名古屋市立大学(以下、名古屋市立大)は略して名市大と呼ばれる総合大学です。人文系から芸術工学、医学部まで幅広い学部を有しており、国公立大学では数少ない、医・薬・看護の3学部を設置している大学でもあります。
2023年にはデータサイエンス学部が新設され、一歩先の未来社会で活躍できる能力を身に付けた人材の育成にも力を入れています。
この記事では、名古屋市立大医学部・薬学部の難易度・偏差値、入試制度、入試問題の特徴と対策を解説します。
併せて、名古屋市立大医学部・薬学部を目指す受験生におすすめの塾・予備校をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
名古屋市立大医学部・薬学部の偏差値・難易度はどれくらい?
東進のデータによると、名古屋市立大の偏差値は59前後の学部が多く、医学部は64、薬学部は61~62と高めのため、標準~やや難関レベルの大学といえるでしょう。
募集人員が少なく、高倍率になりやすいことも名古屋市立大の特徴です。
2024年度の志願倍率のデータを見ると、突出していたのは薬学部の13.1倍で、医学部は3.0倍でした。一般選抜の場合、5倍以上になる学部も多いため、十分な対策を行ないましょう。
また、名古屋市立大医学部は、同じ愛知県の名古屋大学医学部から志望変更する受験生が多い点にも注意が必要です。
名古屋大の医学部医学科の偏差値は65と、名古屋市立大よりも少し高めで、同大から志望変更する受験生が多い年は、倍率も上がる傾向にあります。
名古屋市立大医学部・薬学部の入試制度
名古屋市立大の学部は、医学部・薬学部・経済学部・人文社会学部・芸術工学部・看護学部・総合生命理学部・データサイエンス学部の8つです。
なお、前述のとおりデータサイエンス学部は、2023年に開設された新しい学部です。
一般選抜の日程は、医学部が前期日程、薬学部が公立大学中期日程となっています。医学部・薬学部ともに大学入学共通テストの受験が必須のため、共通テスト対策は油断せず行ないましょう。
下記は2025年度一般選抜における医学部・薬学部の共通テストと二次試験の配点を示したものです。
【医学部】共通テスト(配点合計600)
教科 | 科目 | 必須/選択 | 配点 | 教科毎配点合計 |
---|---|---|---|---|
国語 | 『国語』 | 必須 | 125 | |
数学 | 数学①(『数学Ⅰ,数学A』) | 必須 | 62.5 | 125 |
数学②(『数学Ⅱ,数学B,数学C』) | 必須 | 62.5 | ||
外国語 | 『英語(リスニング含む)』『ドイツ語』『フランス語』『中国語』『韓国語』 | 1科目選択 | 125(英語はリーディング100、リスニング25) | |
地歴・公民 | 『歴史総合,世界史探究』 | 1科目選択 | 75 | |
『歴史総合,日本史探究』 | ||||
『地理総合,地理探究』 | ||||
『地理総合/歴史総合/公共』(2出題範囲を選択) | ||||
『公共,倫理』 | ||||
『公共,政治・経済』 | ||||
理科 |
『物理』 | 必須 | 100 | |
『化学』 | 必須 | |||
情報 | 『情報Ⅰ』 | 必須 | 50 |
【医学部】二次試験(配点合計1,200)
教科 | 科目 | 必須/選択 | 配点 |
---|---|---|---|
数学 | 数学Ⅰ | 必須 | 300 |
数学Ⅱ | 必須 | ||
数学Ⅲ | 必須 | ||
数学A | 必須 | ||
数学B(「数列」) | 必須 | ||
数学C(「平面上の曲線と複素数平面」「ベクトル」) | 必須 | ||
外国語 | 英語(「英語コミュニケーションⅠ」「英語コミュニケーションⅡ」「英語コミュニケーションⅢ」「論理・表現Ⅰ」「論理・表現Ⅱ」「論理・表現Ⅲ」) | 必須 | 300 |
理科 | 物理基礎・物理 | 必須 | 400 |
化学基礎・化学 | 必須 | ||
面接 | 必須 | 100 |
【薬学部】共通テスト(配点合計525)
教科 | 科目 | 必須/選択 | 配点 | 教科毎配点合計 |
---|---|---|---|---|
国語 | 『国語』 | 必須 | 100 | |
数学 | 数学①(『数学Ⅰ,数学A』) | 必須 | 50 | 100 |
数学②(『数学Ⅱ,数学B,数学C』) | 必須 | 50 | ||
外国語 | 『英語(リスニング含む)』『ドイツ語』『フランス語』『中国語』『韓国語』 | 1科目選択 | 100(英語はリーディング80、リスニング20) | |
地歴・公民 | 『歴史総合,世界史探究』 | 1科目選択 | 100 | |
『歴史総合,日本史探究』 | ||||
『地理総合,地理探究』 | ||||
『地理総合/歴史総合/公共』(2出題範囲を選択) | ||||
『公共,倫理』 | ||||
『公共,政治・経済』 | ||||
理科 |
『物理』 | 2科目選択 | 100 | |
『化学』 | ||||
『生物』 | ||||
『地学』 | ||||
情報 | 『情報Ⅰ』 | 必須 | 25 |
【薬学部】二次試験(配点合計600)
教科 | 科目 | 必須/選択 | 配点 |
---|---|---|---|
数学 | 数学Ⅰ | 必須 | 200 |
数学Ⅱ | 必須 | ||
数学Ⅲ | 必須 | ||
数学A | 必須 | ||
数学B(「数列」) | 必須 | ||
数学C(「平面上の曲線と複素数平面」「ベクトル」) | 必須 | ||
外国語 | 英語(「英語コミュニケーションⅠ」「英語コミュニケーションⅡ」「英語コミュニケーションⅢ」「論理・表現Ⅰ」「論理・表現Ⅱ」「論理・表現Ⅲ」)td> | 必須 | 200 |
理科 | 化学基礎・化学 | 必須 | 200 |
共通テストと二次試験の点数の配分は、医学部では1:2、薬学部はほぼ1:1ですが、二次試験のほうがやや高くなっています。
医学部の二次試験の配点は共通テストの2倍ですが、共通テストの点数で第一段階選抜が行なわれるため、共通テストで確実に点を取っておきたいところです。
また、2025年度も医学部・薬学部では学校推薦型選抜が実施されます。
名古屋市立大医学部・薬学部の出題傾向と必要な対策とは?
ここからは、名古屋市立大医学部・薬学部の二次試験の対策方法を科目別にご紹介します。
なお、共通テストの得点率は、医学部で82%、薬学部で81%以上必要なので、共通テスト対策も並行して進めていきましょう。
英語は長文読解力が試される
医学部の英語の難易度は、共通テストより少し難しい程度。しかし記述量が多いため、時間配分に注意してください。
特に、長文を速く読み理解する速読力が必要とされます。長文の演習をする際は、普段から時間を計って感覚を身に付けましょう。
また、出題される語彙や文法も難しめです。単語や熟語は、共通テストレベルの一歩先まで踏み込んで覚えましょう。
さらに、医学部では、120~150語程度の自由英作文も出題されます。テーマは社会的あるいは哲学的な内容で、英作文以前にテーマ自体が難しめです。
意見を正確に伝える語彙を増やすと同時に、自分の意見を述べるための対策が必須でしょう。
薬学部の英語では、医薬分野や関連テーマの長文読解問題が出題さることが多く、文章量は試験時間に対して比較的多めです。
設問形式は、下線部和訳・英訳、内容説明、空所補充、パラグラフ補充、言い換え選択、本文書き抜きなど多岐にわたります。
語彙も難易度が高いものが含まれることがあり、文脈から意味を推測する力も問われます。多くの文章に触れて問題に慣れるとともに、語彙力を高めておきましょう。
数学は基本的な問題の取りこぼしをなくそう
医学部・薬学部の数学は標準的な難易度なので、基本的な問題は確実に得点しなければなりません。ケアレスミスしないよう注意が必要です。
出題範囲は広めで記述問題も出題されるため、どんな問題にも対応できる力が求められます。標準レベルの問題集を使い、演習を繰り返しましょう。
なお、医学部では、大問1題程度、他学部と異なる固有の問題が出題される傾向にあるほか、空間図形の問題がよく出題されます。
苦手な場合は、一般的に出題されやすい問題の演習を重ね、慣れておくようにしましょう。実際に図を描き、イメージしてみることが大切です。
物理の難易度は標準レベルだが論理的思考力が要求される
二次試験の物理は、薬学部にはなく、医学部のみの受験科目です。例年、大問4題の構成で、力学や電磁気学、波動、熱力学、原子の分野から多く出題されています。
熱力学分野では、気体の状態変化や気体分子の運動、電磁気学では、コンデンサーの性質や、コンデンサーとコイルの電気振動などがよく出題されます。難易度は標準レベルの問題が中心です。
ただし、計算過程を示す問題や論述問題など、論理的思考力を試される問題も出題されるため、応用力も高めておきましょう。
時間に対して問題の量が多く、難問や苦手な問題でつまずいてしまうと、解答時間が不足することも予想されます。難問や苦手な問題は後回しにするような時間配分を考えることが大切です。
化学では順序立てて正解を導き出す力が問われる
各分野の出題割合は「理論+無機化学分野」と「有機化学分野」で50%ずつです。グラフの作図や論述問題、計算問題も出題されるため、順序立てて正解を導き出す力が問われます。
難易度は、医学部で標準~やや高い、薬学部でやや低い~標準レベルです。
両学部とも難易度は決して高くありませんが、広範囲から出題される傾向にあり、問題量が多めのため時間配分に注意しましょう。
難易度の低い問題や、出題率の高い問題に対しては、時間をかけずに解答できる力をつけておく必要があります。
なお、医学部では、日常生活や昨今話題となったニュースと実験を絡めた問題が出題されることが多く、一般常識や読解力も要求されます。
加えて、教科書レベルの実験については、目的や器具の操作方法をきちんと把握し、考察まで関連づけて習得しておく必要があるでしょう。
名古屋市立大医学部・薬学部を目指す受験生におすすめの塾・予備校3選
最後に、名古屋市立大合格を目指す方におすすめの塾・予備校を3つご紹介します。
名古屋市立大医学部・薬学部の二次試験は、全体的に時間に対しての問題量が多く、論理的思考力を問われるような問題も出題されるため、十分な対策が欠かせません。
自分に合った塾・予備校で学習すれば効率的に対策ができます。ぜひ自分にぴったりの塾・予備校を見つけてください。
東進ハイスクール・東進衛星予備校
テレビCMでおなじみの東進ハイスクール・東進衛星予備校。2024年度は名古屋市立大全体で178名、医学部医学科に15名と、多数の合格実績があります(現役生のみ、講習生含まず)。愛知県内には数多くの東進衛星予備校校舎があり、どこからでも通いやすいのも魅力です。
東進では、実力ある有名講師陣の映像授業をベースに学習を進められます。
加えて、AIが自分にぴったりの演習問題を提案してくれる「志望校別単元ジャンル演習講座」や、種類豊富な模試などで、総合的に受験生をサポートしています。
また、二次試験対策に効果的な「過去問演習講座」は、名古屋市立大の人文社会・経済・芸術工・医・看護・データサイエンス学部に対応。問題を解くだけではなく、過去問のスペシャリストによる採点・添削が受けられます。
医学部を志望する方は、必ず確認しましょう。
駿台予備学校
駿台予備学校(以下、駿台)は、講師やテキストの質の高さで人気を集めている予備校です。2024年度は、名古屋市立大に123名の合格者を輩出(駿台グループ関連法人の在籍生および各講習受講生の実績)。
医学部医学科受験にも強く、この合格者のうち38名は医学部医学科志望者でした。名古屋市立大の医学部医学科の募集定員が60名であることを考えると、かなりの実績といえるでしょう。
駿台は対面授業に加え、AI教材で苦手分野をサポート、気軽に講師に質問できるなど、学力を伸ばせる環境が整っています。
また、授業はレベルや志望学部に合わせて細かく設定されており、例えば、英語の講座だけでも「医系英語(選抜・難関)」「英語(基礎~選抜)」「国公立大英語(標準)」などさまざま。医系講座も充実しているため、特に医学部志望の方には駿台がおすすめです。
KGS
KGSは、名古屋市千種区にある医学部・難関大学受験専門の予備校です。超少人数制で、毎年多くの生徒が難関私立・国公立大の医学部・薬学部に合格しています。
国公立大医学部を目指す方向けには、「上位国公立大医学部特訓コース」を設置しています。このコースでは、プロ講師によるマンツーマン授業と、10人程度の超少人数クラス授業を自由に組み合わせてオリジナルの時間割を作成でき、効率的な勉強が可能です。
また、自習室も年中無休で利用できます。座席指定制のため席取りの必要もなく、長時間でも安心して学習できるのが魅力です。
まとめ
名古屋市立大医学部・薬学部の受験は、共通テストと二次試験の両方でしっかりと対策する必要があります。偏差値は医学部が64、薬学部が61~62と比較的難易度が高く、医学部の志願倍率は3.0倍、薬学部は13.1倍です。
両学部とも共通テストでは8割を超える得点率が必要で、医学部は共通テストでの第一段階選抜があります。
二次試験の英語では長文読解力と速読力、数学ではケアレスミスを防ぎ、幅広い問題に対応できる力が重要です。物理や化学の難易度は標準レベルですが、論理的思考力が求められます。論述問題も多く、実験考察問題への対策も必須です。
合格するためには、出題傾向に合わせた対策が最も重要となるでしょう。名古屋市立大医学部・薬学部の受験を予定している方は、学校での学習に加え、塾や予備校で対策してみてはいかがでしょうか。