD判定やE判定となってしまうこともあり得ます。しかし、高校生は秋以降もまだまだ学力が伸びていきます。判定に一喜一憂せず、模試の結果をしっかりと学習計画に反映していきましょう。
(2)第二志望は「滑り止めで受ける予定の大学」
第二志望には、滑り止めとして受ける予定の大学を記入します。目安としては、第一志望校より6~10ほど偏差値が低い大学で、同じくらいの偏差値ではなく少しずつレベルの異なる2~3校を選びます。
今までの模試の結果から「ここなら受かるだろう」と思っていた大学でも、たまたま調子が悪かったり油断したりといった原因で、落ちてしまう可能性も否めません。模試での判定を見て、本当に滑り止めとして受けてもよいか確認しましょう。
(3)前回までの模試を参考に「C判定が出そうな大学」
最後に、前回までの模試の判定を基に、C判定を取れそうな大学を記入します。これは、自分に合ったちょうどいいレベルの大学を探すことが目的です。
前回までの模試で、(2)で選んだような滑り止めの大学がD判定やE判定であれば、それよりも偏差値の低い大学を選んでください。反対にC判定以上が出ていれば、それよりも少し偏差値の高い大学を書いてみましょう。
模試の結果が返ってきたら、やはり各大学との相性や合格可能性を確認し、復習を忘れずに行います。今までの模試の結果を総合的に分析して、どの大学を受けるか、出願時期までによく考えるようにしましょう。
志望校は早めにリストアップしておこう
模試で志望校をしっかりと記入し、大学受験に生かしていくためには、行きたい大学や気になる大学を早めにリストアップしておくことが肝心です。その際、予備校や受験情報サイトが役立ちます。
模試直前に大学を探そうとしても、なかなか見つからないこともあるかもしれません。事前にいろいろな情報を得て、どの大学を記入するかを決めておきましょう。
「偏差値ランキング」で志望校の偏差値をチェック!
河合塾や東進といった大手予備校や受験情報サイトなどでは、受験生のデータを基に各大学・学部の「偏差値ランキング(偏差値一覧)」を作成しています。
- 東進「東進の大学入試偏差値ランキング」
- 河合塾「入試難易予想ランキング表」
- 旺文社「大学受験パスナビ」
このときの注意点は、参考にする偏差値ランキングはひとつに絞り、複数のサイトのデータを混同しないようにすることです。
これらはあくまでも、各社が自社の模試や過去の入試データを基に発表した予想値・参考値で、内容は作成元によってまちまち。そのため、同じ大学・学部であってもサイトごとに偏差値にばらつきが出ているのです。
志望校は前日までにリストアップしておこう
記入する志望校は、前日までにリストアップしておき、模試が始まったらスムーズに記入できるよう準備をしておきましょう。
受験生の中には、模試の当日に会場で配られるリストを見て、その場で志望校を決める人や、友達と相談して同じ大学を書く人もいるかもしれません。
しかし正確なデータを取るためにも、志望校は当日慌てて決めるのではなく、前日までにリストアップしておきましょう。これまでに紹介した時期ごとの志望校の選び方も参考に、数校まとめておくことをおすすめします。
模試の度に大学をリストアップして整理しておく癖を付けておくと、本番の受験で出願する際や、受験スケジュールを管理する際にも役立ちます。